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路地裏

「よし、誰もいないから今のうちに変身しろミーティア」


 光って背中が軽くなる。


「さてナズナのところに戻りましょ」

「ああ早く戻って上げよう」


 大通りに戻ろうと路地を歩いていると十字路の左から柄の悪い男達が歩いてくる。

 無視して歩き去ると、後ろからミーティアの悲鳴が聞こえる。


「きゃっ!何するのよ!手放して!」

「そんな格好でこんな路地にいるんだ。俺達もヤらせてくれよ。金は払わねーけどなぁ!」

「おいクズ。今すぐその手を放さないと殺すぞ」

「あん?野郎には興味ねーんだよ」


 紫色の肌の男の腕を掴んで脅したが効果はないみたいだ。飛んできた拳を軽く避けて、男の腕に力を込めて指を食い込ませると、うめき声を出してミーティアの手を放す。

 こっちも手を放すとよろけた男が尻餅をつく。


「てめえ!殺してやる!」


 起き上がって馬鹿みたいに男が突っ込んでくる。


「ミーティア」


 ミーティアが光を放って俺の右手に剣となって握られる。

 男の脳天に剣の腹を思いきり叩きつけて黙らす。

 運が悪ければ死ぬだろうが自業自得だろう。


「ずいぶん治安悪いわね」


 人の姿に戻ったミーティアが言う。


「これくらいならどこも一緒じゃないか?ただここは村っていうより町だな」

「そうね。村にしては大きいわ」

「定住する人は少ないけど旅人や商人でかなり儲かっているんだろうな」


 そして、そういう人達を狙った輩も多いんだろう。


「兄貴!てめえ!兄貴に何しやがった!」

「やばいわ。なんかいっぱい来たわ」

「逃げよう」


 奴らの縄張りだったのか、至るところからガラの悪いのが出てくる。

 ミーティアの手を引いてなんとかぐるぐると曲がって振り切って大通りに戻る。

 おかしいな。ナズナの姿が見当たらない。


「コーネル。ここなんかさっきと違わない?」

「門とも離れてるみたいだし、さっきと違うな。でもこのまま門の方に戻ればナズナがいるはずだ」

「そうね早く行ってあげましょ」

「ああ早く行こう」


 じゃないとエリュさんに殺される。

 周りを見てナズナを探しつつ歩いていると門まで戻ってきてしまう。


「ナズナどこに行ったの…変な男に絡まれたりしたら危ないわ」

「これはまずいな…」

「私達が遅いから探してるのよきっと」

「そうかもしれないな」


 俺は門番に駆けよってナズナが来てないか聞いてみた。


「すまない。青い頭巾の女の子見なかったか?」

「君はさっき賢者の杖と一緒にいた…」

「そうだ!一緒にいた女の子とはぐれてしまって。見てないか?」

「いや見てないよ」

「そうか。ありがとう」

「自警団のところに案内してあげるよ。迷子の子を預かったりしてることもあるから。ケビンここは任せていいか?」

「ああ、わかった」

「ありがとう俺はコーネルでこいつはミーティア。はぐれた子の名前はナズナ」

「ナズナ?変わった名前だね。とりあえず行こうか」


 大通りを進んで途中路地に入ってすぐのところに大きな屋敷が現れる。


「ここが自警団の本部だよ。聞いてきてあげるから少し待っていてくれ」


 門番のケビンが中に入っていき、数人を連れてすぐに出てくる。


「迷子は今日はまだ預かってないみたいだ」

「俺達も探してあげるよ。実は最近、盗賊が潜んでるみたいで窃盗に女や子供の行方不明者が多いんだ。青い頭巾以外に特徴は?」

「ナズナは長い黒髪で少しつり目で丸い耳で青いケープと大きい手袋とブーツを着けてるわ。あの子人混みは初めてなの。どうか見つけてあげて」

「人族の子かい?」

「そうだ」


 わざわざ精霊だとバラす必要はないから人族ということにしておく。


「ここいらでは珍しいから狙われてるかもしれない。早く手分けして探そう」

「ありがとう」


 自警団の人達と別れ、ミーティアと路地を進む。

 さっきの奴らなら何か知ってるかもしれない。


「お前、兄貴をやったって奴だろ?大兄貴がカンカンだぜ」

「紫野郎のことならそうだ」

「容赦しねぇぞ」

「丁度よかったよ。お前らのこと探してたんだ。大兄貴のところに案内しろよ」

「いいぜ。お前をボコした後で連れてってやるよ!」


 伸びた五人の魔族を眺めて思う。あまりにも弱い。元々はかなり治安が良かったのかもしれない。


「おい。お前らは盗賊について何か知ってるか?」


 近くの奴の頭を掴んで話しかける。


「ひぃ…大兄貴なら多分…仲間が何人かやられてる…から」

「じゃあさっさと案内しろよ。その大兄貴とかいうやつのところに」

「わっ…わかった…」


 茶色い尻尾の生えた男に案内させて路地を進む。

 正直もう大通りに戻れる自信がない。


「おいお前、騙してないだろうな?」

「私達騙されてるの?」

「だっ騙してないです!もう着きますから!ほらっ!この酒場です」


 男が扉に駆け込んでいく。

 開けっ放しになった扉から中に入ると客が何人かいるようで罠というのは無さそうだ。


「大兄貴っていうのは誰だ。聞きたいことがある」

「おいビッツ。何やらかしやがった?」

「大兄貴、こいつが兄貴をボコして逃げたから仕返ししようと…そしたら盗賊について聞きたいから案内しろって」

「はぁ兄弟達が世話かけたみたいだな。盗賊っていうは最近奴隷売買で儲けてるやつらのことか?」


 大兄貴と呼ばれているのはどう見ても女性だ。ショートのサラサラの茶髪に長い睫毛、そして膨らんだ胸部。


「すまないがあんたが大兄貴なのか?」

「可愛い女の子だわ」

「そうだ。俺が大兄貴って呼ばれてる。で盗賊がどうしたって?荷物でも盗られたのか?」

「連れの女の子が拐われたかもしれない。奴らがよく出る場所とか知らないか?」

「奴らの縄張りは俺らとは逆、大通りを挟んで西側の路地があいつらの縄張りだよ。リーダーは赤髪の男だ。後は知らん」

「わかった。ありがとう。こいつちょっと借りてくぞ」


 尻尾の生えた男に大通りまで道案内させて路地を急いで走り抜けた。

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