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初めての村

「こんにちは。賢者の杖の方ですね。今回はどのようなご用事ですか?」

「こんにちは。馬を借りたいのだけれど大丈夫かしら?」

「馬ですか…村長に直接聞いた方がいいですね」

「わたった。ありがとう」


 エリュさんに続いて村の中に入っていくと、外からはわからなかったけど思ったよりも人がいるみたいだ。

 出店のようなものもある。


「私は村長に挨拶して馬のこと聞いてくるから。あなた達は露店でも見てて。はい、保護者のコーネル君はこれ持ってて」


 そう言うとエリュさんが球根のような大きめの種を渡す。


「急に君ってなんだよ…君って…」

「それを持っててくれればすぐに場所がわかるから。ナズナのことお願いね。ナズナも迷子にならないようにね。じゃ」


 エリュさんが言うだけ言って一人で歩いていってしまう。


「エリュさんが多分一番年上ですから仕方ないですよ」

「今まで呼び捨てだったのに急に君付けされたらなんか怖くないか?」

「それはそうかもしれないです」

「そうかしら?」

「とりあえずミーティアを変身させて来るから動かないで待ってて!」


 コーネルさんが路地裏に駆けていき、一人残された私は邪魔にならないように端による。

 歩いている人達の多くは見た目は普通の人のようだけど、尻尾が生えている。

 髪の毛と一緒の明るい茶色の毛に覆われた細くて長い猫のような猿のような尻尾だ。

 門番の二人にも生えていたんだろうか。

 他にもちらほら魔族らしき人達が往来している。


「君は一人かい?」


 突然、横から声をかけられる。

 赤い髪に白い角が一本生えていて筋肉質な男の人だ。


「いいえ、仲間が戻ってくるのを待っているんです。あっここはお邪魔でしたか?」

「いや、迷子じゃないならいいんだ。人の往来が多いから気をつけるんだよ」

「ありがとうございます。気をつけます」


 ただのいい人だったみたいだ。

 赤髪の人が往来に紛れて消えていく。

 コーネルさんとミーティアさんは全然戻ってこない。向こうが迷子になったんじゃないだろうか。

 二人が消えた路地を覗き込んでみるけど誰もいない。

 さっきの赤い人はこっちから来たんだろうか。

 再び往来を眺めながら、村というには結構栄えてるのでないだろうかと考えつつ、今度はエリュさんの三角帽子を探す。

 時折ちらちらと通りすがりにこちらを見てくる人がいる。

 なんか目立ってるんだろうか。それとも迷子だと思われてるのか。

 どさっと何かが落ちる音がして振り向くと、路地から緑色の丸い実が転がってくる。

 拾って路地を見るとたくさん実が転がっていて奥で老人が空になった袋を持ったまま倒れている。

 駆け寄って、老人の身体を起こし、フードを外して声をかける。


「大丈夫ですか?」

「痛てて、すまないね。腰が痛くて。お嬢ちゃん、すまないが拾ってきてくれんかのう」

「わかりました。ちょっと待っててください」


 立ち上がって振り返った途端に、目の前が暗くなって、顔がザラザラした感触に包まれたと思ったら、ひっくり返されて持ち上げられる。

 何が起きたのかわからない。


「お嬢ちゃん、大人しくしてろよ。声を出したら殺す」


 先ほどのお爺さんの声だ。

 どっかに売るつもりなんだろうか。

 私は腰からナイフを抜いて袋を裂いて転がり出て、周りを確認して大通りの方へ走る。


「待て!てめえ!」


 後ろから怒鳴られるが無視して走り抜ける。

 村は怖いところみたいだ。

 相手が見失うことを願いつつフードを被り直して、大通りを歩いて人に紛れる。

 あぁ、私もこれで迷子だ。どうしよう。

 振りきれただろうか。周りの人を見ると青い色の服の人はいないからフードをしてると寧ろ目立つかもしれないと思い、フードを脱いで歩く。

 村長さんの家を聞いて行ってみるか、門に戻るかどうしよう。

 お腹も減ったなぁ。

 近くの露店を見てみても武器や雑貨が売っているところが多いみたいだ。食べ物を売っている露店もあるみたいだけど料理ではなく食材を売っている。

 とりあえず生でも食べれそうな果物を探して、野菜を売ってるらしき露店の人に声をかけてみる。


「こんにちは。果物ってありますか?」


 大きな猫みたいな魔族が奥からこちらを覗き込む。


「左のラームとママミがそうだ」


 どれのことなのか全然わからない。


「えっと一つおいくらですか?」

「カム金貨二枚」

「失礼しました…」


 逃げるように露店から離れる。

 ほんとにここらではそれだけの価値があるのかもしれないけど流石に騙されてるような気がする。

 前日にアリシアさんがこっそりくれたお小遣いはカム金貨四枚とカム銀貨十枚とカム銅貨二十枚、ぶかぶかのブーツに爪先に小袋に入れて分けて隠している。大事に使わないと。


「君?連れとは会えなかったのかい?」


 前から声をかけられ、顔を上げるとさっきの赤髪の人だ。


「はい…あの村長さんのお家はご存知ですか?村長さんのお家に向かったはずなんです」

「村長の家かい?案内してあげるよ」

「本当ですか?ありがとうございます」

「いいんだよ。さあこっちだよ」


 赤髪の人が路地に入っていくのを後ろから着いていく。

 右に左にくねくねと進んでいく。一人では絶対迷子だ。

 そして袋小路みたいな場所に出る。


「あのここは?」


 屋根から人が降りてきたり、後ろからも人が歩いてきて囲まれる。


「お嬢ちゃん。今度こそ覚悟しなぁ…」


 声の方を向くとさっきのお爺さんだ。


「思った以上の上物だな。この状況は普通ならチビっちまうところなんだけどなあ。お嬢ちゃんは何処の貴族の人か教えてくれるかな?」


 やっぱり村って怖いところなんだ。

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