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出発

「では師匠。いってきます」

「エリンをよろしく頼む」


 城にはガンドルヴァルガさんとアリシアさんとトーチカさんが残るそうだ。

 フィシェルさんは昨日新しい依頼を受けて私達より一日早く城を出た。

 仕事に出る前に私の部屋を訪ねて、ドライフルーツのたくさん入った巾着袋をくれた。

 貰った巾着袋とアリシアさんが紐の長さを調節してくれたナイフを腰に付け、森の中を歩く。

 森を抜けてしばらく行ったところにあるという村で借りれたら馬を借りるらしい。


「ナズナも武器になれば楽チンよ?」


 コーネルさんに背負われたミーティアさんがそんなことを言う。


「ミーティア?ナズナを見習って歩いてくれてもいいんだぞ?」

「しょうがないじゃない。ドレスじゃ森の中は歩きにくいわ」

「半日も歩き続ければ門があるから森からはすぐ出られるわよ」

「門って何ですか?」

「あれ?言ってなかったかしら?森の外にすぐに出るための門が二つだけあってね。そこをくぐればすぐに森の端まで行けるのよ」

「それって私は入って大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫よ。フィシェルとリリクラからあなたをどうやって城まで連れて帰ってきたか聞いておいたから」


 そういえば魔法の効かない私をどうやって運んできたんだろう。

 話ぶり的には単純に力業で運んできたということではないようだ。


「そんな門があったなら教えて欲しかったよ」

「私達城の者しか使えないから意味ないわよ」

「それでも半日か。今日は野宿だな」

「しょうがないわね。何か黄色い物持ってる?」

「黄色い物?無いな」

「ドライフルーツの中に黄色いのもありますけどゲルブにあげるには小さいかなと」

「仕方ないか。リリクラ起きて。エーメリアに変身して門までお願い」

「んうむぅ…わかったわ。けどもうそろそろ生え変わりだから…運んだ後はしばらく、起きられない…」

「うんわかってるわ。後でコーネルに肥料代を貰いましょう」

「え?俺のせいか?」

「コーネルが今日は野宿だなとか言うからだわ」

「ごめんなさい。いいものがあったら買います」


 リリクラが足が八対の大きな蜥蜴のような姿に変わる。赤い身体に青と緑の斑点が少し毒々しい。


「さあ、ナズナおいで」


 呼ばれたので近づくとエリュさんが脇を持って持ち上げてくれて、しゃがんだリリクラの前足の膝の上に乗せてくれる。


「そこから背に登りなさい」

「ありがとうございます」


 私が背に乗るのを確認してからエリュさんもリリクラの背に登る。


「コーネルは自分で上がれるわね?」

「ああ大丈夫だよ」


 私、エリュさん、コーネルさんの順で背に乗るとリリクラが動き出す。

 八本の足で這うように木々の合間を縫っていく。

 結構早くてちょっと怖い。

 怖いのに気づかれたのかエリュさんが後ろから支えてくれる。

 あっという間に着いたのか、森の中に大きな石柱で出来た門が現れる。

 二本の石柱の上に横になった石柱が乗っているだけど見た目かかなり簡素な門だ。


「着いたわよ」


 エリュさんがそう言って降りようとすると、コーネルさんが先にひょいっと飛び降りて、手を出し、降りるのを手伝う。

 私のことも抱っこして降ろしてくれる。


「ありがとうございます」

「いいんだよ」

「リリクラありがとう。ゆっくり休んで」

「うん」


 リリクラが元の姿に戻ってエリュさんの肩に乗ると、三角帽子を脱いで中にリリクラを優しく入れる。今度はその帽子の中から大きな布を取り出す。

 帽子の中はどうなっているんだろう。


「この布はナズナが今着けてる手袋と同じ加工がしてあるわ。これでぐるぐるにしっかり包めば門を使えるわ」

「コーネル、門を開くからナズナを簀巻きにして持ってあげて」

「わかった」


 コーネルさんとエリュさんに促され地面に広げられた布に寝そべるとコーネルさんがころころと私を転がしてあっという間ぐるぐる巻きになる。暗くて何も見えない。


「ナズナちゃん縦向きと横向きどっちがいい?」

「えっとじゃあ横で」

「わかった」


 そう言うと水平のまま持ち上げられる。

 結構しっかり巻かれているからかエリュさんの声は聞こえない。

 少ししてコーネルさんが歩き出したみたいだ。

 なんだかリネが口に入れて運んでくれたことを思い出す。

 リネに会いたいな。


「ナズナちゃん。降ろすよ」


 コーネルさんの声がして地面に置かれた後にゆっくりころころと身体が転がされ、布が剥がされる。ちょっと眩しい。


「ナズナ、大丈夫かしら?」


 コーネルさんの背から声がする。


「大丈夫ですお姉さま。ちょっと眩しくて」

「さあ、少ししたら村に着くからね。行くわよ」


 目の前には平原と街道が広がっていて、ずっと森にいたからか別世界にきたような気分になる。

 街道を南に歩いていくとすぐにたくさん木造の家がたくさん見えてくる。

 ここが言っていた村なんだろうか。

 村は柵で囲われており、入口には二人の門番が立っている。

 街道沿いだから宿などが多いんだろうか。

 畑のようなものは見当たらなかったけど、森で食べ物を採っているんだろうか。

 入口に近づくと門番の二人の髪は明るい茶色をしている。

 なんとなく目立つかなと思い私はケープのフードを被った。 

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