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茸狩り

「ちょっと挨拶回りみたいになっちゃったけど、教えた茸覚えてる?」

「えっとシーカテとマルムとモモタケですよね」

「正解。その茸を探して取ってお昼ごはんにしましょう。私はここで焚き火の用意をするから、探してきてくれる?リリクラはナズナのことお願いね」

「わかりました」

「はーい」


 リリクラを頭に乗せて、木の根元や木陰を観察しながら森を散策する。

 枯れ木や倒木があれば茸も生えているかもしれない。


「下ばっかり見てないで回りもちゃんと確認するのよ」

「うん、ありがとう」


 立ち上がり回りを見て、きた道を確認する。

 散策に戻り、やっと木の根元から茸が生えているの確認する。

 茶色くて大きな傘と太い軸、シーカテだ。

 軸を掴んで優しく取る。リリクラが蔓で籠を編んでくれてそれに入れる。

 五つ見つけることができた。


「リリクラ、あまり離れない方がいいかな?」

「まだ少しなら大丈夫。エリュの場所わかるから」

「ありがとう。じゃあもう少し探してみる」


 時折回りを確認してエリュさんがいる方向があっているかリリクラに聞きながら、倒木に生えた薄い桃色の先の尖った茸を見つける。モモタケだ。

 なんとか三つ見つかってよかった。一人一つ食べれられる。


「そろそろ戻りましょ。マルムは落ち葉に隠れてちょっと難しいの」

「わかった。エリュさんは…あっちだよね?」

「そうよ。転ばないようにね」

「うん、ありがとう」

「おい!お前そこで何してる!」


 男の声がして振り向くと、褐色の肌に銀色の長髪をオールバックにした、槍を持った男が近づいてくる。


「あの、城の者です。勉強のために散策していました」

「そうよ。エリュの使い魔の私が保証する」

「侵入者じゃないのか」

「絶対違うって言ったじゃない兄さん!ごめんね、驚かせて」


 綺麗な女性も現れる。


「私達はハルメイニア。今は狩りをして生活してるの」

「驚かせてすまなかったな。時折いるんだ。不法侵入する奴が」

「そうなんですね。気をつけます」

「城の者と私達兄弟みたいな人以外の人を見かけたら侵入者だと思った方がいいわ」

「わかりました」

「じゃあ私達はこれで。またね精霊のお嬢さん」

「え?」


 あっという間は森の中へ消えてしまった。


「とりあえず戻りましょ」

「うん、そうだね」


 きた方向に進みなんとかエリュさんのところへ戻る。

 そして起きたことを話す。


「ハルメイニアに会えるなんてラッキーだったわね」

「城の人と私達以外の人を見つけたら侵入者だから気をつけるよう言われました」

「たまにいるのよ。森の資源を狙う奴とか度胸試しにくる奴とか」

「あと精霊のお嬢さんって」

「ハルメイニアは魔力を見たり感じ取ったりすることができるらしいわよ。それでわかったのかもね」

「そうだったんですね」

「さあ、茸のスープが煮えたわよ。食べましょうか」


 エリュさんが木の器にスープをよそってくれて、木のスプーンを手渡してくれる。

 私が取った茸以外にも干し肉や山菜が入ってるみたいだ。

 色々な出汁が出てて美味しい。

 そしてふと気づく。


「リリクラは食べなくて大丈夫なんですか?」

「リリクラは根から栄養を吸収してるから人のようには食べられない」

「だから普段は植木鉢にいるの」

「そうだったんですね」


 頑張ってモモタケを三つ探したのは意味がなかったみたいだ。


「どうかしたの?ナズナ」

「いえ、なんでもないです」

「顔に出てるからはっきり言いなさい」


 やっぱり私ってすぐ顔に出るんだろうか。


「一緒に食べると思ってモモタケを三つ頑張って探したんですけど食べられなかったんだなって」

「ごめんね。リリクラの分はいらないってちゃんと言ってなかったわ。みんなのためにたくさん探してくれたのね」


 リリクラがエリュさんの肩から降りて私の元へくる。


「土にモモタケ置いて。ちゃんとふーふーしてからね」


 言われた通りにエリュさんが一個多く入れておいてくれたモモタケを掬って冷まし、リリクラの前の土に置く。

 土から糸のような物が出てきてモモタケにたくさん絡みついていく。

 どんどん小さくなっていき、絡みついていた糸が離れるとカラカラに乾いて小さくなったモモタケが出てくる。


「ありがとう。美味しかった」

「うん食べてくれてありがとう」

「さあ、食べ終えたら城まで歩いて帰るわよ」

「わかりました」


 水場である沢の探し方や食べられる山菜を教えてくれながら城へと戻っていると、エリュさんが立ち止まり周囲を見渡す。

 がさがさと音がする。

 念のために盾を出して分裂させて周囲を守る。


「大丈夫。ゴブリンみたい」


 リリクラがエリュさんに伝えると警戒したままエリュさんが声をかける。


「何か用かしら!敵意がないのなら出てきて!」


 パキっと音がして一人のゴブリンが出てくる。右耳に木のピアスをし、腰蓑をしていて右手に斧を持っている左手には何か花を握っている。

 ゆっくりとエリュさんの後ろの私に近づいてきて、花を差し出してきた。


「アゲル!コレ!」

「ありがとう」


 盾をしまってとりあえず受け取る。可愛い青い花だ。


「約束は覚えてる?」


 エリュさんがゴブリンにそう言うと、


「オボエテル。プレゼント!トモダチ!」

「だそうよ。ナズナのことが気に入ったみたい。襲われそうになったらちゃんと断るのよ」

「襲われる?えっとわかりました。ありがとう、今日はもう城に帰るの。また今度遊ぼうね」

「ワカッタ!」


 ギャーギャーワーワー何かを叫びながら森の奥にゴブリンが消えていく。喜んでくれたんだろうか。

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