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森の中

 エリュさんとエリュさんの肩に乗ったリリクラと森の中を歩く。

 城は森の中心にあるらしく、城の入口から真っ直ぐ南に進んでいる。

 木の名前や、食べられる茸を教えてもらいながら楽しく森の中を進んでいた。


「この先にはオーク達の集落があるわ」

「オーク?」

「魔族よ。リリクラが変身した姿もオークを真似たものよ」

「その…危なくはないんですか?」

「大丈夫よ。ちょっと乱暴なところもあるけど話せばわかってくれる」

「そうなんですね」


 夢で見た戦いの中にオークの姿もあった気がする。


「城にくることは滅多にないけど森にいたら出会うこともあるだろうし、会っておいた方があなたも気が楽かと思って」

「そうですね。森でばったりあったらびっくりしてたかもしれないです」


 獣道のようなところを抜けると少し開けた場所に出る。

 そこには木や藁で出来た家が建っていた。

 オークの姿は見当たらない。


「おはよう。近くに来たから挨拶に来ただけよ。安心して」


 エリュさんがそう声をかけると家の中からオーク達が出てくる。

 一人大きな玉のたくさんついた首飾りをしたオークの男が近づいてくる。


「おはよう、エリュ殿。挨拶とは?」

「おはようオルバドさん。この子を紹介しに来たのお城の新入りよ。もし森で見かけたら優しくしてあげて」


 エリュさんにそっと背中を押され挨拶をする。


「ナズナです。よろしくお願いいたします」

「よろしく、ナズナ殿。皆の者!聞いた通りだ!新たな森の仲間に祝福を!」


 オオーと村中から雄叫びが聞こえ、びっくりしてちょっと縮こまる。


「えっとありがとうございます」

「いえいえ。ご用がある時はいつでも寄ってください」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ私達はこれで。朝早くにすみませんでした」

「我らは日の出と共に目覚める。気にすることはない」

「ありがとうオルバドさん。それじゃ」


 オークの集落を後にして、再び森の中を歩く。


「他にもこの森に住んでる方がいるんですか?」

「ええ、ゴブリンとハルメイニアという種族がいるわ。オークも含めた三種族は先の大戦で数を大きく減らしたり、迫害や虐殺にあって今はこの森に隠れ住んでいるわ」

「ハルメイニアというのは?」

「かつては最強の種族とも言われていたけど、その力を恐れた他の魔族や人族からの迫害や虐殺に幾度もあって数を減らしてしまって、今はこの森に十人程が住んでいるわ。森の中を転々としてるから今日会えるかはわからないわね」

「そうなんですね」

「ゴブリンには挨拶に行っておきましょうか。ゴブリンもオークと似た感じだけどすぐ求婚してくるからはっきりと断るのよ」

「わっわかりました」

「狩り場が被らないように反対の北の方に住んでいるから少し遠いのよね」


 エリュさんがそう言うと三角帽子に手を突っ込み、中から一枚の葉を取り出して口に当てる。

 ぶぃーーーと音が鳴り、葉を三角帽子にしまって帽子を被る。


「少し待ってて」


 森の奥から何か大きなものが歩いてくる。

 枝を避けながら現れたのは大きな猿だ。黄色い毛で尻尾はないみたいだ。


「この子を乗せてゴブリンの集落まで連れていって。お礼はこれよ」


 エリュさんがいつどこから出したのか、大きな黄色いトゲトゲの実を持っていて、それを猿に渡す。

 実を受け取るとお腹に隠し、返事をするかのように、うっうっうっと言って猿が私を掴んで胸に抱く。ちょっと怖い。


「その子は魔法生物のゲルブよ。頭が良くて黄色い物が大好きなの。お腹に物がたくさん入る魔法の袋がついてるのが特徴よ。リリクラ、私達も」

「ふぁああぁ、わかったわ」


 朝が弱いのかあくびをしながら、リリクラがゲルブに変身する。


「よろしくね」


 顔を見上げて挨拶をしてみると、うっうっうっと言って駆け出す。

 伝わったのかな。

 私を右手で抱いたまま、片手で器用に木をつたったり、森を駆けたり、ぐんぐんと森を進んでいく。

 ちょっと怖くて時折目を瞑る。


「この辺でいいわ」


 エリュさんの声に反応してゲルブが止まり、私を優しく降ろしてくれる。


「ありがとう」


 見上げてお礼を言うと両手で胸を叩いて、森の奥へと帰っていく。


「大きなゲルブが近づくとゴブリン達が驚くからね」


 リリクラがエリュさんを降ろして、元の姿に戻り肩に乗る。

 エリュさんの後をしばらく歩くと、他より少し大きな木の根元に穴が空いている。


「この洞窟にゴブリン達が住んでるわ」


 エリュさんが木を叩くと、穴からジャラジャラとした音が近づいてくる。

 穴から出てきたのは長い鼻に尖った耳、緑色の肌で私よりも背が低い。ゴブリンだ。


「ナンノヨウダ!」

「この子はナズナ。城の新しい仲間よ。いたずらしないようにね」

「オンナ!オンナ!アタラシイオンナ!」

「よろしくお願いします」

「オンナ!ヤル!オレト!」

「やらないわ。この子を襲ったらガンドルヴァルガが滅ぼしにくるってみんなに伝えてきてくれる?」


 ゴブリンが穴に引っ込んでちょっとすると、ぞろぞろとたくさんのゴブリンが出てくる。

 最初に出てきたゴブリンが私を指差しながら、他のゴブリン達に説明してくれてるみたいだ。

 ゴブリン語なのか何を言っているのか全然わからない。


「ミンナニイッタ!」

「ありがとう。お礼にこれを置いていくから、ちゃんと約束守るのよ」

「ホシニク!ヤッタ!ヤッタ!ヤクソクマモル!」


 大きな干し肉の塊を数人で抱えながら慌ただしく穴の中にゴブリン達が帰っていく。

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