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「わしは瓦礫も無く、完全な更地になったムーダンジアだったはずの場所を彼らの手がかりを求めて探し回った。残っていたのは濃い魔力の痕跡だけだった。その時には既にエリンの紐はかなり色褪せていた」


 そして私を見る。


「歩き回り続けて、爆心地であろう中央部だけ魔力が薄いことに気づき、そこで勇者の刀と盾を見つけた。何か思い出せるか?」


 私は首を横に振る。魔族の軍勢と幾度となく戦った記憶はあるのに、魔王と戦った記憶は思い出せない。なぜなんだろう。


「レイゼリア姫は勇者を守り続けた盾が彼の回りを飛び回らずに地面に埋まって動かないのを見て、彼がいなくなってしまったことを確信した様だった。レイゼリア姫は勇者の刀と盾を亡骸の代わりに棺に納め、リネの待つ森に墓を作った」


 だからリネは時折寂しそうしてたのかな。

 リネにちゃんとお別れと感謝を伝えたかった。


「リーシルとリネ、そしてレイゼリア姫のためにも手がかりを探し続けた。そんな時、勇者が見つけた遺跡に異変が起きているから調査をして欲しいと依頼があった」


 エリュさんが気を使ってくれたのか、ベッドから指を振り、椅子を出してくれたので座る。


「私はエリュに調査を任せた。エリュ続きを」

「わかりました。そこはイー大陸東部の渓谷にある遺跡で、かなり古くて何のためのあるのかよくわかってなかったけど、かつては勇者達が隠れ家として使っていたそうで、何か彼らの痕跡がないかと調べることも目的だったわ。でも入口からは魔力が溢れ、中は迷宮へと姿を変えていた。私はすぐに攻略に取り掛かった。七階層からなる元の遺跡の情報ではありえない深さをしていた。その七階層の奥で変わり果てたエリンに会った。彼女は自身を幾重もの結界や障壁で閉じ込めて更に強固な檻の中にいたわ」

「変わり果てた?」

「角が生えて、手足は黒く、牙が生えていた。そして私に言った。もう耐えられそうにない。最後にエリュに会えてよかった、メリエにごめんねと伝えてって。次の瞬間私は遺跡の外に飛ばされていた。そして二度と遺跡に入ることはできなかった」

「わしもエリュからの報告を受けてすぐに遺跡へ向かった。しかし強力な魔法がかけられているようでわしも中に入ることは出来なかった。エリンが自分が誰も傷つけないように最後の力を振り絞って魔法をかけたんだろう」

「私なら遺跡の中にってことですか?」

「ええそうよ。レイゼリアから話を聞いて、あなたに魔法を試した時、あなた自身にもガンゼツの武器と同じ力があるのを見て勇者の魔力を元に生まれた精霊だと考えた。勇者の魔力が元になっているなら盾だけじゃなく、同じ素材の刀も持っているはずだと思って、あなたを危険に去らし、怒らせることで刀を出させようとした。使い魔を魔族に変身させてね」


 私はエリュさんに襲われて気を失ったことを思い出す。


「けれど、あなたはレイゼリアを守って、自分が攻撃を受け、倒れた。と思ったらゆっくりと立ち上がった」

「え?」

「そして使い魔の右手を切り飛ばした。刀を使って。あなたの顔は虚ろで声は一切届かなかった。あなたの動きはキコクの武士のように素早く的確に急所を狙い、魔法は両断され、盾に掻き消された。私はあっさりと追い詰められて勝てないと思って使い魔に魔力のほとんどを渡した。なんとか杖で防いでいたけど杖を真っ二つに斬られた隙に刺されたわ」


 お腹を擦りながらそんなことを言われても記憶にない。


「その後のことはこの子が」


 エリュさんが植木鉢の1つを手に取ると赤い花がもぞもぞと動いて土から緑色の女の子が出てくる。


「私は使い魔のリリクラ。こんな風に養分があれば何にでも変身できる」


 可愛い女の子の姿から竜になったり、熊になったりしてみせてくれ、そして手のひらサイズのまま、あの時の魔族の姿になり、元の可愛らしい姿になる。


「エリュに魔力をもらった私はすぐに腕を生やして元の大人の姿になって、すぐにあなたを大量の蔓で捕まえた。でも動きを止めるまでには時間がかかって、エリュが刺されちゃったの」

「もしかして、背中以外の怪我はその時のものなんですか?」

「そうよエリュを守るために本気で縛り付けた!あなたの両手が腫れていたのはあなたが刀を離さなかったからよ!」

「リリクラ、彼女を責めるのはやめなさい」


 私は何も言えず萎縮してしまう。


「ごめんなさい。そのあとはレイゼリアを起こして、フィシェルとトーチカが危険を察知して現れて、私が花粉に催眠効果のある花をいっぱい咲かせて、レイゼリアが子守唄を歌ったらあなたが眠って、ようやくエリュを助けられた。その後は知らない」


 リリクラは拗ねた様に頭のてっぺんの綺麗な赤い花だけを残して土に隠れてしまう。


「ごめんなさいナズナ」

「いえ。あのガンゼツの武器は魔力を弾いて拡散させるって言っていましたよね?」

「そうよ」

「じゃあなんで勇者の魔力が?勇者の魔力が元っておかしくないですか?そもそも精霊って何なんですか?」

「それについてはわしが説明しよう」


 

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