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上目遣いは卑怯

「おらよ!」


 器用に四つのお皿と二つのコップを持った店主が、どすどすとテーブルに料理を並べて水の入った皿と大きな枝肉の乗った皿をリネの前に置く。


「料金だ」

「あいよ」


 アムムさんがいつの間にかお金を用意していたようで、料理と引き換えのような感じで店主に渡して、すぐに供えられたフォークとナイフを手に取る。


「さあ食べよう!」


 黒焼きと言っていた表面がカリカリに黒くなった大きな肉の塊を前にして子供のような笑顔を浮かべるアムムさんに、なんだか呆気に取られてしまい、お金のことはひとまず置いとこうという気になってしまう。


「じゃあ…いただきます」

「よし、いただきますだ。リネも遠慮するな」


 リネがわふっと返事をして勢いよくかぶりつくのを見て、私もフォークを手に取る。

 三種類のお肉のステーキは二人のものと違って食べやすく既に切られていて、サイコロステーキという言葉が浮かぶ。

 芋とにんじんと緑色の知らない根菜らしきものもこんがりと焼けていて美味しそう。

 早速白っぽいお肉を口へと運ぶ。

 少し繊維質だけど、簡単にほどけて、しっとりとしていて美味しい。

 味はお肉本来のものと塩胡椒だけのようだけど臭みも無くとても美味しい。

 多分何かの鳥だと思う。

 アムムさんもリネも自分のお肉に夢中でとても幸せそう。

 アムムさんのお肉は表面は黒く焦げているように見えるけど、中がパサついているような様子は無く、肉汁で溢れしっとりとした断面をしていて、リネのお肉は兎と言っていたけど牛肉の様に真っ赤な色をしている。

 私の子供定食は白っぽいお肉が鳥で、赤っぽいお肉が牛で、脂身の多い白っぽいお肉が豚のようで、それぞれ拳二つ分ほどの大きさのステーキで一口に切れられている。

 どれも味付けは塩胡椒だけのようだけど飽きずに美味しく食べられる。

 芋はカリカリほくほくで、にんじんは甘くて柔らかく、緑色の奴は少しすっぱくてしゃきしゃきしていてどれも美味しい。

 からからと足元から音が聞こえテーブルの下に視線を落とすと、リネがほとんど食べ終えて骨がお皿に当たる音だったようだ。

 私はリネのお皿へお肉を二つずつ移してあげ、お肉と私を交互に見つめるリネの頭を撫でて、食べていいよと言うとリネが嬉しそうにがつがつ食べ始める。

 テーブルに視線を戻すと大きな四角い薄切りが乗せられていて、アムムさん厚めに切った肉をリネのお皿に乗せてくれる。


「ありがとうございますアムムさん」

「気にしないでふたりとも食べてくれ」

「私のもどうぞ」


 リネにしたようにそれぞれ二つずつをアムムさんのお皿に乗せてあげる。


「いいのか?ありがとう!」


 子供のように笑うアムムさんは本当にお肉が好きなんだろうなと感じる。

 私もアムムさんがくれたお肉を食べてみる。

 黒く焦げた外側の縁はカリカリでちょっと苦いけどしっとりとしてとても美味しい。

 なんだかチーズのようなこくがある気がする。


「こっちも美味しいですね」

「ナズナのもうまいな!」


 わふっと吠えるリネのお皿にはもう白い骨しか残っていない。

 ジュースは酸っぱいけどお肉のあとだからさっぱりとしてちょうどいい。

 骨を見つめるリネは足りただろうか。

 骨をかじかじしないのは似ていても犬や狼とは違うからなのだろうか。

 そんなことを思っていたらごりごりと音を立てて骨を噛み砕き始める。


「リネにおかわりを頼もうか。正直、私も食べたい」


 リネを見ていた間にアムムさんのお皿も空になっていたようだ。


「リネまだ食べたい?」


 リネが首を縦に振り、上目遣いに私を見る。


「じゃあ…おかわり、頼もうか」


 普段あまりあまえたりしないからついおかわりを許してしまう。


「すまない!注文だ!」


 アムムさんの呼び声で、店に入った時最初に会った小さな店員がやってくる。

 なんだか震えているけど大丈夫なんだろうか。


「あっあの、なん、でしょう、か」

「すまない…今日は怖くなったりしないから…安心してほしい。おかわりをお願いしたいんだ」

「わっわかり、ました…」

「ありがとう。私はバラクルを大で黒焼きで頼む。そこのわんちゃんにはブルボアビットの大を生のまま、女の子にグレットを一つ頼む」

「少々、お待ち、ください」


 足早にドワーフの少女が去っていく。

 この反応が普通ということは、オーガの人達は昔からいくつもの戦争で活躍しているのかもしれない。

 そして各地で何か話が伝わり、怖がられているんだろうか。

 私もすべて美味しく食べ終えると、ちょうど店主がお皿を三つ運んできて、どかどかとテーブルに置いていく。


「料金だ」

「あいよ」

「二人共、えーっと、いただきます!」

「いただきます」


 再びリネが食べ始めるのを見てから私もスプーンを手に取る。

 さらっと流してしまったけどグレットってなんだろう。

 白くてどろっとしていて、酸っぱい匂いがする。

 スプーンで掬って食べてみると、甘酸っぱくて、乳のこくがある。甘いヨーグルトだ。

 お肉をたくさん食べた後に消化にいいのかもしれない。


「甘酸っぱくて美味しいです」

「こちらこそ二人のおかげで美味しい肉が食べれて感謝している。本当にありがとう」

「そんな!お金まで払っていただいて…せめてこのデザートの分とおかわりの分だけでも受け取ってください」


 私は腰の小袋からお金を取り出そうと手を入れる。


「いやいいんだ」

「でも流石に…」

「ならカムムとダクムの二人に会ったらその時に二人から肉を買ってあげてくれ」

「わかりました…」


 平行線になる気がして引き下がる。

 ゲンリュウさんが奢ってくれた時もそうだけど、嬉しい反面、私がもう少し成長した姿だったら少しくらいは受け取って貰えたんじゃないかと考えてしまう。

 でもそれもまたアムムさんの子供のような笑顔で吹き飛ばされていく。

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