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お昼決定

「あのドラットさんは一緒じゃないんですか?」

「あいつは陽射しに弱いからな。部屋で休んでいると思うぞ」


 何かを忘れている気がしつつも、アムムさんと噴水に腰掛けて雑談を交わす。


「陛下、さんは?」

「ハハハ!陛下さんとは新しいな。他の護衛と会議の最中だよ。ドラットと私は休みなんだ」

「そうだったんですね。噴水を見に来たんですか?」

「いやそういうわけじゃないんだが昼食をどうしようかとぶらぶらとな」


 そうだ私達もだった。


「実は私達もお昼ご飯をどうしようかなと考えていたんです。アムムさんはリネでも食べられるお肉のお店を知っていたりしますか?」

「実は一つだけ店を知っているんだが…その、怖がられてしまってな」

「怖がられる?」

「君はオーガの本来の姿を知っているかな?」

「そういえば名乗ってませんでした。ごめんなさい。私はナズナでこの子はリネです。一度だけ変身したところを見たことがあります」


 アムムさんが少し俯き、少し間が空く。


「ナズナとリネは見た時、怖くなかったか?」

「びっくりはしましたけど怖くはなかったです」

「そうか。しかしナズナくらいの子には同じ魔族の子でもやはり怖がられることの方が多くてな。店で一番のステーキを生で頂いたら、つい変身してしまって小さな店員に怖がられ、店主には怒られて追い出されてしまったんだ。しかしその店ならきっとリネに生肉を出してくれるよ。近くまで案内してあげよう」

「ありがとうございます」

「しかし親や兄弟は一緒じゃないのか?」

「一緒ですがお仕事で忙しいのでお昼は二人で食べないといけなくて…」

「そうか…よし、こっちだ」


 立ち上がって、手招きをするアムムさんの後をリネと二人でついていくと、あっという間に店の前まで案内してくれる。

 意外と中央広場から近くだったんだろうか。


「そこの店だよ」


 アムムさんが指差す先の看板には鉄板に乗ったお肉の絵がでかでかと書いてある。


「一緒に入らないんですか?」

「ああ…私は出禁かもしれんから」

「お持ち帰りとかは出来ないんですか?」

「そういうのはメニューになかったと思う…」

「子供だけだと断られてしまうかもしれないので良ければご一緒してくれませんか?」

「そっそう、そういうことなら仕方ないな!」

「ありがとうございます」


 店の扉を開けて、中に入るとテーブルはほとんどお客さんで埋まっていて混んでいそうだ。


「いらっしゃいま…せ……」


 声をかけてくれたドワーフらしき少女の店員が上を見上げて顔をひきつらせながら言い淀む。


「どーした!スメル!」


 厨房らしき奥から立派なひげのいかにもなドワーフの店主らしき人が出てくる。


「お前…また来たのか!」

「すまない…この子達を案内しただけなんだ。怖がらせるつもりはない。もう帰るよ」

「この子たちぃ?」


 じろりと太い眉から鋭い眼光で私とリネを睨む。

 ちょっと怖い。タルガさんとは大違いだ。


「私がお願いしたんです。子供だけだと断られることもあるので…一緒では駄目でしょうか?」

「ちっ…そっちの一番奥の左の角のテーブルに座れ!目立つようなことはするなよ!」

「ありがとうございます」

「ありがとう…」


 言われた通りに店の奥の左の角の壁際の空いているテーブルに三人で座る。

 アムムさんは申し訳なさそうに必死に縮こまって背中を丸めて座っている。

 リネお行儀よく私の隣でおすわりしている。


「失礼ですが…暴れたりしたのですか?」

「いや決してそんなことは…」

「思っていたよりも怖がられていたようなので…」

「正直おかしいのはナズナだよ。あれが普通なんだ」

「そういえばお二人もなるべく変身しないように生活をしていると言っていました」

「悪魔と呼んで怖がったり嫌がったりする同族も多いからな」

「悲しい話ですね…」

「ああ…」


 テーブルにどんとメニュー表が叩きつけられら心臓が跳ねる。

 店主が仁王立ちで私達を睨んでいる。


「嬢ちゃんは人族か?肉は平気か?」

「はい、平気です。あの、この子に生肉を注文してもよろしいでしょうか?」


 リネの頭を撫でながら聞いてみる。


「いいだろう。お前は?」

「私も…頼んでもいいのか?」

「さっさと選べ!生肉と酒は金貨を積まれても出さんがな!」

「あっありがとう!すぐに選ぶ!」


 メニューにはお肉の種類と量がずらっと書いてある。

 聞いたことのない名前もあれば、鳥や豚にモムーなど見知ったものもある。


「ナズナはこれでどうだ?」


 アムムさんの指差したところには、子供定食と書いていて、お肉が三種類と野菜のソテーと書いている。


「では、それで」

「リネは…犬か狼か…背中に何か付いているが」

「えと…竜だそうですよ」

「毛皮とは珍しい…ならこのブルボアビットの肉はどうだ?」

「山に住んでる種ならいいかもな」

「ずっと西の山に仲間がいるそうなのでそれでお願いします」

「薦めといてあれだが、嬢ちゃん払えるのか?」

「私が払うから平気だ。ブルボアビットの一番でかい奴をこの子に。私はこのバラクルの肉の一番でかい奴を黒焼きで、この子のものは桃色焼きで頼む。あとはジュースを二つと水を一つ」

「わかった。待ってろ」


 どかどかと歩いて店主が厨房に戻っていく。


「あの、お金」

「いいんだ。ナズナとリネのおかげでまた美味しい肉が食べられるんだ。もう二度と入れないと思っていたから…奢らせてくれ」

「でも…」

「ブルボアビットは大きな兎でな。よく動くから油はそんなに多くないが、旨味が強くて美味しいぞぉ~」


 値段が高そうと言おうとしたところを、嬉しそうにリネに話し掛けながら頬を撫でるアムムさんに遮られてしまう。

 でも本当に嬉しそうに笑っているように見える。

 お肉の種類も多かったし、この辺りでは貴重なお店だったのかもしれない。

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