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五百年も村が続くものなのだろうか

 朝の一件からのフィシェルさんの機嫌はそれはそれはひどく、変わらずに仕事をしっかりとこなす一方で、常に深いシワが刻まれていた。

 物に当たるとか誰かに当たるとか、全くそんなことはないけれど、常に刻まれたままの深い眉間のシワが不機嫌なことを物語り続けている。

 それでも最後の哨戒は何事もなく終わり、羅針盤と灯台を頼りにガームスの港へと戻るそうだ。

 早くて明日の昼頃、遅くても日が落ちる前には港に着くとフィシェルさんは言っていた。

 そして今はリネと一緒に夕日を眺めていた。


「おーい!ご飯の用意が出来たよー!」


 エリンさんの掛け声で甲板に用意されたテーブルに今日もみんなで集まる。

 今日は鶏肉とパンとスープとサラダのようだ。

 みんなが食事を終え、最後の私が食べ終えて、お水を飲んで一息ついたところでエリンさんが口を開く。


「ちょっとみんな、暗いけどこれを見てくれる?」


 そう言うとテーブルの上の食器が穴に吸い込まれていき、すっからかんになったテーブルに穴から出てきた地図が広げられ、海岸線の一ヶ所に光が灯る。


「光ってる場所がガームス。コーネルくん、バックっていう村はどこかな?」

「えーと…」


 エリンさんの質問にコーネルさんが言葉を詰まらせる。


「なんかこれ変じゃね?」

「フィシェルさんもそう思います?」

「五百年以上前のだからね」

「そりゃ困るだろ…知らない名前だらけだぜ?」

「ごめんごめん…でも訳があってわざとなんだ。ガームスの場所から大体の位置でもわからないかな?」


 もしかして、マスティアの件で忘れていた夢のことだろうか。


「多分…この川がヘクトル川でこのヘチマ森林の辺りでしょうか」

「ほんと?」

「多分…」

「大きさちげーけどこれが今の地図だ。小さな村は載ってねーからバックはねぇかも知れねぇけど」


 フィシェルさんがいつの間にか取り出した地図を広げる。


「ヘクトル川がここで…そうね。大体合ってると思うわ」

「川の形が大きく変わってなくてよかったな」

「そうだね。そしてナズナが行きたい場所が驚くことにここなんだ」


 コーネルさんが指差した先に小さな光が灯る。


「もしかして孤児院のあった場所なんですか?」

「孤児院?」

「この森に孤児院があってね。ナズナの刀の元の持ち主と関係があるんだ」


 ゲンリュウさんがいるから詳細を伏せてくれたんだろうか。


「ふむ…こんなところに…昔というと魔族の孤児院があったということなのか?」

「ううん、人族のだよ。奴隷や捕虜として、商人として、理由はいろいろだけど戦時中も多少は人族がいたんだよ」

「孤児院の話は聞いたことないけど、村の近くに戦争で亡くなった人の慰霊碑があるよ」

「確かにあったわね…四角い苔むしたのが…」

「とりあえずバックに行くのは変わらねぇってことか」

「そうなるね。ありがとうコーネルくん」

「港に着いたらお別れだな」

「あとで報酬まとめとくぜ」

「なんだか念押ししたみたいで悪いな…」

「気にすんな。さて…子供は寝る時間だぜ。リネはもう寝てるし」


 ちらっと足元のリネを見ると確かに眠っているみたいだ。


「わかりました」

「リネは私が運んであげる」


 私が席を立つとお姉さまもそう言って席を立つ。


「みなさんおやすみなさい」

「おう」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 お姉さまがリネを抱っこしてくれたので、船室への扉を開けて二人を先に通してあげて、部屋に入る時も同じようにする。

 お姉さまがリネをベッドの足元にゆっくりと寝かせるとリネが丸くなる。


「さっきの話、夢と関係があるのかしら?」

「はい…お姉さまに話した女の人は孤児院の院長先生だったかもしれなくて。それでエリンさんに朝話してみたんです」

「そうだったの…」


 お姉さまがベッドに上がって横になる。


「お姉さま?」

「寝るまで一緒にいるわ」

「そうですか」


 私もブーツを脱ぎながら柵を越えてブーツに手袋を脱いで入れておき、横になる。


「フィシェルはああ言っていたけどまだ眠たくないでしょ?」

「はい…正直あまり」

「院長先生はどんな人だったの?」

「わかりません。あれが初めてだったので…」

「そう…こうしてお話しながら眠ったら夢に見れたりするのかしら」

「どうなんでしょう…お姉さまはお爺さんの話をした後は必ず夢に出てきたりしますか?」

「必ずではないわね…」

「私も一緒です。夢を見た気がしても覚えてないこともありますし」

「私もよ。本当にただの夢でお爺さんなんていないんじゃないかと思ったことあるけどね。ナズナにあって夢の話を聞いた時、やっぱりただの夢じゃないんだって嬉しかったわ」

「お姉さま…」


 お姉さまの綺麗な青い瞳が潤んでいき、私は無意識に手を伸ばしてそっと涙を拭っていた。


「ありがとう。なんだかしんみりさせちゃったわね…そういえばフィシェルの顔見た?」

「はい…まだシワが寄ってました」

「ふふふ、今頃愚痴ってるかもね」

「ふふ…そうかもしれません」

「あと…マスティアって奴、ナズナが精霊って気づいて、内緒のはずのエリンのことも知ってたのよね?」

「そういえば…私はともかく、エリンさんのことまで知っているのは変なような」

「森にいたあいつが調べてたのかしら…」

「エリンさんが城から出たところなんて見たことありませんが…商人さんや配達の人が出入りしていたので、変装とかされていたらわからないかもですね…」


 お姉さまが突然ガバッと起き上がる。


「ごめんナズナ…みんなもとっくに気がついてることかもしれないけど一応報告してくるわ!」

「そうですね…お願いします」

「いってくるわ!」


 動きは素早くそれでいてリネを起こさぬように静かにお姉さまがお部屋飛び出していく。

 ガンドルヴァルガさんは何か目の敵にでもされているんだろうか。

 わざわざ喧嘩を売るようなことをしているみたいだ。

 カイラルとは国の名前なのか、組織の名前なのか。

 国の名前だったら誰かが場所を知ってそうだし、組織の名前だろうか。

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