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揺れるし歩きにくいけどなんとか

「遊ぶといっても、もう日が落ちてしまうんじゃ?」

「うん。日が沈むまでの少しだけだけどちょっと待ってて」


 エリンさんが私を海に残して船の上に飛んでいき、少しするとリネとお姉さまを連れて海に降りてくる。

 不思議なことに三人ともそのまま海の上に降りて沈まずに立っている。


「それがさっき言っていた魔法…」

「そうだよ。本来は川を渡るのに使うものだけどね」

「それでどうやって遊ぶのかしらね?リネ」

「それは私もまだ聞いてなくて」

「うーん…三人でかかっておいで」


 目の前にお城でも遊んでいたおもちゃの剣が現れる。

 私とリネには同じものが、お姉さまには両手剣に合わせてか大きな剣。

 エリンさんは槍を持っている。杖の代わりだろうか。


「私は魔法禁止、リネは飛ぶの禁止ね。そしてミーティアは魔力を止め続けながら、ナズナは逆に海に落ちないように魔力を出し続けながらね」

「訓練を兼ねてるってことでしょうか」

「まあそうだね。足場が悪い中、戦うのは大変だよ?さあナズナも頑張って立って」

「わかりました」


 剣を取り、足から魔力を出して盾から海面へ立ち上り、盾を消す。

 三人は結構平然と立っていてすごい。

 なんだか滑るし揺れるしでかなりきつい。


「よし、じゃあ日が沈むまでに、私に誰でもいいから一撃当てたら三人の勝ち、先に日が沈んだら私の勝ち。さあかかっておいで!」

「リネ!時間を稼ぐわよ!ナズナもその間に動けるように慣れるのよ!」


 お姉さまの言葉にリネがわふっと答え、二人がエリンさんに向かって海を駆けていく。

 揺れ動く波間をものともせずに二人が左右からエリンさんに斬り込んでいき、エリンさんもそれを悠々と避ける。

 私も早く動けるようにならないと。

 ゆっくりと足を進め、海面を踏み締める。

 とりあえずは大丈夫そう。

 リネとお姉さまが代わる代わる、時に同時に攻め立てているけど、エリンさんは微笑みを携えたまま、攻撃を避け、二人をおもちゃの槍で小突いている。


「ミーティア、ちゃんと意識し続けてる?えい」

「いひゃっ!?変なとこつつかないでよ!止まってるかは知らないけど一応ちゃんと頑張ってるつもりだわ!えい!」

「おっと危ない!リネも楽しそうで何より何より!さて、そろそろ大丈夫かなナズナ?」


 エリンさんが二人の脇腹を小突いてくすぐって体勢を崩し、私の方へと駆けてくる。

 私も剣を中段に構えて駆け出し迎え撃つ。

 間合いを詰めないと。

 伸びてきた槍先を右に弾き、さらに即座に上に弾いて、空いたお腹に向かって剣を突き出す。


「ほうほう…上手になったよ」


 そう言いながら私の突きを回転して避け、振り返り様にすごい速度で槍先がまっすぐ伸びてきて肩を押される。

 確かにちょっとくすぐったい。


「三人でいくわ!」

「はい!」


 わふっと吠えるリネとお姉さまとエリンさんへと同時に斬り込む。

 エリンさんも目にも止まらぬ槍捌きで、私の剣を避けて、お姉さまの剣を弾いて、リネに突きを繰り出し、私とお姉さまは頭をぽふっと叩かれる。


「おーい!飯にすっぞ!」


 フィシェルさんの声が響き渡って、みんな動きを止める。


「私達の負けだわ…」

「そうですね」

「伊達に戦場を生き抜いてきたわけじゃないからね」


 気が抜けてしまったのか疲れたのか、突然身体が海に落ちていき、咄嗟に両手から魔力を出して手を突いて何とか首下で止まる。

 さっきはそれほどでも無かったのに胸がきゅっとするくらい海水が冷たい。


「ナズナ?大丈夫?」

「ちゃんと意識し続けないと」

「ごめんなさい」

「リネ、ナズナのこと甲板に運んであげて?」


 エリンさんにわふっと返事をしたリネがふわりと飛んで来てくれて、リネの後ろ足を掴むと上昇していき、甲板の上で下ろしてくれる。


「ありがとうリネ」


 少し寒くて身体がぶるっとする。

 テーブルや椅子が出されていて、テーブルの上にはもう料理が並べられている。

 フィシェルさんとコーネルさんとゲンリュウさんの三人が用意してくれたんだろうか。


「とりあえずこれに着替えとけ」


 声の方に振り向くとふわふわと布が飛んできて、咄嗟に両手で受け取る。


「風邪引くぜ?」

「ありがとうございます」


 服を投げてくれたのはフィシェルさんで、渡されたのは前にも貸してくれた水色のシャツみたいだ。

 海水で重たくなった青いケープを脱いで、濡れて貼り付くシャツを脱ごうと、捲りあげているとゲンリュウさんと目が合う。


「えーっと…」

「はしたないが、事が事だ」


 そう言うとシャツを脱がしてくれて、パンツも一気に下ろされ、水色のシャツを着せてボタンを閉めてくれる。


「ありがとうございます…」

「やはり将来が少し心配だぞ?娘よ」

「ごめんなさいお父さん…そういえば下着は大人の穿くものだと聞いたのですけど、トコヨでもそうなんですか?」

「そうだな…男は皆するが女はある程度位の高い者が多くて、普通はしないな。子供だからとかは特になくて男女で分かれているな」

「そうなんですね」

「ほら出来たぞ」


 袖も捲ってくれてすぐに着替えられた。


「ゲンリュウちょっとナズナを逆さに持ち上げてくれ」

「え?…うわっ」


 ゲンリュウさんがフィシェルさんに言われるままに私の腰を掴んで持ち上げて器用にひっくり返すと。フィシェルさんが杖から熱風を出して、垂れ下がった私の長い髪を乾かしてくれる。

 裾が捲れて、股の間に冷たい風が吹いてちょっと寒いし、流石にちょっと恥ずかしい。

 ひっくり返す必要はあったのだろうか。


「いいぜゲンリュウ」

「よっと…無事かナズナ」

「はい…流石にちょっと恥ずかしかったです…」

「魚に毒は無かったから、焼いといたぜ」

「美味しそうだね」

「いい匂いがするわ!」


 エリンさんとお姉さまも戻ってきて、みんなで席に着き、フィシェルさんが出してくれた明かりの元で夕食にありついた。

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