やっぱりお手伝いしたいお年頃
小舟に乗ったコーネルさんとお姉さまが触手に切れ目を入れて、切れ目からリネが皮を剥ぎ、コーネルさんとお姉さまとゲンリュウさんが芯の辺りを切り出して、運ぶ。
私も何か手伝おうとしたけど、危ないからと、一人待機させられている。
クラーケンを食べてみたいと言い出したのは私だからなんだか申し訳ない。
「ほらよ。米洗ってくれるか?」
「はい!」
フィシェルさんが米の入った桶と水の瓶を渡してくれて、手袋を取ってブーツの隙間に入れておいて、栓を抜いて水を注いでお米を研ぐ。
「水は海に捨てていいぜ。落ちないようにな」
「はい!」
甲板の縁まで行って、手すりから桶の水を捨てようにもギリギリ過ぎて難しい。
エリンさんとフィシェルさんは何かを切ってて忙しそうだけど、落ちちゃったらもっと迷惑がかかってしまう。
「ごめんなさい。どちらか水を捨ててもらってもいいですか…?届かなくて」
「任せて!」
「ごめんな。届かなかったか」
「いえ」
エリンさんが桶を受け取って海に水を捨ててくれる。
「あとは任せてね」
「わかりました」
エリンさんが米を鍋に移して、切った具材や調味料を入れていいき、水を注いで蓋をする。
そして鍋が宙に浮いて炎に包まれる。
「あとは炊けるの待とうね」
「めっちゃクラーケン余ってるけどどうすんだ?」
「とりあえず凍らせて船倉に積んでおこうか」
「じゃあさっさと運ぶか。何か寄ってきても面倒だ」
「ナズナ、お鍋の火が消えたらテーブルに置いておいてくれる?」
「わかりました」
「じゃあウチらちょっと行ってくる」
「はい」
船から離れる二人を見送り、ブーツの隙間に入れておいた手袋をつけ直して、ブレスレットで止める。
鍋は変わらず火に包まれているからまだ消えなさそうだ。
少ししてフィシェルさんとエリンさんが切り分けたクラーケンの肉を運んできて、甲板の床を開いて下の船倉へとどんどん下ろしていく。
望遠鏡を片手に手すりから覗くと、ゲンリュウさんとコーネルさんがまだ触手を切り分けている。
リネも空を飛んでいろいろお手伝いしているみたい。
ぽしゅーっという変わった音がして、テーブルの方を見ると鍋を包んでいた炎が消えている。
私は言われた通りに、宙に浮いた鍋の取っ手を掴んでテーブルに下ろす。
手袋をしているから熱くない。
「さてと、あとは分厚い皮だから食べられないけど…燃やしといたほうがいいのかなフィシェル?」
「そうだな…燃やしとくか。ついでに軍艦に行って無事と燃やすこと伝えとくぜ」
「お願いね。私はご飯の用意を終わらせておくよ」
「おう」
そんな会話をしてフィシェルさんがまた飛んでいく。
「それじゃあナズナ、開けてみようか」
そう言ってエリンさんが指を振ると木の踏み台が出てくる。
「これで作業しやすくなるよ」
「ありがとうございます」
踏み台に立って鍋の蓋を取ると、湯気と共に出汁のいい香りが漂ってくる。
「これで下から天地を返す感じで混ぜて」
「はい」
木のへらを渡され、言われた通りに下から掬い上げて天地を返しながら混ぜていく。
おこげも出来てて美味しそう。
「上手だね」
「ありがとうございます」
なんだかちょっと恥ずかしい。
「あとは盛るだけだから一旦蓋をしておこうか」
「はい」
言われた通りに蓋をすると、エリンさんが壺をから野菜を取り出す。
「あとはこれを食べやすい大きさに切ろう」
「わかりました」
にんじんっぽいやつを渡されて、とりあえず短刀で薄切りにしていく。
「これはなんですか?」
「トトヤルっていうエイリアの漬物みたいなものだよ」
「漬物…お米に合いそうですね」
「ふふふ、でしょ?」
もしかして勇者とも似たような会話をしたんだろうか。
少し寂しそうに見えた気がした。
にんじんっぽいやつ、茎っぽいやつをそれぞれ一口大に切り終えると、エリンさんがお皿に盛り付けていく。
風が強く吹いたかと思ったらリネの仕業だったようでコーネルさんとゲンリュウさんを連れて戻ってくる。
「お疲れ様です」
「これくらい平気だ」
「ああ、でもミーティアが…」
コーネルさんがそう言うと、お姉さまが剣から人の姿に戻る。
しかしすごくなんだかぬるぬるでべとべとしているみたい。
「ええ…そうね…お風呂に入りたいわ」
「ミーティアひどいね…パルマ!」
エリンさんがお姉さまに向かって杖を掲げると、お姉さまの身体から粘液が剥がれて消えていく。
「凄い!綺麗になったわ!」
「どういたしまして。リネは平気?」
リネが狼の大きさに戻って元気にわふっと吠えるけど、口のまわりがすごい濡れている。
「濡れているみたいですね」
「そうだね……パルマ」
リネも口のまわりからも粘液が剥がれて消える。
そして焦げ臭い香りが漂ってきて、フィシェルさんも戻ってくる。
「軍艦にも報告終わったぜ」
「それじゃあみんな揃ったし、ぼちぼち食べ始めようか。はいナズナ、お椀。みんなによそってあげて」
「わかりました」
とは言ったもののどれくらい盛ればいいんだろう。
とりあえずリネには大盛りに、お米が好きなゲンリュウさんも大盛りに、コーネルさんは男性だから大盛りに、あとは普通に。
「ありがとうナズナ。それじゃあ食べよっか!」
「いただきます」
私がいただきますと言うと今日は珍しくゲンリュウさん以外のみんなもいただきますと言ってくれた。




