表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/229

大事なものが増えた

 フィシェルさんが持つ鏡のような黒い石の断面に夜空を駆けるリネの姿が映る。

 背には光る棒を持った誰かを乗せていて、リネと同じくらい大きな竜と空で絡まり、ぶつかりあい、大きな火の玉をリネが避けている。


「これは…」

「昨日の夜、ウチが見た光景だ」

「フィシェルさんが見た?」

「頭に直接送り込めば楽なんだけどナズナには多分出来ねーから」


 フィシェルさんの記憶を黒い石に映し出してるということなんだろうか。


「実は昨日の夜、ナズナが寝た後にナズナの代わりにリネと哨戒に出ていたの」


 お姉さまが語り出す。

 背に乗っているのはコーネルさんで光る棒はお姉さまということだろうか。


「そしたらアンデッドドラゴンが襲ってきてね。三人でやっつけたのよ」

「アンデッドドラゴン?」

「死んだはずの竜が体内の魔石の魔力が原因で暴れ出すことがあるんだ。痛みも感じずに魔力が尽きるまで暴れ続けるって言われていてね。普通の竜の何倍も強くて凶暴で危ないんだよ」

「そのアンデッドドラゴンの魔石がその赤い石。ナズナにプレゼントよ!」


 黒い石にはリネの攻撃をものともせずに火の玉を吐いて飛び回る姿が映っている。

 お姉さまの最初の一太刀も効いた様子はなかった。

 三人が苦戦するほどの相手はなかなか想像できない。


「でも…なんで私に?」

「覚えていて欲しいからよ。リネも私も、凄いんだって。ナズナには心強い家族がいるって」


 お姉さまが左手を突き出す。

 お姉さまの左の手首にも同じブレスレットが巻かれている。


「リネのも作ってあげたかったけど、流石に長さ自由自在なのは簡単に用意出来なくて、エリンを困らせてしまったわ。だからナズナには二つ、あなたとリネの分」

「ナズナ、その魔石を外してみて」

「外す?」


 指先で魔石を摘まんで引っ張ってみると、ぱちっと音がして外れる。


「そのまま手に持ってブレスレットと離してみて」


 言われた通りに右手のひらに魔石持って、左にブレスレットを二つ持ったまま左右にそれぞれ手を離す。

 すると右手の魔石がころころかたかたと揺れ動く。


「動いてます…」

「どこにお姉様がいるかを確かめられるんだ。まあお守りみたいなものだよ」

「ありがとうございます…大切にします」


 魔石を押し込むとぱちっと音がしてしっかりとはまる。


「喜んでもらえてよかったわ。何か迷った時は思い出して…私もリネもいることをね」

「もちろん私達もね!」


 しんみりとしかけた空気をエリンさんがゲンリュウさんと肩を組んで和やかにしてくれる。


「そうだな。お父さんだからな」

「ありがとうございます」


 早速、手袋の上から身に付けておく。


「リネ!ナズナ咥えて飛べ!他は衝撃に備えろ!」


 フィシェルさんの叫び声がした途端、リネが身体の大きさを大きくしながら私を頭から咥えて飛び立つ。


「フィシェルさん!みんなっ!」


 今度は空に投げ出され宙を舞い、天地がわからなくなったところで大きなリネも背に横向きに落ち、腕を伸ばしてしがみついて首元に這っていって下を覗く。


「リネありがとう。みんなは?」


 ぎぎぎぎという音が聞こえて、音のする方を見る。

 大きな黒い触手のようなものが船を掴んでぎぎぎぎと音を立てている。

 カンカンカンと鐘の音が響いて軍艦が集まってきて、海兵さん達が次々に大砲を撃ち、槍を投げていく。

 全然効いていないように思った瞬間に槍が刺さったところが弾け、触手がうねって掴んで船を振り回す。

 船から光の筋が伸びて横に動いて消える。

 触手が切断されて、ゆっくりと落ちていく。

 きっとお姉さまとコーネルさんだ。

 斬られたことに気づいたのか、触手がうねうねとしながら海中へと逃げていく。

 船に当たらないか心配だったけど大丈夫みたいだ。

 船もゆっくりとそのまま海に着水する。

 フィシェルさんの魔法だろうか。


「リネ船に戻っても大丈夫じゃないかな」


 リネがゆっくりと船の近くまで行って、空中で待機する。


「大丈夫でしたか?」

「おう!平気だ!降りてきていいぞ!」


 リネが甲板に降りて、伏せて身体を小さくして降りやすくしてくれる。

 リネの頭を撫でてから甲板に降りると、みんな無事のようだ。


「あれはなんだったんですか?」

「クラーケンだよ」

「あんなのが普段からいるんですか?」


 魔物が出たとか以前の問題ではないんだろうか。


「ああ、けど意外とあれはまだいい方だぜ。魔物の方が硬くてめんどくさいからな」

「海兵さん達も魔物と違ってクラーケンには慣れっこみたいだしね」

「そうですね。すぐに大砲と槍が…」

「餌じゃねーってわかったら放すことも多いから、まあちょっと運が悪かっただけだな」

「そうなんですね」

「とりあえず揃ってるし昼にしね?」

「そうだね」

「ナズナは何が食べたいかしら?」

「そうですね…」


 ふと、たこ焼きという言葉が頭に浮かぶ。


「クラーケンって食べられるんですか?」

「え?」

「ほほう…」

「ナズナ?」

「ウチでもクラーケンはちょっとな…」

「ユウキも同じこと言ってたよ。よし…フィシェル手伝って!コーネルくんとミーティアは扱いやすいように触手を切るの手伝って!」

「ナズナには悪ぃけどまじで食うのか?」

「大丈夫。味は保証するよ」

「やるわよコーネル!可愛い妹のために!」

「俺も正直気乗りしないなぁ」

「俺は気になるな。どんな味がするのか」

「ほらほらみんな!お昼ご飯遅くなっちゃうよ!」


 なんだか私の一言で大事になってしまっただろうか。

 でもどんな味がするのか楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ