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すっぱいおにぎりの具といえば

「お前らこんなに船から離れて…満足したか?」


 上から声が聞こえて振り向くと、フィシェルさんが上から俺達を見下ろしていた。


「フィシェル!いつの間に!…いつから?」

「割りと最初っから」

「え?」


 リネがくぅーんと可愛い声を出す。


「リネは気づいてたのか?」


 リネが小さく縦に頷く。


「じゃあミーティアは…気づいてなかったのか…」

「あはは…練習しとかないとあの状態は危ないわね…」

「流石にあんだけ空がチカチカ光ってたら気づくぜ。俺が船から離れる時はまだナズナは寝てたはずだが、リネの凄い声で起きてるかもな」

「ナズナちゃんはリネがあんなこと出来るの知ってるのか?」


 リネが首を横に振ると、フィシェルさんが杖を取り出して空に穴を開ける。


「一先ず船に帰るぞ。リネもエリンに見てもらえ」

「リネ!怪我してたの!?」

「ごめんリネ…俺も気づかなかったよ」


 リネが元気に吠える。

 気にするなって言ってくれてるんだろうか。


「とりあえず早く入れ。ミーティアもそれ一旦預かってやっから」


 ミーティアが抱えていた二つの魔石がふわりと独りでに浮かんでフィシェルさんが脱いだ三角帽子へと入っていく。

 ぐいっと身体が引っ張られ浮遊感を感じていたら、リネの背に着地する。


「ありがとうリネ。ミーティア、手」

「ありがとう二人とも」


 ミーティアを引っ張り上げてリネの背に乗せると、リネがゆっくりと穴の中に入っていく。


―――――――――


 ゆっくりと目が覚める。

 てっきり勇者か子供達が会いに来てくれるかと思っていたけどそんなこともなかったみたいで、夢を見た感じは一切ない。

 少し肌寒さを感じて身体を起こすと、足元か隣で眠っているはずのリネの姿が見当たらない。

 どこにいったんだろうと部屋を見回すと、隣のベッドも空っぽで、お姉さまの姿もない。

 寝坊しちゃったんだろうか。

 それとも二人が早く起きて、まだ眠っているからとそのままにしてくれただけだろうか。

 頭が冴えてきて、窓のない船室では時間のことを考えても仕方ないと思い、ブーツと手袋を履いて早々に部屋を出る。

 真っ直ぐ甲板に出ると、暗がりに慣れた目に陽射しが差して眩しい。


「おはようナズナ」

「おはようございますゲンリュウさん」


 ゲンリュウさんが声をかけてくれ、青いケープのフードを被せてくれる。

 今日は陽射しが強いみたいだ。


「起きたら部屋にリネもお姉さまもいなくて、寝坊しちゃいましたか?」

「そんなことはないぞ。エリンと船倉にいるはずだ。コーネルも一緒にな」

「船倉に?」

「ああ、何やら作業をしているみたいだぞ。とりあえずナズナも飯を食うといい。確かそこの卓上に…」


 ゲンリュウさんが甲板の端の方に置かれたテーブルの方を指差す。

 テーブルの上には包みと瓶が置いてある。


「ありがとうございます。悪くなる前にいただきます」

「そうするといい。俺は甲板に、舵にはフィシェルがいるから何かあれば声をかけてくれ」

「わかりました」


 椅子に座って包みを開く。

 中にはおにぎりが二つ入っている。

 嬉しくなって早速頬張ると、塩が強めだけど、お米の甘さも引き立って美味しい。

 二口目も頬張ると何か酸っぱいものに当たる。

 おにぎりの断面の中央には何か赤紫色の実が見える。

 何か味の似ている苦手な物があったような気がするけど、これは勇者の記憶だ。

 飲み物が欲しくなって、おにぎりを置いて瓶を取る。

 栓が硬い。きつくて取れない。

 けどなんだか自力で取れないのが恥ずかしくて必死に指先に力を込めるけど、びくともしない。

 一度テーブルに瓶を戻すと、きゅぽんっと音を立てて栓が飛んでいく。

 炭酸だったんだろうかと恐る恐る口をつけてみたらただの美味しい水だった。

 ぺろりとおにぎり二つと水を飲み干して、一息ついて席を立つ。

 とりあえずフィシェルさんに何をしたらいいか聞こうと思い、階段を上がって舵の方へ歩いていく。


「おにぎり旨かったか?」

「美味しかっです。フィシェルさんが作ってくれたんですか?」

「おう。ゲンリュウ酸っぱくてしょっぱいものを入れてくれって言われてな。ゲンリュウにも好評だったぜ」

「そうだったんですね。あの今日は何をしたらいいですか?」

「軍艦とウチらの船が襲われて予定が変わってな。もう少し警戒を続けることになってよぉ。とりあえず今日は休みにしてまた明日リネと飛んでくれると助かる」

「わかりました」


 わかりましたと言ったものの船の上で何をしよう。

 とりあえず素振りとかだろうか。

 休みって言っただろって注意されるだろうか。

 どうしようかと考えながら腰につけっぱなしだった望遠鏡を覗く。

 波間がきらきらと反射して綺麗に見える。

 見つけた軍艦の甲板には海兵さんがいて、双眼鏡で周囲を警戒しているみたいだ。

 海兵さんが私に気づいたか片手を横に広げてから胸を叩く。

 私に気づいて敬礼してくれたんだろうか。

 私も海兵さんの方に身体を向けて敬礼する。


「なにやってんだ?」

「海兵さんと目があったみたいで、敬礼をしてくださったので私もお返しを」

「そっか。一度船倉に行って顔を見せてきてやれよ。リネもミーティアもきっと喜ぶぜ」

「そうですね。まだ今日は顔を見てないですし、いってきます」

「おう。暗いから気をつけろよ」

「はい」


 階段を下りて船室へ入り、通路の先の梯子を踏み外さないようにゆっくりと下りていく。

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