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くさい臭いの正体

 ナズナが寝静まった夜、ナズナの代わりに夜の空をリネと共に風を切る。

 海面すれすれをリネが飛び、ミーティアが敵を探す。

 俺は正直することがない。

 しかしミーティアが周囲の生物を感知する不思議な力は剣になっていないと発揮されない。


「ごめんなリネ。徹夜になるけど大丈夫そう?」


 元気に吠えて返事をくれるということは大丈夫ということだろうか。


「コーネルこそ居眠りしないでよ?わたしも一緒に海に落ちちゃうんだから!」

「大丈夫だよ。仕事中居眠りしたことなんてないだろ?」

「あるわ!イースで一回でしょ、後はマクで一回!」

「いやいや、あれは居眠りとは違うだろ?」

「いーや、居眠りは居眠りよ!特にイースの時は大変だったんだから!」

「いやいや、」


 わふっとリネが吠える。


「ごめんなさいリネ」

「ごめんちゃんと集中しないとな。ミーティア海中の様子はどうなんだ?」

「今のところは特に何もないわ。海の中ははっきり感じられないのもあるけど。少し今日は臭く感じるくらいかしら?」

「磯の香りが強いのかもな。けど策敵するにしてもあまりミーティアを海水に浸したくもないしな。そういえば体調に変化はないか?」

「大丈夫よ」

「ならいいけど」


 エリンさんに渡された砂時計を確認する。

 もうそろそろ砂が全て下に落ちそうだ。


「リネ、そろそろ時間みたいだから船の方に戻ろう」


 リネが返事をしてくれ、進路を変える。


「その砂時計ってやつ、作るの大変そうね」

「そうだな。どうやって時間を計って砂の量を決めるのやら」

「お城の食堂の大きな時計を眺め続けたのかしら」

「ありえなくはないな。流石に太陽を眺め続けて作ったりしてないだろうし」


 丸いガラスに包まれていて動いても傾いたりせずに中の砂の入った真ん中が細くなった筒は垂直のままだ。

 魔法道具なんだろうか。

 一瞬鼻を突く匂いがした。


「何かの死体か?リネ何かわかるか?」


 リネがくぅーんと弱った声で返事をする。


「何かいるわ…海の中からでも感じられるくらい強いのが…」

「何かの魔法生物か?海で死臭を漂わせるやつって…」

「クラーケンとかかしら?…リネ!何かくるわ!」


 リネの耳がぴくぴくと動いた瞬間にリネが急旋回をして振り落とされそうになる。

 必死にしがみついている最中、ボンという破裂音に似た音と共に大きな水飛沫が上がり、揺らめく光が空に飛び出していく。


「クラーケンって火を吹くの!?」

「そんな話は聞いたことないけど…」

「上がってくるわ!」


 月明かりに照らされた海面が盛り上がり、何かが飛び出してきたかと思うと、そのまま大きな翼を広げて飛び立つ。


「空を飛べる海の魔法生物ってなんだ!」

「わかんないわ!そんなの!」

「炸裂薬を使うぞ」


 腰に着けておいたエリンさんの魔法薬に手をかける。


「だめ!」


 ミーティアのまさかの一言で手元が狂って魔法薬を落としそうになって慌てて両手で掴む。


「正体を確かめてからか?」

「ナズナが気づいてしまうかもしれない…」

「おいナズナちゃんを起こしたくないからって報告しないのか!?」

「アンデッドドラゴンなら私の光属性が弱点のはずよ!」

「アンデッドドラゴン?」


 敵へと視線を戻すと、風が少し吹いて強烈な腐敗臭が漂ってくる。

 暗がりに怪しく浮かぶ二つの光に長い首と大きなボロボロの翼、鋭い爪の付いた四肢と長い尾。

 ミーティアの言う通りアンデッドドラゴンだ。

 見るのは二度目になる。

 死んだドラゴンが体内の魔石の力で再び動き出したものと言われているけど、詳細はわからない。

 わかっているのは魔力が尽きるまで暴れ続けるということだけだ。


「ナズナにはこの子は見せられないわ!」


 そういえば、リネとナズナが渡り竜と遭遇しているはずだ。

 しかしその時の竜とは限らないんじゃ?


「リネ…ナズナちゃんと見たやつなのか?」


 わふっと吠え、アンデッドドラゴンの放つ火球を上昇して避ける。

 渡り竜痩せ細った姿に心を痛めていたナズナには蘇って死ぬことすら許されず苦しみ続けるアンデッドドラゴンの姿は確かに堪えるかもしれない。


「ミーティア、本当にやれるんだな?俺達倒したことないんだぞ?」


 初めて森でアンデッドドラゴンに遭遇した時は依頼人の商人を逃がすのが精一杯で、倒すことなんてできなかった。

 あれから時が経っているとは言っても相手が痛みも感じずに暴れ続けるとなれば、普通の竜とは話が別だ。


「やってやるわ!そうでしょリネ!私達だけでこいつを倒して、ナズナにわからせるてやるわ!私達は強いって!」


 ミーティアは余程自分が置いていかれたのが腹が立っていたみたいだ。


「なんでも一人でやろうとするなって…私達をちゃんと頼るのよって言ってやるんだから!」


 リネがまるでやってやるぞと言うかのように雄叫びをあげる。

 するとアンデッドドラゴンも咆哮で答え、リネに向かって突っ込んでくる。

 リネは避けずに迎え撃ち、首に噛みつきながら前足でアンデッドドラゴンを殴打し、爪で切り裂く。

 しかし痛みを感じないアンデッドドラゴンは意に介さずに火球をリネに向かって放とうと、口腔から炎を吹き出し始める。


「ミーティア!怒られても知らないからな!」


 ミーティアを抜いてリネの背を駆け上り、アンデッドドラゴンの顎を下から突き上げて口を塞ぐ。

 アンデッドドラゴンの閉じられた口の隙間や鼻の穴から開戦の狼煙が吹き上がった。

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