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正直とっくに沈んでいるかと

 扉を叩く音がして机から視線を移す。


「エリュ、師匠からお前宛だ」


 トーチカの声がして、ペンを置いて椅子から立ち上がり、扉を開ける。


「間が悪いわね。私達これから帰るところなのにね」

「そうだな。内容次第では出発を早めようか?」

「そうね。その時は悪いけど付き合って」

「気にしないでくれ。じゃあ私も部屋に戻る」

「ええ、ありがとう」


 トーチカの背を見送って扉を閉め、机に戻って手紙の封を切る。

 中の紙には一言、時間のある時に玉を使ってくれ、とだけ。

 ベッドの上の三角帽子から玉を取り出して魔力を込める。

 いつの間に改良してこちらからも話せるようにしたんだろうか。


「エリュか?」

「はい師匠、エリュです。何か急ぎの用でしょうか?私とトーチカは二日後には帰る予定ですよ」

「うーむ急ぎと言えば急ぎだが迷ってることがあってな。レイゼリアから連絡が手紙が来た」

「レイゼリアから?」

「ナズナを生誕祭に招けないかとな」

「もうそんな時期ですか…けどレイゼリアは生誕祭を嫌ってたはずですけど」

「そういえば魔法の教師の依頼が来たのは生誕祭での御披露目のためだったか。ついこの間のような気がするが」

「エイリアと人とを比べるものではないですよ。それよりわざわざ私に連絡せずにナズナ本人に聞いてあげればよかったんじゃないですか?」

「そりゃ本人はきっとレイゼリアに会いたいじゃろう。しかし今頃はガームスで魔物退治だ」

「そうだったんですか?」

「フィシェルにエリン、リネにコーネルとミーティアも一緒だから安心してくれ」

「そうですか。多分無茶してますけどね」

「そうだろうな。時折勇者のような遠い目をしておるよ」

「そうですか…」

「それで連れて行っても平気だと思うか?」

「私からはなんとも…けどレイゼリアが誘って来たってことは大丈夫なのではないですか?」

「そうじゃな…間に合いそうなら連れてってあげなさい」

「私がですか?」

「その方が二人も喜ぶじゃろう」

「どうでしょうね」

「とりあえずそういうことだから考えておいてくれ。すまんがアリシアが呼んでるみたいだ。帰りを待っているよ」


 淡く光っていた玉が光を失い、声が聞こえなくなる。

 まあたまにはただの旅行もいいだろうけど、人混み得意じゃないんだけどな。

 子供扱いされるし、蹴られそうになるし、押されそうになるし。

 とりあえずこのレポートをまとめて早く寝よう。

 ペンを拾い、紙を文字で埋め尽くしていく。


―――――――――


 破裂音が響いて、緑色の煙の塊が左の方の空に浮かぶ。


「リネ!行ってみよう!」


 リネがわふっと返事を返して進路を変え、風を切って炸裂薬の上がった方に飛んでいく。

 煙の下にいるのはエリンさんだ。

 そして先にフィシェルさんが奥から飛んでくる。


「エリンさん!フィシェルさん!」

「みんな…あれ」


 エリンさんが指差す先の海面に何かが漂っている。


「ウチが取ってくる」


 フィシェルさんがそう言って間伐入れずに急降下して、すぐに何かを拾って急上昇してくる。

 手の上に浮かせて運んでいるのは腕だ…。


「ナズナ、リネ、間違いねーか?」


 腕は水を吸って、ぶよぶよして見えるけど、血のように赤黒く見えたり、黒紅色に見えたりする特徴的な外套の袖は間違いないように思う。


「はい…リネ、匂いは?」


 リネがわふっと吠える。


「沈んでなくて運が良かったぜ」

「そうだね…また戦争でもやりたいのかな」

「どうだろうな。やましいことはあんだろうが、したくねぇから中立で有名なウチらで実験がしたかっただけかもしんねーし。が、もしナズナが本格的に狙われるようなことになれば、賢者の杖総出でぶっ潰すけどな」

「一応賢者の杖と呼ばれて否定しておいたんですけど、どっちが良かったんでしょうか…」

「うーん、賢者の杖ってことにしといた方が楽だったろうが、ウチらは三角帽子と金色の紐を身に付けてるって有名だからな。結局すぐに嘘だってばれるぜ」

「そうなんだね…そういえばいつから賢者の杖なんて呼ばれるように?」

「知らね。でも魔族との戦争の後からなのは確かだぜ。その頃から師匠は森に籠りっきりらしいから」

「そう」


 エリンさんが指を腕に向けると氷に包まれて綺麗な長方形の氷になる。

 フィシェルさんがそれを三角帽子を脱いで中にしまう。


「そういやリネ、前に手に入れた魔物を引き付ける匂いはしたか?」


 リネがくぅーんと困った声で鳴く。


「どこにでもある素材だったからね…わからなくても仕方ないよ。それに身体についていたら本人が襲われちゃうかもしれないし、この腕も魔物に食べられてたかも」

「確かに…リネ気にしないでくれ」

「とりあえず警戒を続けよう。散開ね」

「おう」

「はい。リネお願い」


 わふっと返事をして元の方向へリネが迷わずに飛んでいく。

 私は望遠鏡で水平線を眺める。

 黒い、いや茶色い?

 点々が水平線に浮かんでいる。

 どこかの船だろうか。かなり遠いことだけは確かだ。

 それきり海で何かを見つけることもなく、日の入りを迎え、リネと一緒に船に戻る。

 海中のものはソナーとかがないと探すのがやっぱり厳しいだろうか。

 ソナーってなんだろう。勇者の記憶がするっと出てきた。

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