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斬るしかないと思った

 四つの鉄塊を順に出しては消して足場にし、暗い夜空を駆ける。

 銀色の大きな身体が月明かりに照らされて暗闇に浮かぶリネの視線の先にヘンダーがいるはずだ。

 しかし、ヘンダーの黒紅色の外套が闇夜に溶けて見つけられない。

 ガンゼツの武器のように光の加減で色が変わっているんだろうか。

 血のように濃く暗い赤に見えたり黒紅色に見えたりと、特殊な素材なんだろうか。

 きらりと月明かりが反射して小さな光が浮かぶ。きっと杖だ。

 鉄塊を盾に戻し、全身に魔力を駆け巡らせる。

 髪が白くなっては位置がバレるかもしれない。刀を出すのも直前にするべきだろう。

 空間が揺らめき、何かがリネへと放たれる。

 今だと思い、盾を蹴りあげて跳び、ヘンダーを杖ごと袈裟斬りする。


「ぐっ!ソガキィ!!」


 やっぱり特殊な外套なんだろうか。

 確かに当たったはずなのに杖しか斬れていない。

 盾を足場に踏み込んで刀に魔力を込めて、即座に斬り返す。


「ぐぅっ!!腕がっ…」


 浅い。折れた杖で防御しながら後ろに下がったヘンダーの右腕が宙を舞う。

 胴体には届いていない。

 私の頭上からリネの爪がヘンダーを襲う。


「賢者の杖ごときにぃ…」

「賢者の杖じゃ、ない、です!」


 鉄塊を足場に突き、横斬り、突きと連続で刀を振るうけど、ヘンダーがそれを瞬間移動で避ける。

 最初に刀を突き刺して魔法を封じるべきだった。

 左手で何かを取り出して瞬間移動を繰り返して距離を取り、小瓶を一気に呷り私に空の瓶を投げつけてくる。

 全然当たらなかったけど。


「おじさんの負けだよ…おじさん怒られちゃうなぁ」


 突然しおらしい演技をしだして気持ち悪い。

 そしてぱっと消えてしまう。

 魔力を回復できる薬か何かだったんだろうか。


「リネ…近くにいる?」


 リネが首を横に振る。


「とりあえずお姉さま達をリネに乗せてあげよう」


 そう言うとリネが下降していく。

 リネの行く先に船があるはずだから、私も鉄塊を出し入れしてリネの後を追う。

 月明かりに照らされた、後ろ半分が吹き飛んだような姿の帆船が目に入る。

 傾いてもいないということは魔法で浮かんでいるんだろうか。


「リネ!ナズナは!」

「ここにいます。リネ、みんなを甲板に移してあげてくれる?」


 私はとりあえず無事そうな甲板に降りると、リネが三人を乗せて甲板にふわりと降りてきて、背から翼を伝って三人が降りると狼ほどの大きさに身体を縮める。


「うっ…」


 お姉さまが飛びついてきて、衝撃で空気が漏れる。


「どうして飛び出して行ったの!」

「リネが、心配で…」

「空を飛べなくてもコーネルと私なら遠距離から攻撃できるし……ちゃんと言うこと聞きなさい!」

「ごめんなさい」

「耳は大丈夫かい?」


 コーネルさんも近づいてきて、お姉さまと私の頭に手を置く。

 耳のことを思い出した途端にズキズキと痛み出してきた。


「ちと染みるぞ」


 ゲンリュウさんがそう言って何かがかけられる。冷たいから水だろうか。なんだか甘くて鼻がつんとする香りがする。

 そして傷に何かを塗られる。

 最初は少し染みたけどすぐに痛みが引いていく。


「エリンがくれた薬だ。このくらいはきっとすぐに治る。ミーティアも足を見せろ」

「ありがとうゲンリュウ」


 お姉さまがドレスを巻くって足を出す。

 輪の形に歯形が付いていて、血が滲んでいる。

 ゲンリュウさんが水をかけると、お姉さまが顔を歪ませて耐え、そして傷に薬を塗って包帯を巻いていく。


「これでよし!」

「手慣れてるわねゲンリュウ」

「これくらいできないと一人で旅はできん」

「それもそうですね…ゲンリュウさんお酒の匂いしません?」

「ああ酒をかけたからな」

「え?」

「酒をかけるとな膿が出来にくいんだ」


 アルコール消毒という言葉が浮かんで消える。


「そういえばヘンダーは!?」

「また逃げられてしまいました…次は殺しにくるかも…」

「最初からそうじゃなかったのか?」

「私を捕まえにきたと言ってました…なので殺す覚悟で刀を振って…右腕を…」

「右腕!?」


 お姉さまがペタペタと私の身体を確かめ始める。


「ヘンダーの右腕を斬ったんです…だから怒ってるだろうなって」

「それは…そうかもね」

「一回目は杖しか斬れなくて、外套は斬れなかったんです。そういう服や防具って普通にあるんですか?」

「あるぞ。魔法生物を素材にしたものは丈夫だ。かなり値が張るはずだがな」

「ゲンリュウさんの言う通りだよ。かなり高いから俺もそんなのは持ってないけど、エリンさんやフィシェルさんやナズナの師匠のエリュさんとかは持ってるかもね。魔法使いとしての技術が高ければ、自分で素材を入手して、加工も出来るだろうから」

「それをどうやって斬ったのかしら?」

「刀に魔力を流して斬りました」

「斬れ味が増すのかしら?」

「ほう…それは俺も気になるな」

「どうなんでしょう…リネは怪我は大丈夫?」


 ゲンリュウさんにガンゼツの武器だということを伝えてないので誤魔化したけど、強引になってしまった。

 リネはヘンダーを圧倒しているように見えていたけど心配なのは本当のことだ。

 わふっと答えてくれたリネの頭をしゃがんでわしゃわしゃ両手で撫でてあげるとリネの尻尾が左右に激しく振られる。

 とりあえず元気そうだ。

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