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リネもゲンリュウさんも嬉しそう

 休憩の後は特に何かを見つけることも遭遇することもなく日の入りとなり、船に戻ってきた。

 夜間は海兵さん達が交代で警戒を続けてくれるという。

 エリンさんとフィシェルさんが仕掛けた魔法も何かがあれば反応してすぐにわかると言っていた。

 今は船室のテーブルで座って足元にいるリネの背を撫でている。


「さあ出来たよ」


 エリンさんの声がすると次々に料理がふわふわとテーブルに運ばれてくる。

 きれいな黄色と緑色のサラダに、鳥の丸焼きと大きな魚の姿焼き、焼きたてのパンに炊きたてのお米、切られた果物もお皿に盛られている。


「ほう…米まであるのか」

「ナズナが好きだからな。そうかゲンリュウもトコヨだから米か」

「ああ、久しぶりに見たぞ」

「たくさんあるから遠慮せずにどうぞ」

「かたじけない」

「ほらナズナ」


 フィシェルさんが空のお皿にいろいろな料理をよそって私の前に置いてくれる。


「ありがとうございます」

「酒はまあ…一杯なら許してやるよ」

「飲んでいいのかしら?」

「期待してた人もいるかなって」

「まあ普通は海の上での飲み物は日持ちして腐りにくい酒が多いからね」

「ウチは帽子の中に飲み水の在庫がたくさんあるし、エリンもウチもそもそも出せるし」

「それで船の荷がほとんどないのか」

「議長がくれたやつだけだからな」

「とりあえず食べ始めましょ?リネがお待ちかねだわ」


 お姉さまに言われて足元のリネを見ると、エリンさんが用意してくれたご飯をじっと見つめて待っている。

 細かく切られたお肉と色とりどりの野菜が混ぜられているんだろうか。

 尻尾は左右にぶんぶんと振られているからきっと早く食べたいに違いない。


「ごめんごめん。ささ!みんな食べよ食べよ!リネもどうぞ。久しぶりに作ったから前と違うかもしれないけど」

「じゃあリネも一緒に、いただきます」


 私がそう言うとわふっといつもより短めに吠えてお皿に顔を突っ込んでがつがつ食べ始めたので、私もフィシェルさんがよそってくれたお皿に手をつける。

 先ほどの鳥の丸焼きのもも肉をよそってくれていたようで、パリッとして肉汁溢れて美味しい。


「では俺も、いただきます」

「酒飲む奴は出すぜ」

「私はやめとくわ。朝に弱いから念のため」

「恥ずかしながらいただいてもいいか?」

「俺ももらってもいいですか?」

「じゃあ私は飲もうかな」

「何飲む?ウチとナズナとミーティアはジュースな」


 フィシェルさんがそう言うと三角帽子から瓶を一本取り出して、魔法でふわりと浮かせて空のコップに注いでくれる。

 黄金色でなんだかシュワシュワしている。


「すまん。わがままを一ついいだろうか」

「なんだよ急にあらたまって」

「どうしたんですか?ゲンリュウさん」

「米を持ってるならトコヨの酒もあったりするだろうか…」

「一本もらったやつがあったような…」


 フィシェルさんが三角帽子に右腕を肩まで突っ込んで黒い瓶を引っ張り出す。

 サラダも美味しい。甘酸っぱいのがかかっている。

 魚もふわふわで少し強めの塩気が米に合う。


「ほらよ。やるよ」

「いやしかし…」

「ウチお菓子の方がいいから気にすんな。これはお菓子に使わねーらしいから」

「確かにトコヨでも聞いたことがない…そうだ。菓子が好きなら妻がよく作ってくれた菓子の作り方を酒をいただく代わりに教えよう」

「いいなそれ。取引成立だ」


 フィシェルさんがふわりと瓶を浮かせると手も触れずに栓が抜けてそのままゲンリュウさんのコップ注がれていく。

 私はジュースを飲んでみると、甘酸っぱくてピリピリと口の中や喉を通っていく。

 炭酸という言葉が頭に浮かぶ。

 ジューシーな鳥肉の後にちょうどいい。


「うまい!…何年ぶりだろうか…」

「奥さんとは何年も会ってないんですか?」

「ああ…こちらにきて二年になるだろうか…刀も売れずにのこのこ帰って妻になんと言われるやら…」

「さっさと帰ってやれよ」

「一応ちゃんといろいろな剣を調べて鍛冶の勉強もしていたんだぞ?しかしかつてのような刀を作る技術には辿りつけなんだ」

「うーん製鉄技術はなかなかね」

「そんなに昔のは特殊だったのかしら?」

「そのようだな…今の鉄じゃナズナの刀のようにはならん。反りが作れてもほとんどがそのままひび割れ、折れてしまう」

「それは知らなかったよ。そうだ鍛冶職人ならミーティアを見て逆に何か気付くことはないですか?作ってくれた人を探しているんです」

「後でじっくり見せてもらってもいいか?」

「もちろんよ!」


 魚と米を食べてお皿が空になると、エリンさんがお皿を取っていろいろよそってくれる。

 リネもお皿が空になったみたいで私やエリンさんをきょろきょろ見ていて、とりあえず私がリネの口を拭いてあげていると、エリンさんがリネにもおかわりをくれ、リネが喜んで食べ始めた。


「エリンさん、リネが嬉しそうに食べてるこれは何が入ってるんですか?」

「見たままだよ。お肉と野菜を食べやすく細かくして混ぜてるんだ。決まったレシピとかはあまりなくてね。行く先々で手に入るものでみんなで用意してあげてたんだ」

「すごく嬉しそうに食べてるから懐かしいのかもしれないですね」

「うん。喜んでくれてるみたいでよかったよ。ナズナもいっぱい食べてね」

「はい」


 サラダを食べて、魚を食べて、お米を食べて、鳥肉を食べて、お米を食べる。

 たくさん食べて明日も一日頑張らないと。

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