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今度は空から

 借りている一隻の船に三隻の軍艦を合わせて合計四隻が沖に浮かんでいる。

 リネの上に乗って空を飛ぶ私に、時折海兵さんが手を振ってくれる。

 私達が乗ってきた帆船よりも一回りは大きいだろうか。

 こんなに立派な船でも魔物や魔法生物に襲われればひとたまりもないと出港前に議長さんが言っていた。

 フィシェルさんがくれた望遠鏡を覗き込むと遠くの波の泡まではっきりと見え、手を振る海兵さんの顔も大きく見える。


「リネ何か気になる音とかする?」


 リネがゆっくり首を横に振る。

 空は雲一つもなく水色が広がっていて、深い沖の海は青く揺らめいている。

 とりあえず何かないかとまた望遠鏡で水平線を覗いていると、何か丸いものが泳いでいる。


「リネあっち!斜め右の方に何か泳いでる!」


 リネがすぐさま進路を変えて私が指示した方へ飛んでいく。

 するとリネも生き物の気配を察知したのか、徐々に高度を下げながら、まっすぐと飛ぶ。

 徐々に赤茶色の丸いものが波を掻き分けて進んでいくのが肉眼でも見えてきて、私はエリンさんに持たされていた炸裂薬を思い切り振ってから上に向かって思い切り投げるとパーンと渇いた甲高い音がして緑色の煙が空に漂う。

 これを目印にフィシェルさんとエリンさんも飛んできてくれるはずだ。

 ざばっと水の音がして眼下に視線を戻すと、音に気がついたのか泳いでいたものが頭を海中から出してくる。

 黒くて丸い大きな瞳に、くちばしのような丸い口。

 亀だ。でもすごい首が長いような。

 まるで蛇のように長い。海の中に甲羅なんてなくて実は蛇だったりするんだろうか。


「こいつは亀だな」

「亀ってこんなに首が長いんですか?」

「見るのは初めてか?」

「そうみたいです…特に何かが浮かんできたりもしないので…」

「長い首で息継ぎしてまた海に潜るらしいぜ。海藻を食べてるらしいからそこまで危険はねぇ」

「そうなんですね…」


 なんだかじっと見つめられてる気がしてくる。


「何か見つけた?大きな亀だね。安全な証拠になるよ。なんかナズナとリネを見てない?」

「炸裂薬で怒らせてしまったかもしれないですかね」

「どうだろうね。結構離れているけど」

「わかんね。でも確かに見てんな。いっそ近付いてやれば?」

「そうだね。リネと一緒なら平気だろうし、怖くなければ撫でてあげたら?」

「怖くは…ないですね。リネ、ゆっくり近付いてあげてくれる?」


 リネがゆっくり高度を下げながら近付いても逃げる様子はなく、亀の顔と同じ高さまで簡単に辿り着く。


「大きくて私を見てるのかリネを見てるのかわからないね…えっと、こんにちはぁ…」


 反応は特にない。

 試しにゆっくり亀に手を伸ばしてみると、ゆっくり亀も口先を近付けてくる。

 噛まれたらどうしようかと思いつつ、伸ばし続けると、冷たくて硬いくちばしに手が触れる。


「いいこ、いいこ…」


 そのまま口先を撫でてあげると首を更に伸ばして上からじっと見つめてきたかと思ったらゆっくりと口が開く。

 リネが逃げたりしないし敵意はないみたいだけど少し不安を感じていると、開いた口からどろりと何か降ってくる。


「リネ!避けて!」


 リネが飛んだまま器用に後ろに下がると目の前をどろりとしたものが糸を引くように落ちていく。


「ずいぶんと好かれたみてぇだな」

「求愛されてるから逃げようか」

「きゅーあい?」


 意味のわからなかった私とは違いリネは言葉の意味を理解したようで、唸り声をあげる。

 亀もリネを怒らせたことに気づいたのか、海の中に引っ込んでいく。


「あのきゅーあいって?」

「まあ…撫でられて調子に乗った亀さんがリネに怒られたってだけだよ」

「そーいうこった。次も何か見つけたら遠慮なく呼べよ」

「うん。お互いに頑張ろう」

「わかりました」


 なんだかはぐらかされたまま、フィシェルさんとエリンさんが持ち場に戻っていく。


「リネはきゅーあいって知ってたの?」


 リネがくーんと困ったように可愛い声を出す。


「ごめんね。もう聞かないよ」


 リネの背中を撫でながら言ってあげると、ちらっと背に乗る私をリネが見つめてくる。


「危ないのがいないか探そうね」


 リネがわふっと返事をして空高く飛んでいく。

 私はまた望遠鏡を覗いて海を観察する。


「何もいないね。亀を見つけたもの運が良かっただけかもしれないね」


 のんびりとリネとおしゃべりしながら、海の上を飛んでいるとリネの耳がぴくぴくと動く。

 何か聞こえたんだろうか。

 すると、すぐにリネが上を見上げて吠え出す。

 望遠鏡で太陽を見ちゃいけないと言われていたし、海の異変の調査だから下ばかり意識していて上は無警戒だった。

 空を見上げると黒い影と光が見え、さっきまでは聞こえて来なかった風切り音が聞こえてくる。

 揺らめく光は尾を引いて後方に向かって飛んでいく。

 後方には四隻の船がいるはずだ。


「リネ!船の近くに戻って!」


 急旋回するリネにしがみつきながら、私は腰から一つだけ渡されていた緊急用の炸裂薬を取って、上下に振ってから船と反対方向に身体強化も使っておもいっきり投げて、急いでリネの背から頭まで這っていき、リネの耳を両手で押さえる。

 耳が痛くなりそうなキーンという高音が響いて赤い閃光が昼の空に輝く。

 フィシェルさんとエリンさんもこれに気づいて船の方に戻ってくれるはずだ。

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