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お土産喜んでもらえた

「お帰りなさいませ」

「えっあっただいま、です」


 宮殿に戻って部屋の鍵を受け取りにカウンターに向かうと、突然おかえりと言われて少しびっくりしてしまった。


「こちらを、どうぞごゆっくりとお過ごしください」

「ありがとうございます。あの…フィシェルさんが部屋に戻っているかどうかってわかったりしますか?」

「少々お待ちを」


 そう言って何やら水晶玉のようなものに触れる。


「お部屋にはいらっしゃいようですよ」

「わかりました。ありがとうございます」

「はい。伝言などは大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「ではごゆっくり」

「ありがとうございます」


 フィシェルさんはまだってことは他のみんなもきっとまだだろう。

 鍵が預けられたままだったということは同室のお姉さまも戻っていないということだ。

 部屋に入るとやっぱりお姉さまはいないみたいだ。

 一応覗いたバスルームも空っぽだった。

 机に絵と串焼きを置いて、ケープを脱いでハンガーに掛けておく。


「よしリネ、変身を解いてあげるね」


 手袋に脱いでリネに触れようとした時に扉を叩く音がして、がちゃっと扉が開く音がする。


「ナズナ今戻ったわ!」

「お姉さまおかえりなさい」

「ええ!」

「んでウチになんか用事か?係の奴からいるか聞かれたってきいたぜ」


 部屋に戻ってきたお姉さまの後ろからフィシェルさんが顔を覗かせる。


「フィシェルさんもおかえりなさい。用事があったわけじゃないんですけど、多めに買って帰ってきたので軽食としてみなさんにも配ろうかと思いまして」


 私は机の上の包みを開いて串焼きを二人にも見せる。


「美味しそうね!」

「あんがとな。エリンとコーネル呼んでくるぜ」


 フィシェルさんが部屋を出ていき、お姉さまが棚から水の瓶とコップを人数分用意してくれる。


「何本買ってきたの?」

「十本です」


 しかし、よくみると十本よりも多い。

 数えてみると十二本入っている。


「何故か二本多く入ってます」

「子どもだからおまけしてくれたのかもしれないわ」

「そうかもしれません。あっリネ待たせてごめんね」


 変身を解いてあげようとしていたことを思い出して素手で肩のリネを優しく撫でると、すぐに元通りになっていき押し潰されそうになる。


「うわっ…ふふふ、くすぐったいリネ」


 結局倒れた私に乗ったまま顔を舐めてくるリネを撫でてあげていると、リネの奥にお姉さまの顔が見える。


「フィシェルが戻ってきたみたいだわ。リネも串からお肉外してあげるからいい子にしていてね」


 リネがわふっとお姉さまに返事をして、上から退けてくれて立ち上がる。


「ありがとうリネ」

「ナズナがお土産を買ってきてくれたんだって?」

「ちょっとしたものですが…」

「二人で大丈夫だったか?」

「はい今回は何事もなかったです」

「さて、買っといたパンも出して飯にしよーぜ」

「みなさんはお昼を食べていなかったんですか?」

「ああ、ウチらは今からだからおかずが増えて助かったぜ」

「ナズナは何か食べてきた?」

「ラタっていう食べ物をリネといただきました」

「露店の定番料理だね」

「そうだったんですね」

「はい水」

「ありがとうございます」

「はいリネのお肉」


 お姉さまがどこからか出したお皿に串から外したお肉を乗せてリネの前に置く。

 食べていいよと頭を撫でて言ってあげると、がつがつとお肉を食べ始める。


「なんだか立派な串焼きだね」

「ナズナの拳くらいあるんじゃないかしら?」

「あまり気にしてませんでしたけどそうですね」


 しっかりとした肉質だけど、歯切れがよく、噛めば噛むほど肉汁が溢れて美味しい。

 塩気もちょうどよく感じる。


「うん。うめぇな」

「おまけのおかげで一人二本ずつですね。リネには私の分もう一本あげるね」


 リネが嬉しそうにわふっと吠える。


「ナズナとリネ。食べながらでいいから聞いてくれ。明日からはガームスの船と一緒に二日間海に出る。海の状態がどうなったかの確認だ。特にリネにはたくさん飛んでもらうことになると思うぜ。ウチとエリンと一緒にな」

「わかりました。リネ頑張ってね」


 そう言いながら空になったリネのお皿に私の串からお肉を外して入れてあげると、嬉しそうにまたお肉を頬張る。

 話はとりあえずそれだけだったようで、みんな串焼きを喜んで食べてくれ、パンもぺろっと食べていた。

 もうおやつの時間くらいなはずだし、お昼を食べる暇がなくてお腹が空いていたのかもしれない。


「うまかったぞ。あんがとな」

「うん。ごちそうさま」

「満足したよ」

「ありがとうナズナ!」

「いえ…喜んでいただけてよかったです」


 なんだかここまで感謝されるとは思っていなくて気まずい。

 自分のお金じゃなくて、フィシェルさんかガンドルヴァルガさんのお金だし。

 ガンドルヴァルガさんで絵のことを思い出す。


「あのそういえばこれを見ていただきたくて」


 私は机の上の丸めてある絵の紐をほどいて広げる。


「アルブルという貴重な花があるところらしいのですが、思い当たる場所を知りませんか?」

「ウチは知らねーな」

「アルブルは確か黄色く輝く月みたいな丸い花だよ…でも険しくて高い山に生えてるってことしか」

「こいつの子どもん時に一緒に旅してたならこいつの故郷知ってんじゃねーの?」

「悪徳商人をやっつけた時にそいつの倉庫にあった卵でね。どこから流れてきたのかはわからなかったんだ。でもこの絵とアルブルの花のことをガンドルヴァルガに教えればかなり場所は絞り込めると思う」

「やったねリネ」


 リネの頭を撫でるとぐりぐりと押し返してくる。


「んでこんな絵をどうやって?」

「ロスマンナという魔法使いの方が占いをしていて、リネを見て書いてくれたんです。料金は銀貨一枚…」

「ロスマンナ?」


 料金は普通だったんだろうか。

 誰もつっこんでこない。


「はい。ガンドルヴァルガさんとも顔見知りみたいで会うことがあったらよろしく伝えてくれって、言っていましたよ」

「うーんどこかで聞いたことあるような…」

「ウチは知らね」

「そうですか…あの、それでご飯以外にお金を使ってごめんなさい…」

「いや、別にそれは全然構わねーけど。ぼったくられてもねーみてーだし」

「買い物にまだ慣れてないのでそれを聞いてちょっと安心しました」

「占いなんて詐欺も多いし、本物でも大金を迫られることも多いから運がよかったよ」

「そうですね…無用心でした。優しい人でよかったです…」


 当たっていたようだったから本物だと思い声をかけたけど、確かに大金を迫られる可能性は大いにあった。

 無用心だったことを反省しないと。

 そして私が落ち込んだせいでコーネルさんがお姉さまとエリンさんに咎められだしてしまい、焦る私を見てフィシェルさんが笑い出したのだった。

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