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リネとぶらぶら

 リネと二人でラタを食べ終え、次の食べ物を探しつつ、露店を巡る。

 離れる前に一応店主にお礼を伝えると、包み紙を回収してくれて、気をつけて回るように言われた。

 食べ物の露店が多く、雑貨などはほとんどない。

 船が来ないからだろうか。

 途中、周りに人がいなくてぽっかりと穴の空いたように見える露店を見つける。

 フードを深く被っていて顔が見えない黒い外套の小さな人が布を広げて座っているけど、布の上には何も商品が無い。

 売り切れたのなら片付けるだろうし、怪しさが際立つ。だから誰も近づかないのだろう。

 するとその怪しい人のところに蛙のような頭の緑色の魔族の人が近づいていく。


「なああんた。何も売る気が無いならさっさと退けてくれねーか?怖がられてるし周りの露店の迷惑なんだよ」

「それは失礼」


 か細い声だ。女の人なんだろうか。

 人だかりも出来てきて、足を止めてしまった私も進めなくなる。


「わかってくれたなら片付けてくれ」

「それは出来ぬ。路銀が欲しいのでな」

「なんも売ってねぇじゃねーか!」

「未来と過去を売っている」

「はぁ?」


 言い寄っていた蛙男が呆気に取られたのか固まる。


「お前の父は死んでいるな。船が海賊に沈められるとは可哀想に」

「お前…」


 当たっていたのか蛙男の顔が青ざめ始める。


「そして父の後を次いで漁師か。四番通りの酒場の看板娘とどうなるか、未来を見てやろうか?」

「なんでカルトレさんのこと…誰にも…」


 蛙男が震えながら黒い外套の女から離れていく。


「過去と未来を知りたい者はおらぬか?」


 誰も近づかない。もちろん私も。

 魔法で何かしているならそもそも私の過去も未来も見れないだろうけど。

 徐々に人だかりが動き出し、みんな離れていく。

 私も進もうとしたところで占い師なら人探しとか出来るのではないかと思いつき、黒い外套の人に近付く。


「すみません。人探しとかって出来ますか?」

「出来る。が、迷子ならば衛兵を頼りなさい」

「いえ、迷子ではないです。この子の仲間がどこにいるか知りたいんです」


 私はそう言って肩に乗るリネを撫でる。


「よかろう…その姿は本来のものではないな」

「はい。街の中では目立つし石とかを投げられても大変なので」

「………遥か遠く、とても弱い。だが感じるな」


 突然どこからか紙を出して、布の上に置き、覆い被さるようにして何かを書いている。

 視線を感じて辺りを見回すとまた周りに人だかりが出来ている。


「ここだ。ここより遥か西にある山だ。すまんが名前はわからない。そうだな、アルブルという花が見えた。貴重な花が生えている山だ。詳しい者なら土地の名も知っておろう」


 そう言って精巧で綺麗な山合の絵を渡してくれる。

 まるで空から見てきたような感じで集落も描かれている。


「ありがとうございます。あのお代は…」

「…おぬしいくつだ」


 やっぱり私のことは何も見えないのだろうか。


「正確な年齢はわかりませんが、見た目通りの年齢です…」

「よかろう…銀貨一枚で許す」

「ありがとうございます」


 私は詮索してこなかったことに感謝をしつつ銀貨一枚を渡して、改めて絵を広げて眺める。


「ここにリネの仲間がいるんだって。いつか一緒に見に行こうね」


 リネがチチチの鳴いて首元にぐりぐりと頭を押し付けてくる。


「ふふふ、くすぐったい」

「おぬしは魔法が効かぬのか?」


 周りの人達に聞こえないように配慮してくれたのか、小さな声でぼそっと聞こえた。 

 しかし、本当のことは言えない。


「人より多くの魔力を持っていると賢者様が言っていました。それで魔法が弾かれたりすることがあるそうです」

「賢者…ガンドルヴァルガか?」

「はい…お知り合いですか?」

「同郷だ。二度だけ会ったことがあった気がする」

「エルフの方なんですか?」

「ああ、内緒だぞ」

「わかりました」

「もし会うことがあればロスマンナがよろしく言っていたと伝えてくれ」

「必ず伝えておきます。絵、ありがとうございました」

「ああ、そこへ行く気ならちゃんと大人と行くんだぞ」

「はい」


 私から一度絵を取り、綺麗に筒状に丸めて紐で結び、持ち運びしやすくして返してくれる。


「ありがとうございました」


 私がその場を離れると、俺も探して欲しい人がいる、失くしたものは探せるかと口々にしながら人だかりが縮まっていき、私は埋もれないように足早にその場を離れる。


「お肉を探して買ってから宿に戻ろうか」


 リネがチチと返事をくれて、お肉の露店を探し歩く。

 そして香ばしい香りに引き寄せられるように串焼きの露店を見つけ、串を焼く兎のような長い耳の女の人に話しかけてみる。


「あのこちらはいくらですか?」

「ん?小さなお客さんだね。一本銅貨二枚だよ。おつかいかい?」

「いえ、そういうわけでは。十本ください」


 しっかり数えて銀貨を二枚差し出す。


「まいどあり。ちょっと待っててね」


 そういえば露店を開いているのは女の人が多かった。

 男は漁に出て、女は店番的な感じなのだろうか。


「はいどうぞ。落とさないようにね」

「ありがとうございます」


 紙に包んでくれた串焼きを受け取り、露店を後にする。


「リネの口には大きいから部屋に戻ってからにしようね」


 チチチチ鳴くリネと一緒に足早に宮殿へと戻る。

 絡まれることもなく、リネとまったりとした時間が過ごせてよかったけど、ちょっとお金を使いすぎただろうか。

 お姉さまやフィシェルさんに怒られるだろうか。

 買い物に慣れていないから急に不安になってきた。

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