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仕方ないけど蚊帳の外

 目が覚めると、どこかの天井が見える。

 木目もないし、揺れもない。

 柵もないし船室じゃない。豪華な照明があるのは宮殿の部屋だ。

 上体を起こすと、チチチチ鳴きながら一羽の小鳥が紙を咥えて飛んできて、私の太ももに乗る。

 私は紙を受け取って書いてある文字を読んでみる。

 議長に報告をしてくるわ

 ナズナはゆっくり休んでいて

 遅くなるかもしれないから机にお金を置いていたわ

 お昼はリネと二人で何か買って食べてね

 夜はゲンリュウも呼んでまたみんなでご飯を食べましょ?

 お姉さまからの伝言みたいだ。

 ヘンダーのことも海賊のこともあるから報告することがたくさんなのかもしれない。

 リネと二人でということはこの見慣れてきた銀色の姿の可愛い小鳥はリネということだ。

 フィシェルさんが魔法をかけていったんだろうか。

 そっと撫でようと手を伸ばして、素手なことに気付いて咄嗟に腕を引っ込める。

 それを見ていたリネが首を傾げる。


「素手で触ったら変身が解けちゃうかもしれないから」


 チチチと鳴いてリネが太ももから飛び立ち、私の手袋を咥えて戻ってくる。


「ありがとうリネ」


 私の早速手袋を着けてリネの頭や頬を指で撫でてあげる。

 リネは気持ち良さそうに目を細めている。

 そういえば、ブーツも脱がされているし、青いケープも着ていない。

 いつもの袖無しシャツとかぼちゃパンツだけだ。

 お姉さまが脱がせてくれたんだろうか。

 船では念のためにわざと着けたまま寝ていた。

 今回はなんだかいろいろよくわからないまま終わってしまった気がする。

 誰かを傷つけたい訳じゃないけど、せっかくゲンリュウさんに稽古をつけてもらったのにと思ってしまい、少しモヤモヤする。

 こういうのが不完全燃焼というのだろうか。

 くぅーとお腹が鳴る。


「リネ、お昼ご飯探しに行こっか」


 太ももから頭の上に移ったリネを落とさないようにベッドから立ち上がり、机に置いてあったブーツを履いて青いケープを羽織り、お金の入った小袋を腰に結ぶ。

 空の水筒は置いていって、短刀は持っておこう。

 最後に机にお姉さまが置いていってくれたであろう鍵を持って部屋を出て扉にしっかり鍵をかける。

 今、部屋を出る時、鍵が閉まっていたということはエリンさんかフィシェルさんが魔法で閉めておいてくれたんだろうかと考えながら一階まで降りて、カウンターの人に鍵を預ける。


「お預かりします。いってらっしゃいませお嬢様」

「ありがとうございます…いってきます…」


 海賊にお姫様と呼ばれても何とも思わなかったけど、これは何だか気恥ずかしくて、足早に離れて宮殿を出る。


「…リネは何か食べたいものあったりする?」

「やっぱりお肉かな?あっそういえば…リネ肩に移ってくれる?」


 チチチと鳴いて返事をくれて、ぱたぱたと肩に移るのを確認してからフードを被って髪をケープの中に入れて隠す。

 大通りに出ると今日はなんだか露店が多い気がする。


「お嬢ちゃん一人かい?今日は人が多いから迷子になると危ないよ」


 近くで何やら丸いものを焼いている青い肌の女性が声をかけてくれる。


「今日は露店が多い気がするのですが何かあるんですか?」

「昨日やっと陸路でいろいろ届いてね。それで店を出せるようになったのさ」

「そうだったんですね」

「大人と一緒じゃないのかい?」

「はい。でもこの子が守ってくれますから大丈夫ですよ」

「可愛い小鳥がねぇ…」


 見慣れぬ鳥だからか、身を乗り出してまじまじと見つめている。


「これは何を焼いているんですか?」

「ラタっていうんだよ。焼いたこいつにこうして…」


 鉄板の上の丸い生地に、野菜や細かい肉を何か味付けして炒めて乗せて、別のたれをかけて折り畳み、ぎゅっと軽く潰しながら焼くと綺麗な焼き色が生地についた。

 焼きたてのそれを紙で手際よく包むと私の方に差し出す。


「ほらお食べ」

「あの…いくらですか?」

「じゃあ…銅貨三枚でいいよ」


 私は言われた通りに小袋から銅貨を三枚出して差し出す。


「毎度あり。ほらおまけもつけてあげるよ」


 そういうと味付けしていない細かい肉を少し紙に包んで持たせてくれる。


「その子にも食べさせてあげな」

「ありがとうございます」

「いいんだよ。木箱に座っていいから横で食べていきな」

「ありがとうございます」


 食材が入っているのだろうかたくさん木箱が置いてある。

 お言葉に甘えて木箱の一つに座って、お肉の包みを開いて隣の木箱の上に乗せる。


「どうぞリネ。私もいただきます」


 私もラタの包みを開く。

 湯気が見えるけど手袋をしているから手は熱くない。

 ふーふーと少し冷ましてかぶりつく。

 少し濃いめの甘辛い味を酸味のあるたれともちもちカリカリの生地がまとめていて、とても美味しい。


「美味しいねリネ」


 リネがチチチと返事をくれる。

 これはきっと肯定だろう。

 なんだか視線を感じて通りの方を見ると、赤い髪の男女二人組がこちらを見ている。

 コーネルさんやフィシェルさんと同じくらいだろうか。

 何やら少し会話をして、ラタの露店に立ち寄り、同じものを買って行ったようだ。

 その時、サクラという単語が頭に浮かぶ。

 美味しいのは間違いないけれど、利用されたんだろうか。

 けど私が路地に入って食べていたら盗まれたり、襲われたりするかもしれないのも確かだ。

 店主さんの善意だと思っておこう。

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