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ひとまずは休むしかない

 眼前には見渡す限りの白い花、ここに来るのは久しぶりな気がする。

 身体が疲れているからか今回は身体が動かないみたいだ。足を抱えて座ったまま固定されている。


「久しぶり…誰かいる?」

「いるよ」

「正直…ゲンリュウさんに稽古をしてもらった日の夜にここに来るかなって思ってました」

「出来るだけそういうものを見せないように頑張っているからね」

「まあでも気休め程度だから」

「そうだぜ」

「うん」

「そー思う。それとも…見たかった?」

「いや…ありがとう。ただキコクの強い人なら刀を使う参考になるのかなって少し思っただけ…」

「武士の戦い方は参考にして欲しくないかなぁ。それにあの人らは参考にならないよ」

「俺はゴレオがかっこいいと思うぜ」

「それって絵本のやつだっけ?」

「村を襲った竜をやっつけて友達になるお話」

「みんなでよくみた」


 城にならあるんだろうか。


「どうだろうね」


 突然身体がふわりと浮かび上がる。


「目覚めるみたいだよ」

「またな」

「またね」

「また」

「またー」


 目を開くと景色が変わっているような。

 天井から吊るされている豪華な照明は船じゃなくて宮殿の部屋だ。


「あら?起こしちゃったかしら?」


 お姉さまがベッドに乗って私の頭をそっと撫でる。


「いえ…うるさかったとかでは。どれくらい眠ってましたか?」

「もう夜だから…うーん、四時間とかかしら」

「フィシェルさんとエリンさんは大丈夫ですか?」

「フィシェルはまだ疲れてるみたいだけど、エリンは元気だわ。防御に集中してたからって言ってたわ」

「そうですか」

「食べ物は食べれそう?」

「はい」


 お姉さまがベッドから立ち上がり、トレーを持ってすぐに戻ってくる。


「パンとミルク、ゆっくり食べるといいわ」

「ありがとうございます」


 パンはこの間のお店のパンだ。美味しい。

 ミルクはこれは慣れ親しんだ味だ。


「このミルク、アリシアさんのですか?」

「え?そうなの?フィシェルがね、ナズナが起きたら飲ましてやれって渡してくれたのよ」

「魔力や体力の回復にいいそうなので出してくれたのかもしれません」

「そうだったのね。だからお城でよく飲んでいたの?」

「そうなんです。基本的には怪我人や病人の人に飲ませてあげることが多いとアリシアさんが言っていたはずです」

「それで朝ごはんの時とか私達にはなかったのね。そうだわ!食べながら聞いてナズナ。明日も朝から船を出すわ。それで明日は港に戻らずに沖で夜を過ごすって言っていたわ。あの黒いやつがまた出た時は今度は凍らせたまま持ち帰るって言っていたわ。倒すにしても海では難しそうだからってエリンが言っていたわ」

「そうですか。あの…ヘンダーは?」


 私がすべて食べ終えたのを確認すると、お姉さまがトレーごと預かって机に戻してくれる。


「今のところ何も。ただ賢者様のように一瞬で移動する魔法が使えるならやはり相当な手練れだって…」

「お姉さま…森で見た人とヘンダーは別人でした」

「それはほんと?」

「はい…だからフィシェルさんとエリンさんに話をしないと…敵は一人じゃないかもしれません」

「わかったわ。でもナズナは休んでいて?私が伝えてくるから」

「フードで顔はよく見えませんでしたが、なんというか…森で見た人の高圧的な感じと違って、なんだか飄々としているように感じました。声も森で聞いた中性的な感じではなくて、低くて男の人のものに感じました」

「わかったわ。ありがとうナズナ。さあ横になって…」


 お姉さまが私を寝かせて布団を被せる。


「じゃあ少し部屋を開けるけどちゃんと休むのよ?」

「わかりました。いってらっしゃい」

「ええ、いってくるわ」


 お姉さまが静かに部屋を出ていく。

 リネももう寝ているんだろうか。

 正直完全に冴えてしまって眠気が全くない。かといって、リネを起こすのは可哀想だ。

 身体を起こして静かにベッドから降りる。

 まだ全身重たい感じがするけど痛みはない。

 窓から射す月明かりに引かれるようにバルコニーの扉を開ける。

 夜風がとても気持ちいい。

 そういえばまだバルコニーに出たことがなかった。

 着いた日も稽古の後も疲れていたからか部屋に戻ったらお風呂に入ってぐっすりで、気にしたこともなかった。

 宮殿なだけあって、景色はいい気がする。

 中央広場の噴水には明かりがついているようで綺麗だ。

 思ったりよりも静かに感じるのはやはり船が出ていないからなんだろうか。

 それでも人は十分多かったけれど。

 楽しみにしていた海もなんだか怖かった。

 陸地が見えなくなったら、なんだか二度と戻れないようで一人で旅なんて出来そうにない。


「ナズナ、起きてたの?」


 声の方に振り向くと、戻ってきたお姉さまがバルコニーの入口に立っている。


「ごめんなさい…眠たくなくて…」

「別に怒ってはいないけど、明日も早いわ」

「わかりました。ベッドに戻ります」

「ええ、そうしましょ?」


 お姉さまに連れられてベッドに横になるとお姉さまも枕を持って私の隣に横になって布団を掛ける。


「何か物語のお話でもしようかしら?」

「じゃあ…お願いします」

「ふふ、じゃあ竜と男の話をしましょうか。昔々、モーレンという村にゴレオという男がいました」


 ゴレオという名前をどこかで聞いた気がする。

 そうだ。男の子が言っていた名前だ。

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