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黒いやつはどうなったんだろう

 目の前に浮かぶ煙の塊。

 外から何度呼び掛けてもエリンさんもフィシェルさんも返事はない。

 刀で斬ってみたいところだけど二人の位置もわからないままでは無闇に振り回せない。

 やっぱり入るしかない。

 この煙が魔法由来なら私の魔力でどうにか出来るかもしれない。

 手を伸ばして手袋に気がつき、脱いでブーツの隙間に入れておく。

 深呼吸して、一気に右手を煙に突っ込む。

 何もない。何も感じない。

 手を引っ込めると穴が空いたように見える。

 とりあえず大丈夫だろうか?

 手袋をつけ直して念のため煙を吸わないように反対を向いて大きく息を吸って止め、煙の中に入る。

 光も遮っているのかとても暗い。

 暗い霧の中にいるみたいだ。

 両手を伸ばして周囲を探りながらゆっくりと歩く。

 盾を踏み外したら終わりだ。


「誰か…いんのか?」


 フィシェルさんの声だ。

 話しても大丈夫なんだろうか。


「ナズナです!フィシェルさん!どこですか?」

「ナズナがどっち向いてるかはわかんね…」


 集中して、声のする方へとゆっくりと進む。

 そして二十歩程歩いたところで、ようやく影が見える。


「フィシェルさん!何があったんですか!」

「ナズナか?その髪誰かにやられたのか?」


 更に近づくと項垂れる様に中に浮かぶフィシェルさんがいた。


「私のことより、何があったんですか?エリンさんは?」

「いきなり煙に包まれて…氷を壊した時の粉塵で敵は見てねぇ…この煙、魔力を吸ってんのか…力が出ねぇ…しかも全身何かに掴まれてるみてぇ…犯人は変態野郎だぜきっと…」

「とりあえず私はなんともないのですぐに助けます!」


 フィシェルさんのお腹に抱きつき、足場にしている盾を思い切り蹴って跳ぶ。

 まるで水の中にいるみたいな重く纏わりつくような感覚があって、途中もう一度盾を蹴って跳び煙の中から飛び出す。


「フィシェルさん箒は?」

「多分落ちた…」

「わかりました。すぐに船まで連れていきますから」


 四つの鉄塊を交互に出し続け、フィシェルさんを抱えたまま走り、船まで戻る。


「みなさん!黒い奴らは!」

「すまない…海に逃げられた」

「フィシェル!?」

「フィシェルさんをお願いします。私はすぐにエリンさんを助けに戻ります!」

「ナズナちゃんは大丈夫なのか?」

「まだ魔力は大丈夫です。お願いしますね」


 フィシェルさんを甲板の乾いた所に下ろし、急いで煙の塊に向かって走って戻り、フィシェルさんを連れ出した時の穴から、そのまま中に突っ込む。

 きっと氷を割るとき近くにいたはずだ。


「エリンさん!どこですかー!」


 返事はない。

 私は鉄塊の一つに乗り、残り三つを周囲で旋回させる。

 これで煙を消しながら進めるはず。

 落ちない様にゆっくりと足場の鉄塊を前に進める。

 頭が割れそう。じーんと痛みだしてきた。

 あまり進むのもよくないだろうか。

 少しずつゆっくりと旋回させる範囲を広げていく。

 これで全方位探れないだろうか。

 周囲を見渡しながら旋回させ続けると、黒い影を見つけ、旋回させるのをやめて影に向かって走る。


「エリンさん!エリン!」


 返事はない。

 目蓋は閉じられ、意識を失っているみたいだ。

 エリンさんのお腹にしっかり抱きついて、急いで船へと戻る。


「ナズナ!」

「みなさん…状況は?」


 私はエリンさんをフィシェルさんの隣に寝かしてあげる。


「俺達はなんとか船にいるやつを一纏めにしてミーティアの魔法を食らわせたんだけど、倒しきることはできなかったみたいで海に飛び込んで行ってしまったんだ」

「斬ろうか迷ったのだがバラバラになったら不味いと感じて見逃すことにした」

「私は二人を助けに行ったらヘンダーという男に後ろから襲われました。私に魔法が当たらなかったのを見るとすぐに逃げてしまいましたけど…」

「変態野郎は噂のヘンダーだったのか…」

「フィシェルさんは平気なんですか?」

「予備のお陰でギリギリな…けど、むしろエリンのほうが元気なんじゃね?」


 確かにフィシェルさんよりもずっと顔色が良く見える。


「でも眠ったまま反応が…」

「そろそろ起きると思うぜ…」


 フィシェルさんがそう言うとまるで機会をうかがっていたようにエリンさんの目がぱっと開く。


「エリンさん?」

「…敵は?」

「消えたとよ」

「そう…」


 エリンさんがむくっと起き上がり、辺りを見渡す。


「逃げられちゃったか…ごめんね…役にたたなくて…」

「ウチのこと煽ってる?」

「いやいやいや…」

「元気なら船を港に返してくれ…」

「わかった。ナズナももう大丈夫だから解いていいよ?」


 そういえば身体強化を全身にかけたままだった。だから髪がどうとか言われていたのかもしれない。

 ゆっくりと魔力を止めると、一気に疲れが押し寄せてくる。

 全身の筋肉が傷み、頭痛もしてきてその場にへたり込んでしまう。


「ナズナ?大丈夫?」


 エリンさんがすぐに身体を支えてくれて、なんとか倒れずに済んだ。


「はぁ、はぁ、大丈夫、です…」

「コーネルくんとミーティアとリネは周囲の警戒、ゲンリュウさんはフィシェルを運んでください。私はナズナを。二人を船室に運んだら船を動かすよ」

「わかったわ!」

「任せてくれ」

「フィシェル、失礼するぞ」


 ゲンリュウさんがフィシェルさんを横に抱き、エリンさんが私を横に抱く。

 そして船室に運ばれて、柵の付いたベッドに寝かされる。


「ゆっくり休んでいて」

「でも…」

「お言葉に甘えようぜ…敵が来たらまた頑張ってもらっから」

「わかりました」


 エリンさんが私の頭を撫でて、ゲンリュウさんと一緒に船室を出ていく。

 するとすぐにすーすーとフィシェルさんが寝息を立て始める。

 本当はずっと辛かったのかもしれない。

 何かあった時にすぐに動ける様に私も目を閉じ、休ませてもらうことにした。

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