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状況がわからない

 海の中に突っ込んでいったお姉さまが海面から飛び出す。

 不思議と濡れていない。


「真っ黒い泥みたいな…スライムみたいなのが船を押してる」

「なんだそれ?」

「初めてみたよ…コーネルくん!ゲンリュウさん!しっかり掴まってて!」


 エリンさんが叫んで、杖を両手に持って祈るように目を瞑ると、海面が大きく膨らんで、大きな水の球が浮上する。

 海にはぽっかりと大きな穴が空いたと思ったら穴が塞がると同時に大きくうねり、波を打っって船がぐらぐらと揺れ、波がぶつかって水飛沫をあげる。


「捕まえたのか?」

「うん…中に…いる……」

「ナズナ、船を落ち着いた場所にどかすから中から飛び出して来ないか注意してろ。もしもん時は刀で斬れ」

「わかりました」


 私は左手でリネの首の皮をしっかり掴み、右手に刀を出す。

 大きな水の球は船よりも大きい。


「リネ、どこにいるかわかる?」


 私の言葉にリネはすぐに反応して、水の球の周りを旋回して球の真下で止まる。

 影になっていて暗く、黒いものがあるかどうかわかりにくい。

 横になっていた船が元に戻り、甲板に立つコーネルさんとゲンリュウさんの姿を見て、盾を消して私とリネの周りを守るように出し直すと、船が安定したからか、フィシェルさんが箒で隣に飛んでくる。


「下にいんのか?」

「そうみたいです。暗くてわかりにくいですが…海に戻ろうとしているんでしょうか?」

「わかんねーな。スライムは海水が無理だし、やっぱ魔物か?」

「魔物は硬いイメージがあったのですが…」

「うーん…エリン!凍らせてみてくんね?」

「わかった……えいっ!」


 目の前の大きな水の塊が一瞬で凍りつきバキバキギシギシと軋む音が響き渡る。


「重いよ…フィシェル…」

「スライムならこれで死ぬはず…」

「じゃあ…砕いてみる?」

「いいなそれ。リネ、ナズナと船に一度戻ってろ」


 リネがわふっとフィシェルさんに返事をしてすぐに少し離れたところに移動した船の甲板にふわりと降りる。

 甲板ではコーネルさんとゲンリュウさんが大きな氷塊を見上げている。


「ナズナ、リネ、大丈夫?」

「はい。私達は平気ですお姉さま」

「して、これは?」

「今から試しに砕いてみるそうです」

「俺達いらなかったんじゃないかミーティア…」

「そうね…」

「俺もだな…」


 轟音が響いて氷塊が粉々に砕け散り、船にもたくさんの小石大の氷が降り注ぐ。

 コーネルさんが両手剣を振って光の玉を無数に飛ばし、大きな塊を砕いていく。

 私は四つの鉄塊で大きな塊から自分とリネとゲンリュウさんを守る。

 黒いやつの欠片なのか真っ黒な塊が時折混ざっている。


「これで仕舞いか?」


 ゲンリュウさんが警戒は解かずにそう呟く。


「わからないですね…他にもいるのかも知れないし、ミーティアも警戒は解くなよ」

「わかってるわ!」

「二人はどうしたんでしょうか?」

「煙っていて見えんな」


 もう氷は降ってきていないのに、なぜ雲のような煙が残っているんだろう。

 風が強くはないにしてもおかしいような気がする。

 びっという独特な音がして空から甲板の方に視線を戻すと、ゲンリュウさんが刀を抜き放っている。


「こいつまだ生きてるようだ」


 甲板の上で黒い液体がうごめいている。

 黒い粒と黒い粒が繋がり一つとなって、また更に黒い粒と繋がり、黒い水溜まりになると中心から空に引っ張られるように玉の形になって甲板の上を上下に流動しながら跳ねだし、こちらに向かってくる。

 ゲンリュウさんがそれを斬り払うと、びっと音がして、飛沫となって甲板に飛び散り、また粒と粒が繋がり集まっていく。


「これは相性が悪いな…コーネル、魔法で焼いたり出来ないか?」

「出来るけど数が撃てないんだ」

「試すにしても一ヶ所に全部集めて欲しいわ!」

「わかった。ナズナとリネは二人を呼んできてくれ」

「でも、これが生きていたということは海に落ちたやつも生きているってことですよね?もしまた船が傾けられたら…」


 みんなが黙ってしまう。

 どうしたら…。

 その時リネが私の手をぺろぺろと舐める。


「私が一人で二人のところに行ってきます。リネは残ってもしも時はみんなを乗せて飛んでね?」


 リネがわふっと元気に吠えて、黒い塊を睨みながら姿勢を低くする。


「ナズナ!危ないわ!」

「お姉さま!リネのことお願いします!」


 私は四つの鉄塊を出し入れしながらそれ足場に宙を駆けていき、煙の前で立ち止まる。


「フィシェルさん!エリンさん!どこですか!」

「ちっ…来たか。船に残っていたら見逃してやろうと思ったのに」


 後ろから声がして振り向くと、黒紅色が目に入った途端に何か飛んでくる。

 私は咄嗟に刀でそれを横に斬り払う。


「魔法が?ガンゼツか…面倒だな」


 森で聞いた声とは違う。

 森で聞いたのはまだ少し高い中性的な声だった。


「あなたは…ヘンダーさんですか?」

「そうだと言ったら?」

「捕まえていろいろ聞きます」

「じゃあ違うってことで」


 じゃあとか言っているということはヘンダーなのだろう。

 全力で全身に魔力を回して刀に魔力を流す。


「答えてやったのに無視かよ。おじさん傷つくなぁ…なにそれ?」


 盾を蹴り上げて一気に飛込み、峰で居合のように刀を振り抜く。

 しかし刀は空を裂き、ヘンダーは一瞬でどこかに消えてしまったみたいだ。

 煙はまだ消えていない。

 とりあえず二人を探さないと。

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