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動きが見えない

 私の木刀が宙を舞う。

 お姉様が投げた両手剣が砂に刺さって消え、ゲンリュウさんの姿がないと思ったら気づいた時には私の手から木刀が離れていた。

 でも呆けている場合じゃない。

 咄嗟に後ろに跳んで宙に浮く盾を水平にして足場にし更に高く跳び、木刀を掴む。

 そして出し直した盾を蹴って一直線にゲンリュウさんの頭上を目掛けて八相の構えで斬りかかる。

 しかし笑いながら避けられて、音を立てて砂が舞う。


「すごいな!今のは驚いたぞ」

「私も一撃で負けてしまうかと焦りました」

「しかし、思った通り多少の場数は踏んでいるようだな」

「魔物相手がほとんどですが一応は…」

「なるほど…ならばこちらも怪我をせぬように頑張らんとな!」


 かんっと先程とは違う大きく甲高い音を立てて木剣と木刀がぶつかる。

 鍔迫り合いにならないように盾を四つの鉄塊にして四方からゲンリュウさんを狙う。


「おやおや!」


 ぐっと私を押し返して、二つの鉄塊を避けて、二つの鉄塊を刀で受け止める。

 私は脇構えでゲンリュウさんの懐に飛び込み、空いた脇腹に思い切り木刀を振る。

 しかしなぜか木刀が空振り、視界が真っ暗になって両目に激痛が走る。


「そこまで!ゲンリュウの勝ち!」


 お姉さまの声が訓練所に響いてなんとか目を開くと、木剣の切っ先が目の前にあった。


「まいりました…」

「卑怯と言われる用意もしていたんだがな」

「戦いに卑怯も何もありませんから…」

「見た目の割に達観しているな…」

「死線を経験しちゃってるから…ナズナ上を向いて?」


 エリンさんが側に来てそう言うので、とりあえず言う通りに上を向くと、薄目を指で開かれて、水筒から水が降ってくる。


「まばたきして砂を洗い流して」


 言われた通り、まばたきを繰り返す。

 少しして水が止まる。


「どう?砂取れたかな?」

「はい…多分。ありがとうございますエリンさん」

「私も傭兵だから卑怯とは思わないけど、女の子の顔に向かってすることではないと思うわ」

「そう言われると胸が痛いな」

「まあまあ、砂利とか石をぶつけたわけではないから」


 もう目にゴロゴロ感もチクチク感もない。


「もう大丈夫です。もう一戦お願いします」

「相手の全体を捉えるんだ。手、足、頭、魔物によっては尻尾の生えたものや角のあるものもいるだろう。どこから攻撃が飛んでくるかわからないからな」

「はい」

「ではもう一戦といこうか」

「ゲンリュウさん…今度は魔力も使いますね」

「魔力?魔法は既に使っていたのでは?」

「身体には使っていなかったので」

「ほう?」

「トコヨではなんて言うか知らないけど魔力を使って身体能力を強化できるのよ」

「なるほど…」

「じゃあさっきと同じ様にいくわ!剣はすぐに消すから安心してね」

「はい」

「うむ」


 エリンさんが壁際に戻ったのを確認して、木刀と盾を構えて、魔力を流す。

 ゲンリュウさんもまた中段に木剣を構える。


「じゃあいくわ!」


 お姉さまの投げた両手剣が宙を舞い、砂に突き刺さって消える。

 そしてゲンリュウさんもまた消えている。

 目の前が暗くなってゲンリュウさんが目前に迫ったことに気付き、なんとか最初の一撃を防ぐ。

 身体強化をしていても尚、木刀を握る手が痺れる。


「ほう…やるな」

「手がびりびりですけど!」


 密着されて離れられない。

 押しても引いても木剣から木刀が離れず、ゲンリュウさんと距離を空けられない。


「さあ、どうする?」

「お父さん、本当に鍛冶師なんですか!?」

「そうだぞ娘よ。試刀術だからな。こんな風に鍔迫り合って簡単に欠けるような刀は作れんからな」

「結構…激しいんですね!」


 盾を間に割り込ませ、更にぶつける勢いでゲンリュウさんを強引に押し返す。


「便利な魔法だな…力も強い!」


 そう言いながら盾と力比べをするかのように押し合いながら少し下がっただけですぐに立ち止まってしまう。

 助走には少し足りない様に思うけど行くしかない。

 足に魔力を回して、盾で視界が塞がっているうちに一気に砂を蹴り上げ胴に突きを繰り出す。

 捉えたと感じた瞬間にゲンリュウさんのお腹が捩れて木刀の切っ先が着物の衿に入り込んだかと思うと、右手首を掴まれそのまま軽々と投げ飛ばされる。

 四つの鉄塊を私の回りにぐるぐると旋回させ、木刀を砂に突き立ててなんとか着地に成功するけど、ゲンリュウさんを見失う。

 目を凝らして砂の動きや足跡を探すけど見当たらない。

 左肩に何かが優しく触れる。


「チェックメイトというやつだ」

「まいりました…」

「そこまで!ゲンリュウの勝ち!」

「はてさて休憩にしようか」

「はい…」


 全く動きが追えなかった。

 目にも常に魔力を回しておくべきだったかもしれない。


「今のは俺も不味かった。負けてしまうところだったぞ」


 ゲンリュウさんが着物の袖を脱いで上半身裸になるとへその辺りに赤い横線が入っている。


「あらら…ミミズ腫れになってるね」

「ほんとだわ…大丈夫ゲンリュウ?」

「このくらい平気だ。負けを認めるか迷ったぞ」

「いえ…全然ゲンリュウさんの動きについていけなかったので完敗です」

「ゲンリュウさん、そのまま真っ直ぐ立っててね」


 エリンさんがゲンリュウさんのお腹に何かを塗るとすぐに腫れが引いて赤みも引いていく。


「これはすごいな。かたじけない」

「どういたしまして。ついでに少し休憩にしようか」


 エリンさんの一声でみんなその場に腰を下ろし、休憩を入れることにした。

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