変なお土産がたくさん
中央広場の人混みをリネの後に続いて縫うように歩いていくと、見慣れた金髪のドレス姿を見つける。
お姉さまだ。近くエリンさんもいるはず。
お姉さまは飛んできたリネに気づき、指先にリネを止まらせてあげると、きょろきょろと辺りを見回している。
「お姉さま、びしょ濡れですね」
私の声に気がついたお姉さまがこちらに振り返る。
「ナズナ!ナズナは濡れてないわね。今来たところなら一足遅かったわ」
「鐘の鳴るところでしたら見てましたよ。濡れてないのはフィシェルさんのおかげです」
「見ていたの?凄かったわね」
「はい。ところでエリンさんは?」
「私はここだよ。ちょっと端の方で荷物を乾かしてたんだ。フィシェルは?」
「ウチはナズナみてーに足元を抜けていけねーんだよ…」
「ごめんなさい…」
「怒ってねーけど、もう少しゆっくり頼むぜ。リネ、ナズナ」
「気をつけます…」
リネも謝っているのかフィシェルさんの肩に乗って首元に近寄って頭を擦りつける。
「くっぷふふ…くすぐってーよ。それで二人はなんかいい店見つけたか?」
「うーん閉まってる店も多くてあんまりかな」
「船が動いてないから交易品は品薄みたいだわ」
「そうなんですね…」
「合流したのはいいけど閉まってる店が多いならこれからどーする?」
「二人は行きたいところはないのかしら?」
「ウチが興味のあるところは多分閉まってんな。お菓子も果物も交易品だろうから」
「そうだね。物があっても高騰してるだろうし。ナズナはどこか行きたいところある?」
「えーと…」
レースさんが確か二番通りに行ってみるといいと行っていた。
「場所がわからないんですが二番通りがおすすめだと議長さんが言っていました。大陸を渡ってきた方々が開いたお店が多いからと」
「じゃあ行ってみようか。確かあっちだよ」
「いくわよナズナ!」
「はい」
エリンさんとお姉さまの案内で中央広場から二番通りに行ってみると結構人通りがあって、賑わっているように見える。
「結構お店やってそうだね」
「そうですね」
「あそこに武器屋があるわ!」
「武器はお前らがいれば十分だろ」
「褒められたのかしら?」
「どうでしょう」
「あそこはどう?雑貨屋っぽくない?」
「行ってみましょ?」
「はい」
窓の奥には何やら動物の置物が見える。
エリンさんが店の扉を開けて、みんなを中に通してくれ、私もエリンさんにお礼を言って中に入ってみる。
木彫りや陶器やガラスなどの様々な物で作られた置物が置いてある。
お土産屋なのだろうか。
「魔除けか?」
「普通に置物じゃないかしら?」
「色々あるけどちょっと高そうだね」
「いらっしゃい。世界各地の工芸品を集めているんだ」
カウンターの奥からお爺さんが出てきて説明をしてくれる。
「例えばこの角の生えた熊はどこのなのかしら?」
お姉さまが木彫りの角の生えた熊を指差す。
「それはヨウル大陸の東の住むカーマルという種族の魔族が作ったものだよ」
「んじゃこれは?」
フィシェルさんがガラスで出来た裸婦像を指差す。
「それはイー大陸の職人が作ったものだよ」
「これは…」
エリンさんが棚の中央の一番を上を見つめている。
「それは勇者の姿と伝わる木彫りだよ。この店では三番目に古い物だよ」
私からは死角になっていて見えないけど、似ていたんだろうか。
ゆっくりと店内を見回していると、私も気になるものを一つ見つける。
土器で出来た翼の生えた狼のようなもの、リネだろうか。
「あの…こちらは?」
「それは二番目に古い物だよ。出自はわからない」
何かリネの仲間の手がかりがあればと思ったけどそう上手くはいかないみたい。
「んじゃこいつくれ」
フィシェルさんがなんだかうねうねの無数の触手が生えた変な置物をカウンターに置く。
「ほんとに…それ買うのかしら?」
「師匠へのお土産だ。何も買わねーのも悪いだろ?」
「あー…確かにガンドルヴァルガ好きそう…」
「だろ?」
確かに変なものが好きなようだから気に入りそう。
「それはイー大陸の南部に伝わる伝説の花を模したものだと聞いているよ。銀貨二枚だ」
「おう」
店主が丁寧に置物を紙と布で包んで渡してくれ、私達は店を後にする。
「不思議な店だったわ」
「そうだね。雑貨屋じゃなかったけど」
「まあまだまだ店はあんだろ」
「そうですよエリンさん」
―――――――――
「それで、この大荷物に?」
宮殿のコーネルさんの泊まっている部屋は大量の変な物で溢れかえっている。
私の力ではみんなを止めることは出来なかった。
「コーネルにはこれを買ってきたわ!」
お姉さまが自慢気にコーネルさんに選んだお土産を差し出す。
「これは?飲み物?薬?」
「それを飲んだら一日好きなものに変身出来るらしいわ!エリンとフィシェルのお墨付きよ!」
「なんかすごい高そうだけど大丈夫なのか!?」
「それ少し古いんだよ。多分それで安くなってた」
「お腹を壊したりはしないから大丈夫だよコーネルくん。少し効力が短くなってるかもしれないけど」
「そうですか…」
案の定コーネルさんは困惑している。
「それで夕飯は何かいいものありました?」
「あっ」
「あ」
「え?」
「ごめんなさい…完全に忘れてました…」
「まっまあ、それだけ楽しかったってことなら良かったよ!」
「おしっ飲みに行くぞ!師匠の奢りだ!」
フィシェルさんがそう言いながら部屋を飛び出して行き、みんなで追いかけて部屋を後にした。
そして暗くなった街を歩いて近場の酒場に入り、私とリネ以外が酒に呑まれていった。




