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ばれてないか心配

 じゃあ片っ端から城に送りつける?

 私はもしかして本当にやることがない感じだろうか。

 しかもめっちゃレイゼリアさんと王子様に怪しまれている気がする。

 レイゼリアさんにばれちゃってるだろうか。


「…城に送りつけるとは?」

「そのまんまの意味だ。中に入って、見つけた奴らを穴に放り込んでいく」

「次から次へ新しく召喚されてしまう可能性はないのですか?」

「あるぜ。だからさっさと次が出る前に迷宮核を破壊する」

「君ひとりでか?」

「当たり前だろ」


 なんか空気が悪くなってきた気がする。

 私は必死にすまし顔を崩さぬように我慢する。


「フィシェルさん、私共の方でゴブリンとオークの巡回ルートは把握しています。一人で中に入らずとも兵を連れてはいかがですか?」

「いやいらねー」

「せめて今後の遺跡の管理のためにも私とお兄様の同行を許可いただけませんか?」


 露骨に凄く嫌そうな顔をしているフィシェルさんに、小声で言う通りにした方がいいと思いますと伝えてみる。


「…しょーがねーなぁ」



 怖い。

 フィシェルさんが怖い。

 身分がどうとかはわからないけど、相手は王族だからもう少し言葉とか態度とか気をつけなくていいんだろうか。

 いつもと変わらなすぎて怖い。


「お前らの用意が出来たらすぐ入るからな」


 絶対王子様が怒っている。

 顔が怖い。


「…皆様、十五分後にまたここに集合でよろしいですか?」


 レイゼリアさんがそう言ってくれて助かる。


「わかりました…」


 早く一旦解散したくてつい勝手に了承してしまった。


「じゃあ、また後でな」


 フィシェルさんが出ていこうとするので、とりあえずついていく。


「待ってくださいフィシェルさん。よければ私の天幕へ来ませんか?」

「そーか?じゃあ遠慮無く」


 とりあえず王子様の天幕を出て、レイゼリアさんの天幕へと案内される。

 なんともいえない空気から逃げられてよかった。


「レーシャ、今戻ったわ。けど少ししたら遺跡の方へ行ってくる」

「わかりました。今お茶をお持ちしますね」


 私達と入れ替わりにレーシャさんが天幕から出ていく。


「さあこちらへお掛けになってください」


 レイゼリアさんに促され、椅子に座る。

 テーブルには花が飾られていて、王子様の天幕とは雰囲気が違う。


「フィシェルさんと会うのは二度目ですよね?ナズナと師匠を助けていただきありがとうございました」

「おー、気にすんな」

「それでそちらの方は?」


 レイゼリアさんが私を見る。

 鼓動が早くなって息が詰まる。


「城にいるメイド見習いだよ」

「セイです…初めまして…こっちは友達のチチです」


 チチチと鳴いてリネが指に止まる。


「よろしくお願いしますね。セイさん、チチさん」


 ばれてないのか、合わせてくれているだけなのか不安が過る。


「どうぞ。砂糖はこちらをご自由に。ミルクはお使いになりますか?」

「こいつの分を頼む」

「かしこまりました。はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 苦いお茶なんだろうか。フィシェルさんが私の分のミルクを頼んでくれると、レーシャさんが小さなポットを添えて目の前のテーブルにカップを置いてくれる。

 するとフィシェルさんがお茶を一口飲んでから、私のお茶に角砂糖五つとミルクを入れる添えてあったスプーンで混ぜる。

 一連の動作で一切手を触れずに事が起きて呆然としたところでリネのチチチという鳴き声で我に帰る。


「いただきます」


 甘くてまろやかで独特ないい香りがして美味しい。


「師匠とナズナさんはお元気ですか?」

「おー。エリュはもう仕事に復帰してるし、ナズナも元気だぜ」

「それは良かったです。セイさんは魔族の方なのですか?」


 やばい。話を振られてしまった。


「えっと……そう…です」

「それで大きなミトンとキャップで頭と手を隠しているんですか?」

「…はい…目立つので」


 よく考えたら姫と一緒にお茶をしているメイドは目立っているのでは?


「迷宮核はそちらにお渡しした方がいいですか?」


 レイゼリアさんの声が柔らかいものからキリッとしたものに変わる。


「確かに師匠は欲しがるだろうな…」


 確かにガンドルヴァルガさんの実験室はいろんなもので溢れているから魔法道具はとりあえず集めていそう。


「わかりました。お兄様にもその様に伝えておきます」

「あの、ゴブリンさん達とオークさん達は食事も取らずに徘徊し続けているんですか?」


 みんなの無事を確かめたくて質問してみる。


「ええ、地下一階では十二人のゴブリンが六人ずつに分かれてずっとぐるぐるとパーティを組んで徘徊しています。地下一階は倉庫だったようで、どこからか拾ってきたボロボロの装備を持っています。地下二階では六人のオークが三人ずつに分かれて徘徊しています。地下二階はおそらく捕虜などを捕らえる牢だったみたいで、そのどこかに迷宮核があると考えています。ただ未だに盗賊は見かけておらず、オークが怖くて動けないか、すでにオークに殺されている可能性があります」

「やっぱりさっさと送ってじっくり探索するしかねーか」

「私はどこでお待ちしていたらいいでしょうか?」

「セイもこい。一応念のための通訳頼むぜ」

「わかりました…」


 まだまともに武器を出せないし魔力も使えないけど、レイゼリアさんとフィシェルさんがいれば心配はないかもしれない。


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