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部屋で大人しく

 オークのバンバさんとゴブリン達と森で遭遇した次の日、私はガンドルヴァルガさんの言いつけ通りに部屋で大人しくしていた。

 といっても、なかなかじっとはしていられず、師匠が置いていってくれた冊子と木刀を持ってにらめっこしている。


「こうして、真向斬り…右に振りかぶって斜めに相手の左肩に向かって袈裟斬り…」


 基本の型を改めてなぞりながら、素振りとも言えないゆっくりとした仕草で動作をひとつひとつ確かめていく。

 頭の上で構えた上段、お腹の辺りで構えた中段、腕を下ろして切っ先を下に落とした下段、顔の右横で刀を立てて構える八相の構え、右脇で切っ先を後ろに向けて構える脇構え。

 上段、八相、中段、下段、脇と順に構えを変えられるようになっている。

 そして師匠が書いてくれた技、本来は杖で行うものだと書いてある。突き技みたいだ。


「えっと…こうして……こう…こう?あっ」


 手が滑って木刀が飛んで扉に当たり、こんと小気味のいい音が鳴る。

 せめて中庭とかで練習しないと危ないかもしれない。


「失礼します。ナズナさんどうかしましたか?」


 近くにいたのかアリシアさんが部屋の扉を開ける。


「いえ…何も…」


 アリシアさんが木刀を拾って私に差し出す。

 ばれてしまっただろうか。


「広いところで遊ばないと危ないですよ」

「ごめんなさい…手持ち無沙汰でつい…」

「気をつけないと怪我をしてしまいますからね。昼食が出来ましたのでどうぞ食堂へいらしてください」

「ありがとうございます。リネ起きて、お昼ご飯の時間だよ?」


 私のベッドの上でいつものようにお昼寝をしているリネを起こし、一緒に食堂に向かう。

 今日のお昼ご飯はピルメンと茸の肉詰めとパンとサラダだ。

 今日も美味しい。

 アリシアさんは庭園に行ってくると言っていた。

 全然ちゃんとお手伝い出来てないなぁ。

 私もリネも早々に食事を終え、食器を下げて部屋に帰ろうとしていた時、アリシアさんが食堂に戻ってきたので挨拶をしておく。


「ごちそうさまでした。部屋に戻っていますね」

「こちらを渡そうと思いまして、庭園のお水です」

「ありがとうございます」

「それと…またオークとゴブリンの方が消えてしまったようです」

「そう…ですか…」


 バンバさんやどんぐりゴブリンさん達は無事だろうか。


「ナズナさんも念のためにしばらく城からは出ないようにしてください」

「わかりました…」

「中庭でしたら平気ですから、外の空気が吸いたくなったらリネさんと一緒に過ごすといいですよ」

「はい。ありがとうございます」

「では私は浴場の掃除をしていますから。何かあれば」

「はい」


 アリシアさんと別れ、師匠の部屋に行き、リリクラの鉢植えを確認する。

 土が渇いてるから、アリシアさんが汲んできてくれた水をたっぷりと注ぐ。


「これでいいかな…リリクラまたね。リネ…」


 戻ろうと言おうとして、ふとリネはずっと私の部屋にいる必要はないと思い、言葉が詰まる。


「リネ、お外に行きたかったら自由に行ってきてもいいんだよ?私はお部屋で待ってるから」


 リネは少し間を空けてから首を横に振る。


「じゃあ一緒にお部屋に戻ろうか」


 わふっと元気に答えてくれるリネと部屋に戻り、リネを撫でてあげながらまた師匠の冊子を読む。


「相手の攻撃を弾いて、体制を崩したところを一突き…」


 言葉にしてみると防御の基本のような動きになっているような気がする。

 本来は杖の技と考えると、懐に入られた時の技なのかもしれない。

 弾いた反動で勢いをつけて切り返し、即座に攻撃に転じるということのようだけど、刀で上手く出来るだろうか。

 こんこんと扉を叩く音がする。


「はい!どうしましたか?」


 扉を開いたのはアリシアさんだ。


「ナズナさんにお手紙が届いていますよ」

「ありがとうございます」


 誰からだろう。

 

「それでは私は今度は主様のところにいますね」

「わかりました」


 扉が閉まり、机に座って手紙を開く。


「誰からだろうねリネ」


 リネが手紙の匂いを嗅いで尻尾を振る。

 知ってる人からなのは確かみたいだ。


 ナズナへ

 もう少しで、行きます。

 待っててね

 お姉さまより

 ミーティアがどうしても手紙を書くとうるさくてね。

 仕事は無事に終わったけど、船に乗るので時間がかかるかもしれない。手紙もしばらく送れないけどこっちは元気にやってるから安心してくれ。

 コーネルより


 お姉さまとコーネルさんからだった。

 船に乗ったらしばらく手紙が送れないってお姉さまがコーネルさんに頼み込んだのだろうか。


「リネは海、見たことある?」


 リネがわふっと答える。

 そういえばリネは海を渡ってきたって師匠が言っていたのを思い出す。

 海、いつか海を渡ってキコクに行ってみたいな。

 今はトコヨと呼ばれているんだったっけ。

 お米が食べられる場所だといいな。

 食べ物のことならフィシェルさんに聞いたら何か知ってるだろうか。

 そういえば移動を続けているお姉さまとコーネルさんには送れないけどレイゼリアさんと師匠には手紙を送れるんじゃないだろうか。

 私は早速引き出しから紙を取り出した。

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