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これから

扉を叩く音が聞こえて、机から顔を上げる。


「どうぞ」


 扉が開いて、レーシャがお辞儀をする。


「レイゼリア様、お風呂の途中でナズナ様が眠ってしまわれたので、お部屋にお運びして寝かせて差し上げました」

「そう、ありがとう。身体に痣とか傷とかはなかった?」

「いいえ、特には。彼女はその、外套だけで森の中を?」

「そうみたいね」

「それにしては色白だったくらいでしょうか」

「そう。わかったわ」

「では、私は昼食の用意にかかります」

「ええ、お願いね」


 レーシャが扉を閉めるのを眺めてからベッドに横たわる。

 ナズナが刀も持っているんだろうか。考えを巡らせる。

 何も無いところから出し入れのできる魔法の武器は確認された数が少ないが存在する。

 このアルセル王国内にも一人そんな剣を持っているグレーゴル・オールという傭兵がいる。大きな黒い両手剣で、高熱を発し、何でも焼き切ってしまうという。この国のあるヨウル大陸から海を渡ったイー大陸にある遺跡で手に入れたという。その剣は胸にある紋様から出てくるそうだ。

 南のヘンギール王国にはカドールという将軍が雷を操る長剣を持っているという。彼にはナズナと同じで痣や紋様はなく、手をかざすだけで剣が現れるという。

 お父様が昔、本人に会って見せてもらったことがあるらしいから確かなことだろう。

 ナズナが言うにはあの盾は私の危機に際して初めて現れたという。彼女は私と出会う前にクリフトから魔物を引き離そうとして襲われ、追いかけられている。

 その時に現れなかったということは、刀を持っていたとしてもそう簡単には現れないだろう。

 正直に話して訓練をしてみないといけないかもしれない。


「失礼いたします。レイゼリア様、昼食をお持ちしました」

「ああ。ありがとうレーシャ」


 私は寝っ転がりながら答える。


「何度もノックをしても返事をしてくれないので眠ってらっしゃるのかと思いましたよ」

「本当?ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて」

「勇者様のお墓で何かあったのですか?それともナズナ様のことですか?」

「両方かしらね」

「そうですか。さあお茶もお入れしましたから一度休憩したらどうでしょうか?」

「そうね。頂くわ」

「ナズナ様のお部屋にも一応メッセージと一緒に軽食を用意しておきました」

「明日の朝まで起きないかもしれないわ。疲れているのか、たまにぼーっとしていたから」

「お風呂で眠ってしまうほどですからね」

「あとあの子記憶がないそうなの。私も気を付けるつもりだけどレーシャもよく見ていてあげて」

「ただの恥ずかしがりやさんじゃなかったんですね」

「恥ずかしがりや?」

「お風呂に入ったことがないというので一緒に入ってあげたんです。膝の上に座らせて洗ってあげたんですけど、初めの方は緊張しちゃってかちこちで。私の方も見てくれないし。そして気づいたら眠ってしまってたって感じです」

「きっとあなたの胸が大きすぎて怖かったのよ」

「いやいや小さな子どもならむしろ喜んでくれるんじゃないんですか?照れてたんです。きっと」

「城で三人でお風呂に入って確かめたらいいわ。私の膝の上に座るか、レーシャの膝の上に座るか」

「望むところです。それでは私はお仕事に戻りますね。レーゼ様も元気が出たようなので」

「ありがとうレーシャ」

「それでは失礼いたします」


 いつの間にか食べ終えていた空のお皿と空の茶器を持って、レーシャが笑顔で部屋を出ていく。

 そういえばナズナは何歳なんだろう。

 見た目は六から八歳と言ったところだろうか。けど受け答えがはっきりしてるからもう少し上?十歳とか?

 はぁお父様になんて報告しよう。

 ナズナが不法侵入で捕らえられる可能性も大いにある。

 大臣達から攻められても、お父様が突っぱねられる何かが念のために欲しい。

 年齢では誤魔化せない。

 彼女がどこぞのご令嬢ならまだ親の財力でどうにかなっただろう。

 あーお父様にも黙って城を出ていけばよかったかなぁ。

 けどお父様が護衛を寄越してくれてなかったら今頃魔物に殺されてたかもしれない。

 お父様が回りに黙ってくれていると信じようそうしよう。

 もしも盗まれていたときのことを考えたら、お父様も外部には簡単には漏らさないだろう。

 気分転換に泉の回りでも歩いてこようかしら。

 部屋を出て斜め迎えのレーシャの部屋をノックしてみる。


「レイゼリア様どうしましたか?」


 扉を開いてレーシャが顔を出す。


「ちょっと泉の回りを散歩してくるわ」

「わかりました。屋敷から離れすぎないでくださいね」

「ええ。結界から出ないように気をつけるわ」


 レーシャの部屋を後にして、階段を下り、扉を警備してくれている二人にも散歩をしてくると伝えて泉の方に歩く。

 泉のほとりではリネ様がまだ眠っているようだ。

 リネ様も魔物と戦って疲れたんだろう。

 そっと近づいて頬を撫でると、リネ様が私の左の太ももに鼻をくっつけて凄く匂いを嗅いでくる。

 あまりにぐりぐりされるので、ポケットを確めると干し肉が出てくる。いつ入れたのか思い出せない。

 カビが生えてないかよく確認してからリネ様に差し出す。

 ゆっくりと開けた口の舌の上に乗せてあげると口を閉じてくちゃくちゃとよく噛んで食べる。


「干し肉ならまだあったはずですから、今持ってきますね」


 そう言うとリネ様が尻尾をブンブンと振って伏せからお座りの姿勢になる。

 私は散歩をやめて魔物と戦ってくれたリネ様を労うために別荘に戻ることにした。

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