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リネがいたらいっぱい見つかる

「えっとこの辺りにシーカテがあるはず…」


 リネと一緒に森の中を歩く。

 城から北西に進んだ辺りを散策している。

 根に引っかからないように下を見ながら歩いていると、木陰に大きな茶色い傘を見つける。


「リネ、シーカテだよ」


 大きなシーカテを四つ見つけて、バランスよくリネの背負った二つの籠に二つずつ入れる。

 小さなシーカテは取らないでおく。

 リネが小さなシーカテに鼻を着けてすごく匂いを嗅ぎ始める。

 まさかなんだろうか。

 リネが駆け出していき、木々の合間に消えたかと思うと、わふわふと吠える。

 声を頼りに走っていった方へ歩いていくと、吠えるリネの足元にシーカテが生えている。

 リネと一緒なら前に見つけられなかったマルタケも見つけられるかもしれない。


「教えてくれてありがとう。リネ」


 リネの頭を撫でてあげ、シーカテを取る。

七つも食べ頃そうなものがあった。

 もちろんこれらもバランスよく籠に入れていく。

 リネって茸食べられるんだろうか。ブブの実は食べていたけど。

 リネの耳がピンと立ち、一点を見つめ出す。

 何かの動物だろうか。

 木刀を抜き、脇構えでリネの見つめる方へ集中する。

 がさがさとぱきぱきと何かがこちらへ歩いてくる。

 大きな影が見えてくる。熊だろうか。それとも猿のゲルブだろうか。

 木々の合間から見えたのは緑色の肌だ。

 とても大柄で筋肉質で腰簑を着けていて、大きな鉈のような剣。オークだ。

 でも北と南で狩り場をゴブリンとオークで分けていると師匠は言っていたから城の北側でオークを見かけるのはおかしいはずだ。

 構えを解かず、オークに話しかける。


「私は城の者です。オークの方が北側にいるのは何故かお聞きしてもいいですか?」


 私の声色か何かを感じ取ったのか、リネが姿勢を低くして、唸り始める。

 それを見てオークも察したようで、両手を挙げながらゆっくりと近づいてきてから地面に剣を突き立て、また両手を挙げる。


「すまない、俺の不注意だった。俺はオークのバンバ。仲間を探している。もう二日帰ってきていない」

「子供が迷子になったんですか?」

「いいや、狩りに出た三人の戦士が帰ってこない。おかしいと思い、男達で別れて探している」


 私は構えを解いて木刀を腰に差す。

 それを見たリネも唸るのをやめて姿勢を戻す。


「オークの方が勝てないような強くて危ない動物がいるんですか?」

「いや、そこまで凶暴なやつはいないはずだ」


 私もそんなに危険な動物がいたら教えられているはずだ。

 リネなら何か探せるだろうか。


「消えた三人のオークさんの持ち物とかありませんか?この子なら匂いを追えるかもしれません」

「それならこれを。弟が作ってくれた。匂いが残っているかも」


 バンバさんが首飾りを外して握り込み、私の方へ突き出す。


「消えたのは三人とも兄弟ですか?」


 首飾りを受け取り、リネに匂いを嗅がせる。


「いやそのうちの一人だ」


 きっと見つかるなんて無責任なことは言えず、言葉に詰まってしまう。

 わふっとリネが吠えたおかげで、間が保たれる。

 リネに背負わせていた二つの籠を外して、中の茸をひとつにまとめ、背負おうとすると緑色の太い腕が伸びてくる。


「俺が持とう」

「ありがとうございます。リネ、大きくなって私とバンバさんを乗せれる?」


 そんなことは余裕だと言わんばかりにリネの大きさが元に戻っていく。


「これはすごい…」


 リネが乗りやすいように伏せると、後ろから抱きかかえられ、バンバさんが私と籠を両手にそれぞれ持って軽々とリネの首元に上がる。


「ありがとうございます。リネお願い」


 大きなリネが器用に木々の合間を抜けて跳ぶように駆けていく。

 やはり森の南側で何かがあったみたいだ。

 あっという間に駆けていき何もない森の中でリネが立ち止まる。


「リネ、ここ?」


 うぉふっとリネが吠え、伏せる。


「何かと争った形跡も見当たらないが…」


 そう言いながらバンバさんがまた私を抱きかかえながらリネから下りる。

 私達が下りるとリネが普通の狼の大きさに縮んで走り、土を掘って何かを咥えてくる。

 さっきバンバさんが匂いを嗅がせた首飾りに似ている。


「バンバさん、これに見覚えはありますか?」


 バンバさんが驚いた顔で茸の入った籠を置いて、首飾りを受け取る。


「弟の物だ…ダンダは手先が器用でこれもダンダが…」

「リネ、匂いはここまで?」


 リネが尻尾を垂れ下げながら首を縦に振る。


「ここで何かがあったみたいです。ガンドルヴァルガさんには報告などは?」

「この捜索の結果次第ということになっている…すまない、リネと言ったね。他には何かないか?」


 リネが尻尾を垂れ下げたまま首を横に振る。

 残念ながら匂いは完全にここで途切れているみたいだ。


「そうか…ありがとう。えっと君の名前は…」

「ごめんなさい!私はナズナです…」


 完全に忘れてしまっていた。


「前に城の一員になったという少女か」

「はい、し…エリュさんと一緒に一度集落にご挨拶に…」

「ナズナ殿、俺は戻って族長に話をしてくる。族長が改めて城へ話に行くだろうから、その時は良ければ口添えをお願いしたい」

「わかりました。私に話せることは特にないと思いますが…」

「それでもかまわない。協力に感謝する。このご恩はまた後で必ず返す」

「いえ!お礼なんて…バンバさん!」


 振り返らずに森の中に走っていってしまう。

 オークの方達は心配だけど、残念ながら私に出来ることはない。


「ひとまず茸を探しながら城の方まで戻ろうか」


 わふっと答えるリネと一緒に森を歩いていく。

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