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庭園

 空想の世界のような夢の中ような庭園には、見たことのない綺麗な花や草木が生えていて、これなら眠ったままのリーシルも確かにすぐ良くなりそうな気がする。


「こちらには外の世界にはもうない貴重な種類も残っているんですよ」

「すごい…綺麗だねリネ…リネ?」


 探すと入ってきた入口のすぐ側で伏せて前足で鼻を押さえている。


「これは想定外でしたね。リネさんの苦手な匂いを出しているのがどの植物かもわからないですし…」

「そうですね…ごめんねリネ。外で待ってて?」


 尻尾をゆっくり左右に振って立ち上がり、入口に飛び込んでいく。余程苦手な匂いがしていたみたいだ。


「リネさんは残念ですが、ナズナさんこちらへ」


 アリシアさんの後に着いて左に進むと井戸が見えてくる。


「こちらの井戸で水を組んで、横にあるじょうろで鼻にお水をあげていきます」

「リリクラにあげるお水もここから?」

「はい。エリュさんの部屋の植物全てがそうではないですがリリクラさんにいつもあげていたのはここの井戸の水です」

「特別な水なんですか?」

「はい。栄養価と魔力の高い水だそうです。私達はお腹を壊してしまうそうですから気をつけてください」

「わかりました」

「お水の汲み方はわかりますか?」

「はい、多分…」


 近くに置いてある木箱の上に乗り、井戸の上に掛かっている半分ほど水が入ったバケツを外して紐を下ろしていくとバシャンと水の音がしたのを確認してから紐を引いていく。

 重い。思っていたよりもずっと重い。

 私の力がないだけだろうか。

 なんとか紐を引ききり、水の入ったバケツを持って横に置いてあるじょうろに注ぐ。

 もう一回汲まないといけなさそうだ。

 またバケツを落として紐を引き、じょうろに水を注ぐ。

 もうちょっとしっかり沈めたらいっぱい水が汲めて一度で済んだだろうか。


「よくできましたね」


 黙って見ていたアリシアさんが私の頭を撫でてくれる。

 恥ずかしい。


「ではじょうろを持って、着いてきてください」

「わかりました」


 バケツ一杯分の水が入ったじょうろは重く、揺れるじょうろに合わせて身体がよろけそうになるのを必死に我慢してアリシアさんに着いていく。

 井戸から更に奥に歩いていくとガラス張りの小屋が見えてきて、中にはたくさんの鉢植えがあるのが見える。

 ふらつきながらもなんとか溢さずに小屋にたどり着く。


「頑張りしたね。後は見ていてください」

「でも…これが出来ないとお手伝いが…」

「ゆっくり慣れていけばいいですから。それに軽い運動までと言われましたよね?」


 正直腕がもうきつくてぷるぷるで握力も今にも抜けてしまいそうなので、大人しくアリシアさんに従う。


「ごめんなさい…本当はもうギリギリです…」

「いいんですよ。とても助かりました」


  アリシアさんが私からじょうろを受け取り、鉢植えの葉を避けて確認しながらお水をあげていく。

 緑色の花や青色の草、小さな黄色い木に赤いサボテンなど不思議で綺麗な植物達がたくさん壁側の棚に置いてある。

 そして小屋の中央にはいろんな種類の花に囲まれた大きな四角い苔の塊が置いてあり、その上に静かに妖精が眠っている。


「リーシル…」


 とても穏やかな顔に見える。

 経過は順調なのかもしれない。


「一応これで庭園での仕事は終わりです。管理といってもこちらの小屋にある子達にお水をあげるだけなんです」

「外の植物達は大丈夫なんですか?」

「はい。定期的に主様かエリュさんが雨を降らせたりしていますから。外の世界に返せる様にできるだけ自然に育てているんです」

「そうなんですね」

「せっかくですから少し見て回りましょうか」

「いいんですか?」

「勝手に抜いたり踏んだりしなければ大丈夫です」


 アリシアさんがそう言いながら小屋を出る。


「リーシル、またね」


 私もそう言って小屋を出て、アリシアさんを追いかける。

 七千年前の木に、まだ名前のついていない赤紫色の花、霜がたくさん付いた冷たいサボテン、貴重なものや新しいものに珍しいもの、何でもあるみたいだ。


「そういえばここはお城の中なんですか?」

「はい」

「さっき来たみたいな空からの人には見えるんですか?」

「いいえ。魔法で隠されているそうですよ。流石に空からお城を見たことはないのでよくわかりませんが」

「そうなんですね」


 リネに乗せてもらったら見れるだろうか。


「そろそろ戻りましょうか」

「はい」


 庭園から出る前に、アリシアさんがリリクラ用に井戸で水を汲んで瓶に詰めてくれ、それを持って脱衣室に戻る。

 ミトンには滑り止めも付いていて、ガラスの瓶も滑らずに持てるみたいだ。

 それと長い期間手袋をして過ごしていたからかミトンをしてるとなんだか落ち着く気がする。


「リネ、ただいま」


 長椅子の上で丸くなっていたリネの耳がピンと立ってリネがこちらに気づく。

 私が腕を広げると走ってきてくれて、抱きしめて頬をわしゃわしゃと撫でてあげる。


「お手伝いありがとうございました。私は主様のところへ行きますがナズナさんはどうしますか?」

「せったく服を着せてもらったのでお手伝いします」

「そうですか?では一緒に行きましょう」


 軽い運動の範囲がどこまでかよくわからないけど、今日はお手伝いを頑張ろう。

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