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新人侍女が有能すぎる

リーリエを拾ってから早一ヶ月。魔王オースティンの侍女となった彼女は、元公爵令嬢かと疑いたくなるほどに、リーリエは仕事ができた。


「うまい…」


お茶にうるさいオースティンが唸るほど美味しいお茶を入れたり(ほんとにうるさい。最終的には自分で淹れ始めた)、


「魔王陛下、あの侍女はすばらしい」

「さりげない気遣いは心に沁みます…」

「マナー完璧」


王妃教育で培ったマナーや教養で、立ち振る舞いにうるっさい重鎮たちから絶賛されたり。

本人に自覚は薄いけれど、もう魔王城に馴染んでいた。最初こそ、人間界と魔界の設備や文化の違いに戸惑っていたものの、元々の能力の高さとコミュニケーション力で、城の使用人とも仲良くなっていて、毎日が楽しそうだ。

☆ ☆ ☆

今週は、執務が立て込んでいて、普段執務に関わりもしないソフィアまで駆り出されていた。無論私もだ。


「オースティン、ここミス」

「オースティン!ソフィア!終わった書類とまだの書類は分けて!分かりずらいでしょうが!後、ある程度の重要機密なんだから、書類は大切にあつかいなさい!」

「追加きました」

「なんだこの量は…どう考えてもおかしいだろ…」


魔王と四天王が揃った執務室の空気はとても殺伐としていた。書類の扱いの雑なオースティンと、ミスを見つけると、速攻でこっちに書類を投げてくる(物理的)ソフィア、そしてその二人にキレる私(別に不敬じゃないよ)、自分の分も終わらせつつ、次々と追加の仕事を持ってくるリアン、めっちゃテンションの低いレオナルド。とてもあの威厳に満ち溢れた恐ろしい魔王様と、四天王達の仕事風景だなんて言えないような光景が広がっていた。オースティンとレオナルドの二人はもう目が死んでる。


「失礼します」


リーリエがお茶セットが乗ったカートを引いて部屋に入ってくる。何度かみたけれど、メイド服似合ってるわね。やっぱり美少女は何着てもいい感じに見えるのかしら。


「あぁ、もうそんな時間か。よし、休憩しよう」

「はい」

「やったー!」

「やっとか…」

「お疲れ」


オースティンの休憩宣言を聞いて、口々に言いながら私たちはソファに座る。執務室には二人がけソファが三つある。いつも、レオナルドとソフィアが二人で座って、私とリアンは隣に、オースティンは一人で座っている。(一応魔王様なので)それはいいんだけど…


「ねぇ。なんか近くない?」

「いや?そんなことないよ」


ここ最近異様にリアンとの距離が近い。ちょっと動けば肩がぶつかってしまいそうなほど、近くに座ってくるのだ。広いソファなんだから、と言って離れてもまた近づいてくるだけなので、もう諦めかけている。好きな人と近くで座れて、嬉しいんだけど、触れるだけでドキドキしてしまう。もう何千年も一緒にいるのに慣れない。


「イチャつくな」

「イチャついてない!」

「今日のお茶は、東方の国で作られている“リョクチャ”というものです」


最初はこのやりとりにアワアワしていたリーリエだが、今はもうすっかり慣れてスルーしてる。


「ありがとう」

「いえ」


話は変わるけど、最近なんかこの二人仲良い。オースティンもリーリエの事、最初は渋々侍女にした感じだったけれど、もう侍女がいて当たり前みたいな感じになってるし。


(良かった。あとこれ、リョクチャって言ったけ美味しいわね。この間買った”ドラヤキ”に合いそう)


「うまいな。…あぁ、リーリエも座るといい」


お茶を一口飲み、満足げな顔をしたオースティンが自分の隣を指差す。


「かしこまりました」


最初こそ「自分は侍女だから」と遠慮していたリーリエだけど、最終的にはに押し負け、今のようにオースティンの隣にちょこんと座っている。


「平和ね」

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