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元公爵令嬢リーリエの今後

コンコンコン


「アナベルです」

「入れ」


一応ドアから入るのでノックをする。(こっちが常識。くれぐれも勘違いしてはいけない)


「どうした。まだ訓練の時間じゃ無いのか?」


オースティンがものすごい速さで書類を捌きながら言う。それでも尚減らない書類の山よ。


「この間の女の子が目を覚ましたわ」

「そうか。よかったな」

「反応薄!」


レオナルドがオースティンの反応の薄さにツッコミを入れる。面倒臭さが滲み出ている。


「どこのご令嬢だった?」


後ろからリアンが大量の紙の束を抱えて入ってくる。なに、そのおびただしい枚数の書類…


「うわぁ、追加の仕事?手伝うわ。えっと、アネモネ王国の公爵家、ヴェイン家のご令嬢で名前はリーリエ。数年前に、ヴェイン公爵家の長女がアネモネ王国の王太子と婚約したって報告があったじゃない?あの時の王太子が浮気してリーリエに婚約破棄を突きつけて、濡れ衣で国外追放。その上、実家では継母や義妹に虐待されていたらしくて。一部しか言っていなかったけれど、食事の制限、日常的な暴力、父親は見て見ぬふり。体がアザだらけだったのもそのせいね」


私は運ばれてきた書類を仕分けながら、リーリエから聞いたことを一気に捲し立てる。あぁ、思い出して怒りが湧いてきた。一体なんなのよ、バカ王太子と公爵家の連中は。しかも、国王もそれを容認したって…近いうちアネモネ王国滅びるんじゃ無いの?


「…面倒だと思っていたが、中々不憫な娘だな」


興味がなさそうだったオースティンもあまりの残状に眉を上げて呆れている。でも、作業スピードが変わらないのよね。さすがだわ…


「ヴェイン公爵家の長女って、聖女じゃない?数年前に神託がくだった」


お茶を飲みながらそういったのはソフィア。実はそう。各国の王族にしか伝えられていないけれど、五年前にリーリエが聖女だという神託がくだったのだ。だから、王太子と婚約していたんだろうけど。


「あぁ。そんなこともあったか…って、聖女を手放すって本気でバカなのか?知能ニワトリ以下…いや、比べられたニワトリが可哀想か」

「偽聖女って汚名も着せられたって。浮気相手が本物の聖女だ!ってバカがほざいたらしくて」

「ほー。頭ん中お花畑」

「はぁ!?明らかにあの魔力は聖女のものだろ!バカ?アホ?脳無い?」


普段滅多に人のことを悪く言わないレオナルドにここまで言わせるとは…アシュリーの毒舌よりも酷い。


「二人ともバカだのアホだのを連発するんじゃ無い。あれはそんな言葉じゃ表しきれないほどの愚か者だぞ」

「そう言ってるリアンが、一番酷いこと言ってるの自覚してる?ねぇ、わかってる?」


思わず思いっきりツッコミを入れてしまう。話した内容に関しては、すごく同感だけど。


「で、アナベル。その娘…リーリエだったかをどうしたい?お前が拾ってきたんだ。最後まで責任を取れ」


我ら四天王からアネモネ王国王太子への罵倒が続く中、あまりに終わらない罵倒を見かねたオースティンが口を挟む。そこのところはちゃんと考えてあるわ!


「まず、リーリエは聖女であるけど、あっちで散々偽聖女って言われていたせいで、聖女の力があるわけないって自分もそう信じ込んでいるのよ。聖女覚醒はリーリエが二十歳の誕生日。今力が使えるわけがないのにね。そこで、リーリエが家事全般できるっていってたから、魔王…オースティンの侍女かメイドかをやってもらおうかと思っているんだけど」

「は?なんで俺が出てくる。普通に魔王城で暮らせばいいだろう。わざわざ使用人の真似事をさせなくとも…」

「それも提案したんだけど…何にもしないで世話になるのは申し訳ないから、なんか仕事をしたいんだって。だから、ずっと空いているオースティンの侍女でもやってもらおうかなぁと」

「いいじゃないですか。側近選定試験以来メイドも侍女もついていませんし、ねぇ?」

「そうだぞ。ショックだったのはわかるけどさ。面倒臭がって1000年放置はないだろ」


リアンとレオナルドも賛成。何か含んでる感がするけど…

ソフィアは…あ、完全に我関せず。興味がないのだろう。


「おまえらなぁ、いい加減それ蒸し返すのやめないか。もうそんなんじゃないって言っただろう。はぁ、もういい、それでいい」


オースティンが諦めたようにため息を吐く。もう、半ばヤケクソじゃない。そんなに嫌?リーリエはいい子よ?

…と言うか、さっきから三人の会話が微妙にわからない。男同士で何か通じるものがあるのかしら?


「じゃあ、そう言うことで」


こうして、魔界の端に捨てられていた元公爵令嬢、リーリエは魔王オースティンの侍女になったのだった。


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