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なぜあれで恋人ではない? sideオースティン(魔王)

「なぁ、オースティン。なんであいつら恋人じゃないんだ?おかしいだろ」


レオナルドが心底わからないと言った表情で言う。彼は、魔王四天王の一人で騎士団長。真っ直ぐな性格で、恋愛ごとには疎いはずなんだが…


「そうだよな。おかしいよな」


誰がどう見ても両思いだろうに、どうしてくっつかない。『アナベルとリアンを応援し隊』はこの間1000周年を迎えたぞ。我らだけではなく、使用人や臣下までもが応援に回り始めていると言うのに…


「二人とも激鈍?」

「激鈍はアナベルだ。いや、薄々は気付いているかもしれないが、リアンの牽制のせいで自分が美しいことは自覚していても、モテないと思っているからな。ありえないと自分で目を背けている。リアンはアナベルの気持ちには気づいてる。確実に。じゃなきゃあんな露骨な反応しないぞ?あれは、恋心を完全に隠せるタイプの男だ」

「だよなぁ」


レオナルドの疑問を否定する。だって最近あいつ、俺たちに見せつけることで他の男を牽制して、尚且つ外堀を埋めてっているぞ。


「とうとう我慢の限界か」

「1000年…いやもっとか。俺ら魔族には永遠の時間があるけど、そんだけ待たされてりゃ、そろそろ手に入れたくなるな」


思わずニヤニヤする俺にレオナルドがウンウンと頷く。


「お前は、ソフィアをどうやって落としたんだ。最初の方は、苦手に思われていただろう」


レオナルドは魔王四天王の最後の一人である研究者ソフィアの夫である。レオナルドは、四天王に選ばれてから割とすぐにソフィアに惚れていたのだが、相手は研究一筋の薬やポーション大好き人だ。両思いになって結婚するまで、かれこれ500年はかかってた。


「まっすぐ言葉をぶつけるのと、悩みを聞くってところかな。フィーはまどろっこしいのが嫌いだし、俺役に立たないけど、研究で行き詰まっていたら話くらいしか聞けないけど」


そう、僅かに頬を赤く染めながら言うレオナルドが羨ましく思えた。好きな女に好きだと返してもらえるのは、なんて幸せなことなんだろう。現在好きな人・恋人なしで初恋が約1000年前に儚く散った俺には眩しい。


「一応アナベルが俺の初恋なんだがなぁ」

「は?なんだって?」


あ、まずい。思ってたことが言葉に出てしまった。しかし言ってしまった言葉は取り消せない。興味を惹かれたように瞳を輝かせたレオナルドから逃げるのは不可能だ。俺は腹を括って、肯定した。


「だから、アナベルが俺の初恋。側近選定試験の時に一目惚れだ」


腰まで伸びたストロベリーブロンドの美しい髪。そして、キラキラと輝くルビーのような瞳。クールな顔立ちと無表情、その凄まじい魔力量と相まって、とんでもない女王感を放っていた。おまけに、男の夢を詰め込んだのかのようなあの体型だ。おそらくあの場にいた男の半分は彼女に惚れていたと踏んでいる。


「あの選定試験か…。確かにベルは綺麗だったけど、あの時って…」

「あぁ。リアンが凄まじい殺気と魔力を振り撒いて、男どもを牽制していたんだよな。おかげで、俺は恋心を自覚してから一瞬で失恋したんだ」


俺がアナベルに見惚れていた時にリアンと目が合った。その時のリアンが恐ろしかった。魔王子だろうが関係ない、あまりにも視線が鋭すぎて、あの視線で魔族を殺せるんじゃないかとも考えた。そのくせ、アナベルと話す時は人が変わったかのように優しい笑みを浮かべるのだ。その変わり身の速さは、とても同い年だとは思えなかった。


「もう1000年も前の話だ。今アナベルに恋愛感情はない。仮にあったとしたらリアンに殺されかねないしな」


俺はレオナルドに念押しする。今だに俺がアナベルに惚れているなど勘違いされては困るのだ。リアンとアナベルを心から応援している。


「わかってるよ。…まぁ、頑張れそのうちいい出会いがあるさ」


レオナルド、そのフォローは逆に心を抉るものだ…


「あぁ、そうだといいな」






この時の俺は、これから割とすぐ愛する人ができて、割とすぐ幸せにだと感じることができるとことをまだ知らない。

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