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心臓がいくつあっても足りません

アナ



子供の頃から呼ばれ慣れているはずの愛称に、いまだにドキドキしているなんて、笑っちゃう。

日常の節々で、感じる。あぁ、リアンが好きだなぁと。もういつからとかは覚えていない。2000年くらい?

魔族はものすごい長寿で、いまだに自然死した魔族は確認されていない。一体何年生きるのか本人たちにもわかっていない部分がある。私はまだまだ若い方だ。


「また拾ってきて…お人好しもいい加減にしなよ」


しばらく無言が続いていると、リアンが呆れたように、しかし少し咎めるようにようにいった。心配してくれているのはわかってるんだけど。


「私?別にお人好しじゃないし。どっちかと言うと道徳は嫌いよ?それを言うなら、あなたの方がよっぽどお人好しで優しいわよ」


そう、普段鬼宰相なんて呼ばれていようとも、根は昔から優しいリアンのままだ、他人の目には人を切り捨てられる冷徹な男に見えるかも知れないけど、裏で色々悩んでいるのは知っている。これでも生まれた頃からの付き合いで、伊達に幼馴染やってないもの。その辺はわかっているつもりだ。


「そうじゃないっていつも言ってるだろう。俺だって大切な幼馴染の心配ぐらいするよ」

「そうね…ん?大切?たいせつ…っ!」


同意しかけたが、大切な幼馴染って言った?言ったよね?まさかの発言に顔が一気に熱を持つ。

あんまり自然に言うもんだから理解するのに時間がかかった。


「あ、ありがとうリアン」


そう言って頭一つ分くらい上にあるリアンの顔を見て思わず固まった。だって、想像していたよりもずっと優しい目でこちらを見ていたんだもん。ただでさえ綺麗な青色の瞳は蕩けそうに細められていた……って、私の願望が見せた幻影じゃないか。

私は邪念を払うようにかぶりを振った。


「それにしても綺麗な子よね」


話を逸らす為に、私は改めて女の子を見ながら言う。リアンに横抱きにされている姿はさながら童話の眠り姫。女の私でも思わず見惚れてしまう。


「この容姿だと、多分相当高位の貴族だよ」


えぇ。人間界では、貴族位が高ければ高いほど容姿が美しくなる傾向にある。それは、人間が積極的に美しい人と結婚するからだ。位が高ければ権限を持ち、美しい者が手に入りやすい。そうして先祖代々取り入れてきた遺伝子が、今の王家や貴族の美貌に繋がっているのである。


また、魔族は力が強いほど容姿が美しくなるので、努力を続けて強くなれば自ずと顔が美しくなる。(強きものがどう言う判断基準なのかは詳しくわかっていないので、勉学に特化しているものも美しい)。


そして、魔王やその側近である四天王は、魔族の中で最高峰である。それぞれ、万能、剣技、魔術、研究、守りに特化…いや全員魔族史上最強なので、過去に類を見ないほどの美貌である。まぁ、その美貌をもってしても私はモテないのですが…


「王族か大公家、公爵家あたりのご令嬢でしょうけど、なんでやんごとなきご身分の令嬢が魔界に捨てられるのよ。あのままあそこにいたら、魔物に食われること間違いなしよ」

「変だよな……まぁ、俺はアナが世界で一番綺麗だと思うけど」

「っ!!!!!」


まさかの不意打ちに、折角熱が引いてきた顔がまた赤くなるのがわかる。ど直球すぎる。自分が相当美しいことは自覚しているが、好きな人に言われるのとは話が違う。


しかし、こんなにしょっちゅう赤面してたら、私の恋心はリアンに伝わってしまうのではないか。と言うか、最近こんな感じの発言が多いから、勘違いしそうになる。もしかしたら、リアンも私の事好きなんじゃ無いか…って。


まぁ、少し眉を顰めるだけで怖がられるような私をリアンが好きな訳ないのだけど…


こうして、恥ずかしいやら嬉しいやらで、目的地の部屋に着くまで、私はリアンの方を向けないでいた。


………後ろで誰かが今の様子を見守っていたことも知らずに。


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