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とある令嬢のお買い物

次の調査は、主に貴族向け商人達が対象だ。だから、今私はサマリア男爵令嬢として商人を呼びつけている。この身分は、こう言った調査の時に使うもので、普段はこちら側の諜報員が男爵、男爵令嬢として生活している。200年は続く、人間界的には古株貴族。ただ、目立たないようにこれと言った功績は挙げていないため、身分は男爵止まり。影の薄い温厚な中立の立場。

というわけで、今日の私は長い黒髪が美しい、男爵令嬢メアリーになりきっている。目指すは、商人からみたらよくお金を落としてくれる、チョロい令嬢だ。本物はそんなことないのだけど。

ちなみに、今回リアンは専属執事役として、後ろに立っている。テーマは、お嬢様至上主義の金髪執事。面白くてモノクルを掛けさせてみたけれど、まぁよく似合っている。


「メアリー様。このグラーモ、お呼びと伺いまして、馳せ参じました。ご機嫌麗しゅう」


現れたのは小太りの男性。貴族の三男坊上がりと言ったところか。持ってくるものはセンスがいいが、とことん搾り取ろうとしてくる宝石商、と聞いている。


「えぇご機嫌よう。早速だけれど、今日は首飾りが見たいの、何か良いものがあるかしら」

「はい、ではこちらの…」

☆ ☆ ☆

「疲れた…」

「はしたないですよ、お嬢様」

「もういいでしょ。誰もいないんだから」

「それもそうか」


かっちりした印象の執事スタイルから、いつものリアンに戻る。相変わらず仕事モードとプライベートモードのオンオフが激しい。


「やっぱり王族がだめね」

「あぁ、宝石商も雑貨屋も針子も同じことを言っていたね。国王が昏睡状態なのをいいことに、王妃が毎日のようにドレスを仕立てて宝石を買い漁る。第一王子も聖女(笑)に強請られるままになんでも買い与えてるって言うし。第二王子は幽閉中。問題起こしたって聞くけど、本当かはわからない」


さっきまで、最初の宝石商、雑貨屋(レターセットや小物が買える)、ドレスを仕立てるためのお針子を呼んで、買い物をしていた。貴族の上層部も相手にしている商人たちを呼んだから、誘導して欲しい情報を手に入れる。まさかあんなにペラペラ喋ってるれるとは思わなかったが。ちなみに、ドレスの採寸をしても、本物のメアリーと体型が似ているから、全く気付かれなかった。


「そもそも王族の性格事情が商人達から漏れているのもおかしいわよね」

「追加の報告だとおかげで国庫は空っぽ。お金がなくなれば増税するらしい」

「おじさんがいっていたやつね……今すぐにでも滅ぼしちゃおうかしら。国民もその方か嬉しいんじゃない?」


一応リーリエの祖国ではあるが、この国が存在していてもいいことはないと思う。国中の王族と貴族だけ捕えるなんて赤子の手を捻りより簡単だし。


「それもいいけど、任務外だからやめといた方がいいよ。……それにしても、リーリエ嬢の評判は散々だったね。第一王子、悪知恵だけは働くらしい」

「ほんっと酷かったわね…怒りを抑えるのが大変だったもの。おじさんは疑っていたけれど。より貴族に近い商人の方が信じてるってどう言うことよ」


まぁ、出てくる悪評の数々よ。神聖なる聖女様をいじめたとか、嫉妬に狂って殺そうとしたやら襲わせたやら、階段から落とそうとしたやら事実無根にも程がある。

一応諜報員を使って調べたけれど、リーリエは潔白だった。学園で教科書を破いたり、取り巻きとなじったりもしていない。学園と王城と公爵家を往復するだけの毎日だったとか。それなら浮気三昧だった第一王子の方がよっぽど悪いだろう。その浮気も、聖女(笑)との純愛ストーリーみたいになっているが。


「来週は舞踏会か…」

「なんだっけ…あぁ、今度は異国の王女と公爵令息か」

「えぇ、百年に一度だけやってくる幻の王族役よ。誰も私の顔を覚えてはいないはず」

「…婚約者役だし、役得だな」

「なんかいった?」

「なんでもないよ。お疲れ様。今日は終わりにしようか」

「うん」


こうして、男爵令嬢としての調査は終わった。

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