女子会《パジャマパーティ》1
「さぁさぁ、始めるわよ!女子会!」
「い、いぇーい」
「テンション高」
「ウレシー」
リーリエがオースティンと視察に行ってきた日の夜。私の部屋では絶賛女子会が開催されていた。もちろん主催者は私。参加者は、リーリエ、ソフィア、アシュリーの三人だ。リーリエは頑張って乗ってくれているけど、ソフィアとアシュリーは冷めている。「ウレシー」なんて、ここまで綺麗な棒読みは聞いたことない。
「夜中にお菓子を食べまくって、お喋りして、一晩中起きてるなんて、普段できないもの。お行儀悪いけど、楽しみましょう!」
「はい!」
「んー」
「皆様、こちらが今回のお菓子です」
アシュリーがベッドの上に小さな台を乗せ、その上にお菓子達を並べた。
(絶対美味しいじゃない…しかもクッキーにミニドーナツにマカロンなんて、食べやすいものばかり。料理長。わかってるわね!)
ジャムクッキーに手を伸ばしつつ、今日の本題といっても良い事を早速聞いてみる。
「それで?今日のデートはどうだったの?」
「デートじゃないですよ?視察です…そうですね…初めて、食べ歩きというものをしました」
「屋台のご飯って美味しいよね」
「それから…」
今日の事を改めて思い出したんだろう。表情どんどん明るくなっている。リーリエの話から聞くデートは、とても楽しそうで、まぁ初々しかった。
「〜〜にも行きました」
「へぇ?今度レオに連れてってもらお」
「…ねぇ、リーリエって、オースティンのこと好きなの?」
「な、なな何を言い出すんですかアナベルさん!そんな恐れ多いこと、あるわけなんじゃないですか!私なんかが…」
私の直球の質問にリーリエは両手を顔の前でブンブンと振りながら否定する。でも、真っ赤に染まった顔で言われても、1ミリも説得力がない。それにしても、「私なんかって」相変わらずリーリエの自己肯定感は低いままだ。優しくて、綺麗で、博識で、それにとっても器用な人で、正直弱点なんてほとんどないように見えるのに。やはり、あの最低最悪の家族達(とも呼びたくない)のせいだろう。日常的にそれも子供にとっては絶対的な大人に、自分を貶めるような言葉を吐かれたら子供は、それが事実だと受け止めてしまうのではないか。
(本当にどこまできても邪魔な奴らね…)
舌打ちが出かける。
「それはあたしも気になってた。あのオースティンがあんな甘い雰囲気出せるなんて、初めて知ったもの」
そう、自分の髪をいじりながら言ったのはソフィア。ちなみに、この中で唯一の既婚者である。
「まさか、好きだなんてそんな…ないですよ」
「えーじゃあさ。例えばオースティンがあなたのために、執務をいつにないスピードで終わらせて、一緒に出かけてたら嬉しい?」
「そんな恐れ多いですが…嬉しいですね」
「オースティンが笑ってたら?」
「嬉しい、です」
「それじゃあ、オースティンがあなた以外の女性と腕を組んでいたりしたら…どう?」
最後の質問に、リーリエの顔が曇った。わかりやすい。
「…嫌、かもしれません」
「それが、好きって事よ。相手が自分のためにしてくれたことは嬉しいし、笑顔を見れても嬉しい。それから、他の女に人と仲良さげにされてモヤモヤするのは嫉妬。あとは、何気ない仕草とか会話にときめいたりしない?」
「…」
何かを思案するように黙り込んだリーリエだったが、その次に見せた表情は、頬を桃色に染めて、まさに恋を自覚した乙女、というものだった。




