悪魔討伐
冷たい北風が吹き荒れる北の岩場…別名『悪魔の巣窟』の真ん中に悪魔はいた。
小柄な真っ黒なモヤ…下級悪魔が一体と、前者とは違い、形がある中級悪魔が一体確認できる。
カイトの言葉を借りると、「中級悪魔は、子どもに説明する時の、虫歯のバイ菌のイラストにそっくり」だそうだ。相変わらず何を言っているのかわからない。
(あら?下級悪魔は二体じゃなかったかしら?聞き間違いかしら)
というか、前回ゲートはぶっ壊…いや、封印したはずなのに、なんで悪魔が魔界に入り込んでいるのか。
(あぁ、面倒くさい…)
そう思いながら地上に降りて、悪魔達に声をかける。
「ご機嫌よう。不法侵入者さん。わざわざ魔界まで来てどうしたのかしら。出来ればこのまま帰っていただきたいのだけど」
「コトワル。火球!!」
「〜〜〜〜〜〜」
ボン!!
中級悪魔がカタコトで拒みながら、火球で攻撃してきた。下級悪魔も、言葉とも言えない音を発して同じ攻撃をしてくる。
火球。魔術で一番最初に学ぶと言っても過言ではない、下級魔法。簡単な上に、大きさ次第では、攻撃力が高くなるので、魔術師の間では重宝されている。正直魔術を使うのに詠唱なんて要らないけれど、自分の手の内を全て敵に明かすのは危険だ。
「水球」
ジュウゥゥ
私はその攻撃を水球で全て相殺する。
水球。これも下級魔法で、攻撃力は皆無ではあるが、火球を相殺できる。結界を除けば唯一と言っていい対処法。
ありきたりだけれども、一番使いやすい。
「随分なご挨拶ね。いきなり攻撃してくるなんて、マナー違反だと思わないの?…まぁ、戦闘にそんなの関係ないか」
私が話している間にも次々と火球を放ってくる中級悪魔。
よく見たら下級悪魔の後ろに裂け目がある。やっとゲートを開けて侵入してきたんだろうけど、それならもう疲労困憊のはず。その上今のこの攻撃だ、中級悪魔の魔力ではそろそろ尽きてしまうはず。
(じゃあ、最大級の火球をお返ししようか、な?)
ボン!
そんなことを考えていたら、突然空から攻撃が飛んでくるのが見えた。私は、ほぼ反射的にその方向へ最大級の火球を放つ。
「ギャーーーー!」
遠くで悪魔の悲鳴が聞こえた。下級悪魔が一体いないと思ったらまさか奇襲してくるとは。悪魔なりに考えたものね。
…残すは、中級悪魔と下級悪魔か。
(折角だし、大きいの一発じゃなくて、小さいのをいっぱい撃とう…その方が痛いだろうし)
楽しい私のティータイムを邪魔した事は忘れない。
「じゃあね、不法侵入者さんたち。火球」
私がさっき放った火球の大きさに驚いて固まっている二体の悪魔に向けて、無数の攻撃を放つ。
ボン!ボン!ボン!ボン!ボン!…
「ア!ッギャ!グゥ!ア!ヴ!」
「〜!〜〜〜!」
一つ一つが小さくても、少なくとも千はある火球が全て当たったら、それはそれは痛いだろう。二体とも悲鳴をあげながら消えていった。
(これで終わり、っと危ない危ない。ゲート閉じ忘れるところだった)
「破壊」
そう言って手を振ると裂け目がバリン!と音を立てて壊れた。
「さ、仕事が終わったし帰ろ。転移」




