鈍感な君の失恋②
机にお盆を置き、リュウの隣に座る。
リュウは僕の肩に頭を預け、深く息を吸って吐いた。
「ごめんって、謝りあった」
「うん」
「出来心って言ってた」
「うん」
「お互いに気持ちを言い合って、さよならした」
「そっか」
さよならの単語でわかった。
2人は別れたのだ。
安心してしまった自分を抑え込みながら、リュウに目をやると、唇を噛んでいた。
震えて、力一杯に。
「好きって気持ちって、簡単に壊れるんだな…」
そんな言葉を彼から聞きたくなかった。
それじゃあ、僕を完全に失恋させてくれよと思った。
君を意識せずにいられるくらい、男友達に戻れるくらいに、ズタズタに失恋させてくれよ。
枯れかけた草からまた新しい芽を出させた君がまたすぐに枯らしてくれよと思った。
壊してくれよと。
僕も君を襲えば失恋するだろうか。
でも、傷ついた君をまた傷つける程、僕は冷たくない。
優しくしたい。
厄介だ。
「簡単ではないだろ。こうやってお前、たくさん泣いてんじゃん」
「確かに…?」
「好きって気持ちは感情だろ?リュウの気持ちは辛かったり、悲しかったりだったんだろ?行動では簡単かもしれないけど、気持ちは簡単じゃねぇよ」
でも、僕には行動が難しい。
どうしたら僕は君を友情の好きになれる?
かっこいい事ばっかり言って、実際に出来ていないのは自分じゃないか。
「あ、でもリュウは単純だから分からないかも」
「おい、かっこいい言葉が台無しだぞっ…」
「いいよ。僕にかっこいいは向いていないし」
「タツはかっこいいぞ?」
「泣き顔で言われてもなぁ〜」
嬉しい。
リュウにそう言われて、嬉しい。
でも、言わないで。
もっともっとカッコつけたくなって、もっともっとって君を求めてしまう。
叶わない恋だって知ってるからこそ、やめてくれ。
「やっぱ、タツの側は楽だな」
笑いながら、リュウは言い出した。
昨日みたいな、笑顔だ。
「そう?明るいの間違いじゃないか?」
「明るいから楽なんじゃないか?よくわからん」
「本人がわからないなら神様だって分からんわ」
「神さま、俺はどうしてタツの側が楽なんですか!」
「なんか照れるからやめろ」
両親の言う、似た者同士だからなのかもしれない。
僕と君の違いは、顔と色んな成績と鈍感な所だけだろうから。
だから楽なのかもしれない。
僕だって、リュウと話すのは楽しいし、好きな事ばかり話せるから楽。
「よっしゃ、眠いから寝る」
「は⁉︎」
「泣き疲れてねみぃの!」
「あ、そ、そうですか…」
急だな。
リュウは保冷剤と布を取り、僕のベットを奪った。
僕がいる反対方向に顔を向け、布団を顔から下にかけた。
「タツ、ありがとな」
「お、おう?」
「タツの家の前に行った時、なんでここなんだろって思ってた」
「ん?」
急に話し出すリュウに戸惑う。
どうして今?
立ち上がり、リュウの顔を見ようも、髪で隠れて見えない。
それどころか、顔を隠すように布団を被った。
「でもさ、趣味が合うのってタツな訳じゃん?価値観も何となく似てるって言うか…」
「うん、」
「話して楽になる人のところに行ったんだなーって思ってさ。なんかはっず」
「いや恥ずいのこっちこっち」
つまり、僕じゃなきゃリュウを癒せなかったってこと?
癒すほどのことにはなってないけれど。
僕じゃなかったら、リュウは辛いままだったとか?
ああだめだ、このたらし。
どんどん好きにさせてくる。
「つまり!」
「はいっ!」
「お前が友達でよかった。タツみたいに軽く相談してくれる人なかなかいないし、みんな相談し始めると重く感じてくるからさ。1番は切り替えの速さだけど」
そりゃイケメン成績優秀野郎が悩み事なんて大事だと思っちゃうしな。
大事ではあったけど、我が家だからこその安心感というものに浸ってるせいで軽くなっただけで…
「しんみりとした感覚、そこまで得意じゃないし」
「初めて知った」
「え、タツも得意じゃないと思ってた」
布団からガバッと上半身を開放し、起き上がるリュウの勢いに負け、めくれた布団に顔を飲み込まれる。
「ごめんごめん」と笑いながら、布団を僕の頭から外し、あははと苦笑いをするリュウを睨みながら口を開く。
「リュウのそう言った空気は得意じゃない。お前にはずっと笑ってほしいし」
「なにそれ恋人っぽい」
「すみませんねぇ、恋人っぽくて」
「怒んな怒んなw」
本音を言ったら昔みたいなノリ。
懐かしい。
もう2年生になって、クラスも違って、リュウの笑顔も久しぶりなのに、こんな話ができるなんて。
「なんか久しぶりだなー」
「リュウが僕と会ってくれなくなったせい」
「うぐ、これからはちゃんとまたゲームの話をしよう!」
「言ったなー?僕はリュウがいない間は喋り相手がいない分ゲームに集中してリュウより強くなってるからな」
「タツって人の心エグるよな…」
また僕のベットに横になり、布団をかぶる。
これは言いすぎたのかな、
いくら解決したとしても、泣いた後。
この軽さがリュウはいいと言っていたけど、調子に乗りすぎた。
ちょんちょんっと布団を人差し指で押してみるも反応無し。
「リュウ?」
反応がない。
やっぱり、言いすぎてしまったようだ。
「その、ごめんな」
それだけ言い、お茶を一杯飲んだ。
敷布団を片付け、1人ゲームをした。
音量は多分リュウに聞こえるぐらい。
黙々とやり続け、気づけば11時になっていた。




