鈍感な君に知られてしまった
雨音からは微かに雷の音も聞こえてくる。
これは少しまずいかもしれない。
風呂掃除を急いで終わらせ、お湯を溜めていく。
すぐにリビングへ向かい、母さんに伝えた。
「母さん、多分雷くる」
「あらまぁ…せっかくだし、龍司くんと入る?」
「そっ、それはダメ!」
「なんだ?雷がどうした?」
「実は辰眞はかみむぐっ、」
母さんのよく回る口を手で塞ぎ、話させないようにする。
だって恥ずかしいじゃ無いか。
高校生にもなって、
「辰眞は雷が大の苦手でね」
「おい父さん!」
しまった、父さんもよく回った…
リュウはポカーンとした顔をした後にクスッと笑った。
恥ずかしい…
雷が苦手になったのも、昔、雷のせいで停電になり、元々暗い空間が嫌いだったため、その事を思い出して嫌になったんだ。
ただ苦手というだけ。
震えるくらい。
いや嘘、結構苦手。
「よしタツ。俺と一緒に入るか!」
「いやいやいや、男とだぞ⁉︎」
「ダメなのか?」
そうだった、こいつほんと、あっちの知識は基礎しか知らないんだ。
同性だと恥じらいもないらしい。
てか、同性での知識はなしだろうな。
元好きな人の裸体など見てしまったら爆発する気がする。
いや上は見たけど下はまずい。
まず僕の体見られれの恥ずかしい。
女々しいかもしれないが、そう思ってしまうんだから仕方ないだろう。
「いやぁ、タツに可愛いところがあったとはなぁ〜!授業中鳴ってた時は大丈夫だったのか?」
「耳栓して、ずっと下みてた」
「タツって真面目だから寝てるなんて思われないもんな…」
風呂中は濡れるし耳栓とか付けれないし、外とかピカピカ光るだろうし。
いつもは絶対に風呂に入っていない。
だが、リュウがいるわけだし、清潔感がないとは思われたくない。
両親だって、流石に入らせたいだろうし。
確かにリュウと入ったら雷の音より心臓の音でかき消されるだろうけど、ダメだ。
まず男2人で風呂って、そんなに我が家の風呂は大きくないし、両親の分のお湯が減る。
あれこれ言い訳に使えないか?
「雷消えるまで、辰眞はリビングにいるか?」
「えっ、うん!そうする!」
「急に元気だな」
「耳栓持ってくる!」
父さんナイスアイディア!
焦りすぎてまったく出てこなかった単純な意見ありがとう!
口滑らせたの父さんだけど!
いつまで雷が鳴るかはわからないけど、明日は休日だし最悪入らなくてもいい。
階段を駆け上がり、自分の部屋にある学校用のバックから耳栓を取り出し、リビングへと戻る。
「ガチで持ってきた」
「持ってこなきゃ怖いだろ」
「あとは目隠しでもすんの?」
「いや、ソファの上で丸くなってクッションで顔隠す」
「その光景写真撮っていい?」
「需要ない。てか、笑う方でしか見ないだろうからダメ」
そういうと、ドアが急に明るくなる。
あ、やばい。
急いで耳栓をつけるも遅い。
ドドンと音が鳴った瞬間、腰が抜けた。
やば、震えてきた。
上手く耳栓がつけられない。
ソファまで行こうにも立ち上がれない。
「ガチでやばいじゃん、タツ、立てる?」
「ごめん、支えて」
「大変ね…停電にならなきゃいいけど」
「フラグにならないか?」
「ごめんなさい、懐中電灯くらいは準備しておくわ」
「停電になる前提じゃないか」
そこの夫婦はイチャイチャせずに助けてくれないかな!
そうイライラしつつもリュウに助けてもらい、耳栓もつけた。
はぁ…
今日僕が助けた側なのに、一瞬にして助けられる側になってしまった。
こういうことがすぐにできるところがイケメンなんだよな。
顔も良くて行動もイケメンとかモテないはずもない。
この鈍感男め。
彼が何か喋っているが何も聞こえない。
手を振ってるし、聞こえてるのか気になっているのか?
まぁいい。
次のが来ないようにクッションで顔を隠し、横になる。
呼吸しずらいのなんか知らない。
怖いのよりマシだ。
1時間経っても鳴り止まないので自室へ行き、カーテンを閉める。
また数時間と経っても鳴り止まない。
3人とも風呂に入ったみたいで、時間も時間で両親はもう寝る準備に入っている。
まだ雷はなっているようで、リュウは僕を心配そうにしている。
スマホのメッセージにリュウから『一緒に入る?』なんて来た。
『恥ずかしいからやめろ』と送り返したが、リュウの表情はガチだ。
『朝入る』と送っても、心配そうにしている猫のスタンプが送られてくる。
ああもう、1日に色々ありすぎて嫌になってきた。
「タツ」
「うわあぁ!急に耳栓取るな!」
「冷める前に行こ?俺外で待ってるからさ」
「朝でいいって…」
「でも、」
まるで犬のようにしょんぼりした顔のせいで、どこかクーンと声が聞こえてくる。
完全な幻聴だが。
しかも顔がいいせいで折れそうになる。
折れるな、僕の意思…
「なんだよ、僕と一緒に入りたいのが本心なのか?」
「え、うん」
「何その即答」
え、なに、こいつ、え?
一瞬大変な勘違いしそうになった。
あんなことがあって早々ないため絶対に違うが。
いやこれは絶対面白がってる。
絶対に!
「恥ずかしがる人の姿って見てみたくならない?」
「変態か何かかな」
「タツの可愛いところ初めて見たんだから、もっと見てみたいっていうかー、」
「性格悪い!あと耳栓返せ!」
リュウの持っている耳栓に手を伸ばすと雷の音が聞こえてきた。
すぐに力が抜け、体が震える。
リュウの体の上に乗っかっている体制になっているが、悪く思わないでほしい。
全部リュウのせいなんだから。
「その、ごめん…」
「いいからっ、耳栓返せ…」
「うん」
なんで僕が涙見せなきゃいけないんだよ。
あーもう、今日はたくさんカッコつけたのに、台無しじゃないか。
頑張って腕に力を入れ、リュウから離れる。
今日は嫌な日だ。
メッセージに『ごめんね、リュウ』と送られてきた。
僕はそれを既読無視し、タンスから布団と敷布団を取り、無言で敷いて布団を被った。
仕方ないからベットは貸してやる!




