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鋭い凡人と鈍い美形と  作者: 雨露 甘雨
14/14

____なクラスメイトと弁当

昼休み


「寺本くん!一緒に食わないか?」

「えーっと、?」

「いつメンは誘ってない。2人で!」


朝話しかけられて、昼休みに一緒に食おうなんて誘ってくるとは思わなかった。

いつも通り1人で食べようと思っていたのに。

別に嫌なわけではないが、初めてで少し戸惑ってしまう。


「僕と食べてもいい事なんてないけど…」

「あぁ、別にいいよ。恋バナしたいから、外のベンチでもいいか?」


ほぼ強制的に弁当水筒を持たされ、強く腕を引っ張られ、教室を出る。

すると、ドアの近くにはリュウがいた。

驚いた様子でこちらをみている。

そりゃそうだ、僕が学校で誰かと話すことなんて、ましてやこんな強制的に昼休み教室の外にいるなんて初めてなのだから。


「タツ、一緒に、」

「モテ男の龍司クンじゃん!うちのクラスに用?誰?呼んであげようか?」

「タツ、まくんと…食べたいなと、」


今まで一緒に食べたいなんて言ってきたことはなかった。

リュウは木下さんとかは知らないが、同じクラスの友達の人だったりと僕とじゃない、他の人と食べていたから。

もしかして、昨日一昨日のことがあって僕を誘いにきた?


「2人とも接点あったの?」

「うん。趣味があって」

「辰眞くんは、俺の友達で、放課後は、」

「ごめん龍司クン。2人で食べる事になってるんだ。他の子誘って。それじゃ」


戸惑っているリュウを佐野くんは言葉を被せるように言い放つ。

少し違和感を覚えるくらいに。

そんなに僕と弁当が食べたいのかと少し嬉しくもなったが、リュウのことも心配になる。

しかし、さっきよりも強い力で腕を引っ張られ、靴箱へとほぼ強制的に向かわされた。

流石に階段を降りている時はゆっくりだったけど。

リュウはあのままで平気だったのかと心配するも、佐野くんの力が強くて抵抗すらできない。

ごめんな、リュウ。

靴を履き、運動場近くのベンチに座る。

ほとんどの生徒が教室か中庭、先生に許可さえ貰えばいける屋上で食べるため、ここはあまり人が来ない。


「ごめん、恋相談したいがために誘い勝手に断っちゃって」

「いや、平気」


リュウが平気かはわからないけど。

実は気まずかったりするのかもしれない。

木下さんはたしかリュウと同じクラスで、そのことをクラス全員知っているし、なんなら全校生徒が知っている。

教室にいるのも嫌になっていたのかもしれない。


「辰眞くんって、呼んでもいい?」

「いいけど…」


少し怒ったような表情から爽やかな顔になった。

それからまたグイッと顔を近づけられ、こちらを見る。

キリッとした目に圧をなんとなく覚える。

生まれつき目つきが悪いのかもしれないが、そこもあっていい顔なのかもしれない。

少し羨ましい。


「辰眞くんと龍司クンってあんまり絡みみないけど、どんなこと話してるんだ?」

「ゲームの話だよ」


ポケットからスマホを取り出し、アプリを指差す。

よく知られているゲームのはずだし、違和感はないはず。

っていうか、事実だし。

どうして嘘をついている感覚を覚えたのかは知らない。


「ふぅん。あ、俺弁当自分で作ってるんだけど、一口食べてみてよ。ほら、あーん」


いつの間にか開けた弁当箱を開け、卵焼きを僕の唇にくっつけてくる。

なんだかカップルがするようなことをしているみたいだ。

手作り弁当をあーんだなんて本当にカップルのするような事だな…

口を開け、卵焼きを咥えると、お箸は僕の口から退いた。


「どう?」

「うま、しょうゆがいい感じ」


いいバランスの卵焼きだ。

食レポが得意なわけではないが、料理上手なんだなとはすぐにわかる。

うん、本当にうまい。

佐野くんは花が咲いているかのようにニコニコになり、ニヒヒと笑っている。


「たしか甘いの苦手だろ?我が家甘い砂糖派だからよく砂糖入れろ入れろって姉貴がうるさいんだよな」

「よく知ってるな」


こいつ、ほんとに僕のこと好きとかあるか?

いや、似ているだけらしいし。

そもそも僕に人を好きにさせるスキルはないし。

でも、耳が赤い。

嬉しさのせいかもしれないが、口元もすごく緩んで、


「辰眞くんの弁当は誰が?」

「母さんが」

「一口。あー」


口を開け、目を閉じている。

彼にとってあーんは日常茶飯なのかもしれない。

うんきっとそう。

あんまり聞いたことないけど。

どれも渡したくないが、さっき卵焼きをもらってしまったため、渋々唐揚げをお箸で取り、彼の口に入れる。

モグモグと箸ごと食われ、急いで取る。


「うま!この味が好み?」

「うん。濃すぎるのも苦手だから、ちょっと薄めがね」

「辰眞くんの好きな食べ物は?」


考えたこともなかった。

母さんが作るものは全部美味しいから。

好き嫌いは激しい方ではないため、基本的にはなんでも食べる。

嫌いな食べ物ならあるけれど、好きなもの…


「えっ、れんこんとか、ごぼうとか?」

「珍しい。明日その食材使って作ってみるから、食って感想聞かせてよ」


もしかして僕胃袋捕まえられそう?

捕まえてどうするつもり?

いや、好きな人を落とすために料理の腕を上げたい、とかだ。

自意識過剰、だと思う。


「佐野くんは何が好きなの?」

「俺はきゅうり。マヨと一緒に」

「あぁ。あれは確かにうまい」

「あと卵と、辰眞くん」


卵か。

あの卵焼きは本当に自信作だったんだろうな。

それを僕に食べさせてくれたなんて優し、

彼は僕の名前を呼んだ。

顔を赤くして、呼んだ。

確かに呼んだ。


「あの、」

「ごめん。今日調子に乗りすぎた。初めて話した相手に、そんなこと言われてもって思ったかもしれないけど、本気だから」


本当に急すぎる。

頭の整理が追いつかない。

なんとなくだけど、話のテンポが早かったのはそれか?

顔つきと違って女々しく見えたのはそれか?

さっき違和感を持ったやつは、僕に友達がいると知って戸惑って?

いやそれは失礼だろ。

でも、僕のことが好き?

僕って好かれる要素あったのか?

いやまずは彼の気持ちは、

あれは自意識過剰とかではなく、本当に?


「辰眞くんが今日、なんだか落ち込んでるように見えて、話しかけるチャンスだと思ったら、勢い余って」

「でも僕、好きな人が、」


あやべ、これさっき嘘ついてたんだった。

すぐに言葉を飲んだが、もう遅い。

でも仕方ないじゃないか。

男が好きっていう人、周りにいなかったんだから。


「諦めない。誰であろうと、振り向かせる。だからさ、友達からでいい。俺と一緒に過ごしてくれないか?」


ドッキリとかではないよな?

周りを見渡すも誰もいない。

僕も時々していた表情を、彼はしている。

本当に急すぎて本当に頭が追いついていない。

かもしれないとかは思っていたが、本当に、急で、


「あと、好きな人誰か聞いていい?」

「ひっ、秘密!どうせ叶わないし、」

「じゃあ、振り向かせられる確率は高いね」


君はどうしてそんなにグイグイ行けるんだ?

僕もそうしたらリュウを振り向けさせれたのか?

この状況でリュウのことを考えるのは間違っているのかもしれない。

でも、考え出したら止まらなくて。

嫌になってもリュウが頭から離れない。


「辰眞くんは同性はおかしいだろって言わないんだね」

「えっ、まぁ…」

「もしかして同性だったりする?あぁ、あの龍司クンとか」


龍司という名前を聞いた瞬間、一度だけ心臓が絞られたような感覚になった。

一瞬だけだけど、それは佐野くんの目には見つかってしまって。


「そっか、龍司クンか。辰眞くんさ、隠すの得意だけどこうやって攻められたらボロ出すんだ。俺は気づくよ。1年も見てきたんだから」


ボロが?

彼は観察力が優れているのかもしれない。

好きな人だからよく見たいという気持ちはわかるけど、僕自身できるだけ上手く隠そうとした。

でも出来ていなかった。

凄いことだと思う。

いや実はわかりやすかったりするのか?

モグモグと弁当を食べながらまた佐野くんは話しかけてくる。


「あのモテ男、男も無意識落とすなんて卑怯だ」

「卑怯って…僕は趣味のゲームの話をよくするようになってからだし…」

「顔なら俺もいいでしょ?それから好きになってよ。俺にして」


目線だけこちらに向いている。

でも彼の手は震えていた。

きっと緊張しているんだ。

僕と違って、はっきり好きと伝えている。

堂々と、好きを。

確率は低いのにちゃんと伝えている。

僕みたいに怯えて、リュウの鈍感さに甘えて軽く伝え続けた言葉ではない。


「まぁいいさ。考えといてよ。まずは友達からよろしくな」


箸を置いて手を出してくる。

握手を求めている手だ。

だから僕も箸を置いて彼の手を握る。

僕よりも大きな手だけど、まだ震えている。

そこにすごいと感じた。


「えっと、佐野くんはすごいね」

「行動力があるだけ。本人に振り向かれなければ意味がない」

「はは、それでもすごいよ」


お互い弁当を食べ終わると軽く自己紹介のような会話をした。

僕はゲームの話しかできなかったけど、佐野くんは親身に聞いてくれて。

彼と話しをするのは、とても楽しい。

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