鈍感な君の恋
放課後僕たちは、教室で趣味の話をする。
主にゲームの話。
その時間は僕にとって、誰よりも幸せだと感じている。
「タツ?」
「ん?」
「ボーッとしてたけど、大丈夫か?」
「リュウに見惚れてた」
「なんだそれ」
笑う彼の顔は、誰よりも美しい。
きっと僕の言ったことを冗談だと思っているから。
こんなにハッキリ言っているのに、彼は鈍感すぎる。
彼が鈍感だからこそ、気持ちを伝えられる。
「タツ、ここ教えてよ」
「あぁ、これはこのキャラを使ったらやりやすいよ」
「なるほど?」
好きなことに一途で
「できた!」
「おめでとう」
喜びの顔は誰にも見せたくないくらい綺麗で
「タツ、ありがとう!」
すぐに人を惹きつけてしまう。
それに気づかない鈍感。
全てに僕は魅了された。
「リュウ、僕さ、このキャラ引こうと思ってるんだけど、次の復刻、多分…」
「タツの推しキャラの衣装ガチャがくると」
「どーしよう…」
「ここは運に任せて引こう。どっちも」
「だよな」
そんな彼が僕と関わりだしたのは、高1の夏休み。
ゲームのコラボイベントで出会ってからこうして放課後遊んでいる。
僕はどこにでもいる凡人で、彼とは不釣り合いだけど、ゲームの世界だけなら僕は彼の隣にいることができる。
叶わない恋だとしても、僕は彼とゲームの世界だけでも一緒にいたい。
早く失恋した方がいいなんてわかってる。
でも、今はこの時間を大切にしたい。
「タツ、あのさ、」
「ん?」
「俺さ、美人の木下さんに告白されたんだ」
「へぇ、それで、返事は?」
「それが、返事を考えてる間に逃げられて…どうしたらいい?」
そんな相談反則だ。
独占欲が湧いてくる。
リュウは誰にでも優しくするから、誰にでも好かれる。
女子にモテまくっても、憎めない性格をしているから、友達なんてたくさんいる。
それなのに、僕に相談するなんて。
「リュウはまず、なんて返事したかったの?」
「よく分からないから、少しだけならって」
「返事が決まってるなら、その、木下さんっていう女子に返事を言いに行きなよ」
「そっか、クラス知ってるし、それが1番かも!ありがとう!タツ!」
これは失恋への第一歩だ。
大丈夫。
リュウがモテまくるなんていつもの事じゃないか。
今までこうならなかった事自体、おかしな事だったんだ。
僕はリュウの鈍感なところに甘えていただけ。
良い機会だ。
失恋しても、きっとゲームをするこの放課後は僕と一緒に、
本当か?
本当にリュウは放課後一緒にいてくれるか?
木下さんっていう子が頻繁にデートに誘ったら?
リュウがその子との時間を大切にしたいと言ったら?
いや、リュウとの時間が少なくなる。
それだけで、失恋した後の心は傷つかないじゃないか。
「タツ?」
「あぁ、なんでもないよ。あの鈍感なリュウがやっと告白されたことに気づくなんてね」
「そ、そりゃ気づくよ!鈍感でもないし!」
「モテまくってる自覚ないくせに」
「俺がモテてる姿想像できない」
ほら、こう言ってやってもわかってない。
こうして話すことも少なくなるのかな。
全部消えてしまうのかな。
いや、消えはしないか。
思い出として残るだけ。
「リュウ、彼女ができても僕との時間少しは作ってよね」
おい待って、そう言うつもりはなかったんだ。
僕の口、止まってくれよ。
急に、急に、どうして
ちゃんとさっきまで平気だったじゃないか。
「当たり前だろ?タツは俺の大事な友達なんだから!」
「そう言ってくれて、嬉しいよ」
さっきまでちゃんと言い訳を用意しておいたのに、自分を制御できなかった。
頭のどこかで思っていたことが口に出てしまった。
これじゃ、自分の心を傷つけているだけじゃないか。
ああもう、恋心とは厄介だ。
そして、リュウとの時間は本当に少なくなってしまった。
今まであったはずの時間が、日々消えて行き、最後に話した日は1週間前となった。
ゲームはオンラインになっているが、すぐにオフラインになってしまう。
デイリーだけやって、終わってしまう。
怖くなった。
ゲームだけは僕と離れててもやると思っていたから。
あと少しで夏休み。
リュウと仲良くなったあのイベントは今年もあるらしい。
失った恋を抱えながら、僕はイベントへ向かった。




