まっ、俺くらいになると異世界憑依してもバレないかな
脳死で書いたんで、脳死で読んでください
目が覚めるとそこは見知らぬ天井が見えた。
そして、体から感じる感覚をもとに天蓋付きの大きなベッドに寝転がっているのを瞬時に理解する。
少し視線を動かすと、ベッドの横には燕尾服だったかタキシードだったか良くわからん服を着ているジジイが立っていた。
そのジジイは、俺が目を覚ました事に気付くと声をかけてきた。
「おはようございますリチャード様」
誰だよリチャード。
そう思ったが、多分俺に対して言っているので俺がリチャードなのだろう。
そして、スーパー理解力お兄さんである俺はすぐに自分に何が起きたのかを理解してしまった。
きっと、スーパー理解力イケメンお兄さんである俺は、異世界憑依というものを体験してしまったのだ。
おはようと言われどうしようか迷ったが、答えてみる。
「おはようセバスチャン」
フッ、決まった。
なるべくイケボで、執事っぽいジジイに朝の挨拶を返す。
明らかに執事な見た目なのだ、どうせ名前もセバスチャンだろう。
「...ヨーゼフでございます」
...違った。
まぁいい。セバスチャンもヨーゼフどっちも外国人っぽい名前だ。実質同じ。
「そ、そうだったな。寝ぼけていた」
完璧なフォロー、流石は俺。
ヨーゼフと名乗るジジイは、まだ少し怪訝な目を向けて来るが、俺の完璧なフォローの前にすぐにその様子を消す。
俺は上体を起こし、部屋を見回してみる。
なんてこったい、スーパー理解力イケメンお金持ちお兄さんである俺ですら驚く部屋の広さじゃないか。
「お着替えを致しますので、そちらが終わり次第食堂で昼食となります」
ジジイの言葉を聴いて、俺はショックを覚える。
朝食なくて超ショック。
フッ、流石はスーパー理解力イケメンお金持ちギャグセンスお兄さんの俺だ。
自分のギャグセンスに感動しながら、クックックッと小さく笑っていると、またしてもジジイが怪訝な目で俺を見てくる。
ジジイは小さな溜め息を吐くと部屋を出ていった。
その後、ジジイと入れ替わりで三名のメイド服を着た女が入ってきて、俺の着替えをし始める。
手際よく行われた着替えはものの数分で終わり、メイドに連れられ俺も部屋を出る。
少し歩き、とある部屋の前まで連れられた。
さっきのジジイが言っていた事から、恐らく食堂だろう。
自分の理解力が高すぎて怖くなってしまう。
メイドによって扉が開かれ、誘われるように食堂の中へと脚を運ぶ。
中にはものすごく長い、長方形型のテーブルとそれに合わせて等間隔に並んだ椅子が配置されている。
テーブルの上には灯台と料理が並べられていた。
しかし、俺の目はテーブルの上に並べられた料理とは別のものを捕捉していた。
銀色の煌びやかな長髪に、切れ長な眼。
薄い水色の瞳に、きめ細やかな肌。
シュッとした輪郭に、シャープな鼻先。
少し控えめな胸に、服の上からでもわかる細い腰。
アルティメットハンサムボーイである俺ですら息を飲む美人が、並べられた一席に座っていた。
「随分と遅いご起床ねリチャード」
...誰だよリチャード。
あっ、俺でした。
自分がリチャードに憑依していたことも一瞬忘れるくらいに彼女に目を奪われてしまった。
しかし、ここで新たな問題が発覚したことに気付いてしまう。
それは、
『彼女は一体リチャードにとってなんなのか?』
姉?妹?はたまた母親?
婚約者という可能性もあるだろうし、急に現れた不審者である可能性だってゼロではない。
流石のアルティメットハンサムジーニアスボーイである俺でも、ヒントが少なすぎて迷宮入りだ。
仕方ない、完璧な受け流し術を披露するしかないようだ。
「...........」スッ、パクパク
彼女の言葉を無視し席へと移動。
そのままおもむろに飯を食べる。
完璧だ...!完璧すぎて震えてしまう!
彼女も俺の完璧な受け流し術を目の当たりにし、驚愕している。
驚いた顔もキュートだね。
そのまま完璧な受け流し術を続け、飯を食い終わると席を立ち、食堂を後にした。
俺が飯を食べている間、彼女は箸が進んでいないようだった。
箸ではなく、ナイフとフォークか...フッ。
先程通った道を辿るようにしてベッドのあった部屋に戻ってくる。
すると、すぐに扉がノックされる。
入る許可をすると、先程のジジイが入ってきた。
「昼食がお済みとのことで参りました。本日のこの後の予定ですが、いかがなさいますか?」
はて、困ってしまった。
いくらハイパー適応力好青年である俺でも、リチャードの情報が少なすぎて普段何をしているのかわからない。
そもそも、リチャードはここの当主なのか跡継ぎなのかそれ以外なのかすら不明だ。
はてさてどう答えたものか。
ハッ、
ハイパー適応力発想力好青年の俺は思い付いてしまった。
「寝る」
こうして、俺は完璧にリチャードを演じきってみせた。
今日会った人々は一切の違和感もなく俺のことをリチャードだと思っていることだろう。
また明日もこの調子でリチャードを演じてみせようではないか。
まっ、俺くらいになると異世界憑依してもバレないかな。
_____
〈ヨーゼフ視点〉
お昼になり、日も天辺まで登った刻。
未だに起きる様子の無い我が家の主を起こしにお部屋まで参りました。
コンコン、っとノックをし少し待ちましたが、主の返事は返ってきません。
まだ眠っておられるのでしょう。
いつまでも寝かせておくわけにもいかないので、扉を開け中に入ります。
部屋の中に入ると、大きな天蓋付きのベッドがすぐに目に入り、そのベッドで眠っている方をすぐに発見。
ベッドの横まで脚を運び、主を起こそうとすると、主の目が開いたのが見えました。
少しの沈黙の後、
「おはようございますリチャード様」
とても、おはようの時間ではないのだが、寝起きの挨拶はこれがもっとも適している。
私の寝起きの挨拶の少し後、主が口を開きました。
「おはようセバスチャン」
.........。
......。
...。
我が主は頭がどうかしてしまったのでしょうか。
少し作ったかのような声で話し始めたかと思えば、私のことをセバスチャンという謎の人名で呼び出すではありませんか。
「...ヨーゼフでございます」
私は呆れた声で答える。
本来主に対してこのような態度は執事失格なのだが、このような態度をせずにはいられない。
「そ、そうだったな。寝ぼけていた」
私はいつも以上に様子のおかしい主に怪訝な目を向けますが、一旦無視することとしました。
それよりも、今はせねばならぬ事がございます。
流石に我が主も今日がなんの日かまでは覚えていらっしゃるでしょう。
主が上体を起こしたのを確認し言葉を続けます。
「お着替えを致しますので、そちらが終わり次第食堂で昼食となります」
そう言って主に次の予定を伝える。
すると突然主が、クックックッと笑い始めました。
やはり、今日の主は一段と様子がおかしい。
こんな様子でエレイン様とのお食事は大丈夫でしょうか。
私は、はぁ、と小さく溜め息を吐いてしまいますが、すぐに着替えを済ませなければエレイン様にご迷惑がかかってしまうため、私は部屋を出てメイドと交代する。
その後しばらくすると食事が終わったとメイドから報告が入る。
はて?少し予定よりも早いように感じますがどうなさったのでしょう。
何か問題が起きたのかメイドに尋ねてみますが、「特に問題"は"起きてない」とのこと。
問題がないのでしたら構わないでしょう。
主が食事後部屋に戻られたと聴いたので、この後の予定をどうなさるのかお話を尋ねに部屋へ参ります。
部屋の前に辿り着きノックをすると、すぐに入室の許可の声が聞こえてきます。
「昼食がお済みとのことで参りました。本日のこの後の予定ですが、いかがなさいますか?」
私がそのように尋ねると、主は少し考えるような仕草を取りました。
しばらく逡巡したのち、何かを思い付いたような顔をなさる。
そして主は自信満々に発される。
「寝る」
.........???
何を言っているのか理解が出来なかった。
主が起きてから、まだ1時間と少ししか経っていない。
だと言うのに、今は正に目の前でベッドに倒れた主は、すでに眠りについていた。
「はっや」
思わず声に出てしまった。
いつもどこか様子のおかしい主だが、今日は一段と、いや二段三段と様子がおかしい。
それが何故なのかはわからない。
しかし、絶対に何かがある。
いつもよりも様子のおかしさに磨きのかかった我が主を見ながら、私は大きな溜め息を吐くのでした。
_____
〈エレイン視点〉
今日は婚約者であるリチャードとの昼食会の予定のため、リチャードの家まで馬車を走らせている。
私の婚約者であるリチャードは、時々変な行動をする男ではあるが無駄に要領が良く、結構みんなから慕われる人物である。
私自身もリチャードのことを気に入っているし、リチャードの方も私のことを大事にしてくれている。
時折する変な行動も、彼の愛嬌のように感じれるのだから不思議なものだ。
日が天辺まで登った刻。
私はリチャードの屋敷に着いた。
屋敷に着くなり、食堂へと案内される。
すると、メイドの一人が申し訳なさげに私へと声をかけてくる。
「申し訳ございませんエレイン様。実はリチャード様なのですが、先程目を覚まされたようでして。準備に少しお時間をいただきたいのです」
メイドの話を聞き少し呆れる。
まさか婚約者との食事会の日に寝坊するとは。
リチャードは普段から起きる時間は遅く、誰かに起こされるのも嫌うため寝坊気味らしいのだが、まさか今日も寝坊するとは。
これは来たときに嫌味の1つでも言ってやらんとな。
人が少ないリチャードの屋敷では昼食会の準備のためリチャードを起こす人員が居なかったとのこと。
リチャード本人が居ないのであれば昼食会も何もないと思わなくもないが、まさか寝坊するとは思わなかったようだ。
そしてしばらくすると、食堂の扉が開く。
扉が開いたのち、リチャードが食堂へと入ってきた。
リチャードは少し食堂をみた後、私へと視線を向ける。
私はその視線に少し違和感を抱いたが、リチャードが来たら嫌味でも言ってやるつもりだったため、言ってやる。
「随分と遅いご起床ねリチャード」
リチャードはその言葉を聴いて、少し呆けている。
寝起きだと言っていたが、そんなにも寝起きなのだろうか。
そんな風に考えていると、リチャードが動き出す。
「...........」スッ、パクパク
......えっ?無視?!
理解が出来なかった。
私の予想では、謝るなり言い返してくるなり、何らかのアクションはあると思っていた。
それになによりも、普通に昼食を食べているリチャードの様子を見て、脳がバグりそうだった。
え?これ私がおかしい?
私普通だよね?え?は?
そんな風に私が困惑している間に、あろうことかリチャードは昼食を食べ終わってしまっていた。
そして、そのまま私をおいて食堂を後にする。
しばらく私は放心していた。
リチャードが出ていって少しした後、メイドが食堂に入ってくる。
メイドは放心している私と、その前にある手のつけられていない料理達を見て、何かあったのかを尋ねてきた。
その問いに我に返った私は、
「いえ、何も問題はなかったわ。...問題は__」
と答えるしか出来なかった。
私は帰りの馬車のなかで考えにふける。
以前からリチャードにはおかしな行動は見られた。
しかし、今日のは特段酷かった。
絶対に何かあると確信している私がいる。
その何かは今はわからない。
私は決めた。
また明日リチャードの家へ訪れよう。
そして、この違和感を必ず解き明かしてみせる。
そう心に決め、私は帰路へと着いたのだった。




