冤罪による断罪? ならば決闘で! 女の闘い方をお教えしますわ
コメディ要素よりザマア要素が強くなっておりますので、決闘が始まるまでの前半部分は少し重いです。後半の決闘部分は怒涛ですが、少しエグい表現もありますのでご注意下さい。
カインは取巻きのアベル、ベルーガと寛いでいた。
思いはすでに今日の決闘後に向いている。
「カイン王子、上手くいきましたね」
「なあに、プライドの高い上級貴族ほどあんなものだ」
カインは一週間前の断罪劇を思い出し、ほくそ笑んだ。
「明らかな冤罪による断罪であっても相手の反論を踏みにじり「貴族のくせに言い訳をするのか」「プライドの無い貴族はこれだから」となじっておいて「非を認めろ」「土下座しろ」と煽れば簡単なもんだったろう。
相手は冤罪なので身に覚えがないから認める訳もない。
そこに部外者のフリをしたおまえ達二人が非を認めない事をなじる」
「侯爵家の令嬢であるボニーは我慢ができずにホント簡単に手袋を投げて来ましたね」
「ああ。女ってのは感情的で愚かだよな」
貴族の子女は代理人を立てての決闘が認められているので女性でも簡単に決闘が申し込める。代理人が死亡する事はあっても決闘の結果として相手の死を求める事は禁じられているため、決闘に踏み切るハードルが低い事もある。
カイン達はこれを利用して決闘を申し込ませ、勝利する事で目をつけた女性を凌辱していた。
「おまえ達は誰を代理人にしたんだ?」
「私はガーランドというヤツです。孤児院出身ですがなかなか腕が立つヤツで。これを機に恩を売って手駒にしようかなと思ってるんですよ」
「孤児院出身なら後ろ盾がないからな。いざという時は簡単に切り捨てられると」
「汚れ仕事を任せるには丁度いいでしょう?」
「おまえは? アベル」
「誰でもよかったんですが、第二隊副長のギリアムさんにお願いしました。一方的に甚振るんですから、少しはクリーンな印象をつけないとね」
「いろいろと気を使わせてすまんな」
「王子は?」
「爺やだよ。たまには暴れさせてやらんとな」
「鬼のヴォーダン様ですか? 相手が気の毒ですよ」
「その相手は?」
「誰だろうなぁ? パーカー侯爵家の息のかかった第一隊や第三隊はいないし」
「なぜか三日前に出動命令が出ましたからねえ」
「他の隊の者も、王子に歯向かって騎士としてのキャリアを棒に振るバカはいませんよ」
「いつものように本人が出て来ざるを得ず」
「泣いて命乞いをすると」
「その後はいつものように」
「どんな反応してくれますかね?」
「目に涙をためて屈辱に耐えようとするか、嫌がって泣きわめくか……」
「…お主もワルよのう」
「いえいえ、王子様ほどでは」
代理人を選ぶ期間が一週間あるため、王子サイドは裏工作がし放題であったのだ。
「王子、そろそろ会場に向かいますか」
「うむ」
----------------------
決闘場は十メートルほどの円形で一メートルほどの高さの壁に囲われており、戦士は両サイドから入場するようになっている。
その周りを観客席がコロシアム状に取り囲み、名義人席は入場口の上部に迫り出す様に設置されている。
カイン達が自サイドの名義人席に入ると、対面の名義人席を窺った。
カイン達の意に反して、そこにはボニーが座っている。
「王子、変ですね。ボニーが名義人席にいますよ?」
「妙だな。アイツの代理人を引き受ける騎士はいないと思ったが……」
「まあ、我々の息のかかっていない騎士で名のある騎士は王都にはおりません。苦し紛れに声をかけた有象無象でしょう」
「まあそうであろうな。気にする事もあるまい」
「誰か知りませんが、気の毒に」
カイン達は勝利を疑わず嘲弄の笑みを浮かべている。
いま決戦のベルが鳴る。
“これよりパーカー侯爵家令嬢ボニー嬢の名誉回復をかけ、カイン王子、侍従長御子息アベル殿、ローダン辺境伯家御子息ベルーガ殿の決闘を始めます!
決闘を申し込まれた方は三名なので、ベルーガ殿、アベル殿、カイン王子の順に決闘を実施します。
では、両者代理人。入場を!”
アナウンスを受け、ベルーガの代理人・ガーランドが入場した。剣を高々と掲げ勝利をアピール。人相は少し悪いが、それすら強さを彷彿させる佇まいである。
片や、ボニーの代理人は白髪の交じり始めた見窄らしい女性だった。こけた頬や皺交じりの皮膚、粗末な服といった姿形の総てが生活の苦しさを物語っている。
「ガーランドや…」
そう言うと、その女性の両の目から涙が溢れる。
しかしその女性を見てガーランドが驚愕する。
「ば、ババア? 何してんだ、こんなところで!?
ここは決闘場だぞ、早く出て行けよ。危ねえぞ!」
「あたしがおまえの相手だよ…」
その女性はガーランドが育った孤児院の院長、ウルスラであった。
「何言ってんだよ、ババアが俺の相手になるわけねえだろうが! ふざけてないで早く出て行けって!!」
しかしウルスラは静かに首を振った。
「お嬢さんの話を伺って、あたしが志願したんだよ」
「はあ?」
「なんでこんな決闘の代理人なんて引き受けたんだい?」
「辺境伯の御子息に頼まれたからだよ。
孤児院出身で後ろ盾のないオイラにはなかなか出世の糸口なんかねえからな」
「おまえは…おまえは…なんのために騎士になったんだい。女性を貶める様なことに加担するなんて……」
「こんなことでもなければ出世なんてできねえんだ!」
「そんなに出世がしたかったのかい…」
「ああ、したいね」
「分かった。もう止めないよ。さあ、その剣であたしを斬っておくれ」
「な!!」
「あたしがおまえの出世の踏み台になってあげるよ。斬りなさい」
「そんな真似できるわけないだろ!」
「あたしはね、見かけは悪くて誤解されやすいけど、性根は真っ直ぐなおまえが可愛くて仕方なかったんだ。
騎士団に入ったと聞いた時は密かに自慢だったんだ。
おまえならきっと立派な騎士様になってくれると陰ながら思っていたんだよ」
「ああ、だからオイラは…」
「なのにおまえは騎士としての誇りより立身出世に目が眩んだんだね。あたしはそんな風になったおまえを見たくなかった……
もうこれ以上そんなおまえを見ずに済むよう殺しておくれ。
それにあたしの命がおまえの踏み台になるなら本望だよ。
おまえの手で、苦しまないよう一思いにばっさりとやっておくれ!」
「馬鹿言うなよ…オイラが、オイラが出世したかったのはババアに喜んでもらうためなんだ……
孤児のオイラを本当の親のように育ててくれたあんたに、立派になったオイラを見てもらいたいからなんだよ」
「…ガーランド」
「……そして、そして…おっかさん、オイラこんなに立派になったよって言いたいんだよ。
あんたがいないなら、オイラは誰に自慢するってんだよ!
誰におっかさんて言えばいいんだよ!
オイラのおっかさんはあんただけなんだよ!」
ガーランドは嗚咽交じりに絶叫した。
「おまえ…このあたしを母と呼んでくれるのかい?」
「おっかさん!!!」
「ガーランド!」
二人は抱き合って泣き始めた。
観客席からももらい泣きが聞こえる。
「よ、高○屋!」なんて掛け声もかかる。
「ベルーガ様、オイラはおっかさんをこの手にかけるなんてできねえ。
チャンスをくれた恩を仇で返すことになり申しわけないが許してくれ。この勝負、オイラの負けだ」
そう言い捨て、ウルスラをおぶって退場するガーランドに万雷の拍手が送られた。
“……え〜、意外な幕切れとなりましたが、この一戦はボニー嬢の勝利とします。
ここで十分間の休憩を取り、勝者インタビューを。
ボニー様、おめでとうございます”
“ありがとうございます。これも偏にウルスラ様の勇気とガーランド様の騎士としての矜持の賜物です。
侯爵家はウルスラ様の勇気に、そしてその愛と教育に敬意を表し孤児院への寄付の増額をここにお約束します。
また騎士としての矜持をお忘れにならなかったガーランド様には第一隊への推薦をさせていただきます”
“敵であったガーランド殿にも情けをかけるとは。さすがボニー様です”
“将来有望な方には当然の投資ですわ”
“ところで、先程から気になっているのですがそれは何ですか?葉巻の火口を切るシガーカッターに似てますが、少し穴が大きいようですが”
“これは「ギロチンチン」と申しまして、シガーカッターならぬ男根カッターですわ。「真夜中のサーカス」の方にお借りしましたの”
“「真夜中のサーカス」と言うと、あの…アレをちょん切って女性になられた皆さんの?”
“ええ。男の自分と訣別された時の記念に渡された品だそうです”
“もしかして、それでちょーんと?”
“ちょーんと。よく切れますのよ、このように”
何かをスパスパ切り落とす。
“サラミソーセージですか、それは。見事な切れ味ですね”
“ええ。女の私でもこんなに簡単に使えますのよ”
そう言うとボニーはカイン達の席に目を向け、もう一度ギロチンチンをカシャカシャと鳴らして見せた。
その意味するところは明白であった。
ベルーガは思わず股間を押さえて震える。
「お、王子ぃ…」
「ベルーガ、大丈夫だから! この後の二戦で私と王子が勝利しておまえのソレを守ってやるから!」
「本当だな!信じてるからな!!」
“これより次の決闘を始めます。両者代理人、入場してください”
アナウンスを受けてアベルの代理人として入場してきたのは第二騎士隊副長のギリアムである。
ギリアムは騎士道を重んじ不正を許せぬ性格で知られている。それだけに先程のような決闘は許せるものではなかった。鬼の形相でボニーを睨みつけている。
「さあ、私の相手は誰だ!! 剣のサビにしてくれる、出てこい!」
「おとうさん!」
「エ…エミリー?」
ボニー側の入場口から現れたのは五歳になったばかりのギリアムの娘、エミリーであった。
「エミリー、こんなところで何をしているんだ!?
危ないから出て行くんだ!」
「おとうさんの嘘つき! 今度のお休みにはエミリーと遊んでくれるってお約束したのに!」
「いや、お父さんはお仕事でね……」
「こんなのがおとうさんのお仕事なの! 女の子をいじめるのがおとうさんのお仕事なの!?
そんなおとうさんなんて嫌い!」
「いや、あのお姉ちゃんは悪い事をしたからちょっと懲らしめるだけだよ。悪い事をした人を懲らしめて反省してもらうのもお父さんのお仕事なんだよ」
「違うもん。お姉ちゃんは何もしてないよ! みんなで聞いてたから知ってるもん」
「みんなで聞いてた? 何をだ?」
「お聞かせいたしますわ、ギリアム様。皆様がおいでになる前、この会話が流れておりましたの」
ボニーが合図を出すと、控え室での王子達の会話が流れる。
曰く、三人がかりで難癖をつけて冤罪でボニーを追い込み決闘に持ち込んだ事。
曰く、まともな決闘の代理人を立てられないように手配していた事。
曰く、相手が何もできないようにして甚振り、代償として凌辱していた事。
しかも初めてではないらしい事……
会話が進むにつれギリアムの顔が怒りに染まる。
「アベル殿、これは如何なる事か!!!」
「い、いやこれは…」
「このような恥知らずの振る舞いに加担はできぬ!!
私は手を引かせていただく!! 良いな!!!」
「……はい」
「エミリー、お父さんが悪かった。間違った事をする前に止めてくれてありがとうな」
「もう悪い事しない?」
「ああ。しないよ。さあ、一緒におうちに帰ろうか」
「おとうさん」
「ん?」
「嫌いなんて言ってごめんなさい」
ギリアムはエミリーを抱きしめる。
「立会人、この一戦、私の負けだ!」
そう告げるとギリアムは会場を後にした。
“……あのう、ボニー様。私達は何を見せられているのでしょうか……”
“決闘ですわよ? 互いの代理人が事の正邪を決めるために争う。決闘以外のなんだとおっしゃるのかしら?”
“確かにおっしゃる通りですね。では、皆様ご覧の通りボニー様とアベル殿の一戦はボニー様の勝利とします!!
では再びボニー様に勝利者インタビューを。
改めまして、おめでとうございます。ボニー様”
“当然の結果ですわ。ギリアム様は高潔なお方。事情をご存知になればああなるのは自明の理ですわ”
“一部では卑怯との声もありますが?”
“カイン王子に取り入りたい方々でしょうね。
でも、あの放送を聞いた上でそんな発言をされるだなんて。ねえ?”
“まあ、恥というものをご存じであれば確かに”
“私、そんな厚顔無恥だなんてハッキリとは口に出して申しておりませんことよ。それはお含みおきくださいな”
“承知しております。会場の皆様もそこのところ、よろしくおねがいします。
ところで、決闘後の事でいろいろと憶測が飛び交っております。それについてボニー様はいかがお考えでしょうか?”
“憶測? どのような?”
“次の一戦で勝利されたら、カイン様はどちらをお助けになるかと”
“ああ。アベル様は侍従長の御子息で乳兄弟。付き合いも長くて第一の腹心。
片やベルーガ様は辺境伯様の御子息で、カイン様に不足しておられる軍事面の後ろ盾として欠かせない、と”
“どちらを見捨てても後にしこりが残りますからね”
“いっそのこと、両方とも見捨ててご自分だけがお愉しみになると言う選択肢もございますわねぇ”
アベルとベルーガはカインに縋りつき「見捨てないでくださいね!」と喚いている。
“でもご安心を。そんな辛い選択をせずに済みますわ”
アベルとベルーガの顔に希望の光がさす。
“私、負けるつもりはございませんから。三人まとめて”
カシャ!
“あ、ありがとうございました。
皆様お待たせしました。では最後の一戦を始めます!
両者代理人、ご入場ください!!”
「爺、任せたぞ。だ、大丈夫だよな?」
「若、このような事はこれにて最後にしていただきます」
「す、すまぬ。最後にする、最後にするから頼むよ」
「お任せあれ。このヴォーダン、如何なる事情がございましても戦場に立つとなれば一切手は抜き申さぬ」
「それでこそ武人。さすが我が夫ですわァ♡」
ボニー側の入場口から声がした。
ヴォーダンの妻、アンジェリーナ女官長がそこにいた。
♡付きの声なのに、決闘場の空気がガクンと下がった。
「お、おまえ……まさか儂の対戦相手とは?」
「私です」
「それがどう言う事か分かっておるのか? 儂が負ければ王子の…」
鬼の異名をとるヴォーダンだが、始める前からすでに逃げ腰になっている。
「知った事ではありません。それに私、ドロシーちゃんの事を今も忘れた事はございませんのよ」
「ドロシーちゃん?」
「五年前、カイン王子に殺されたうちの娘です」
「……もしかして、あのブルーイグアナの事か?」
「冬眠前で動きの鈍ったドロシーちゃんを遊び半分でなぶり殺し、ドラゴンを退治したぞと……」
「……」
「せめて手厚く葬ってあげようとしたのに飾首にするんだと遺体すら…。
子供のした事だ、今回は目を瞑れ。長い目で見てやってくれとあなたと陛下に懇願されたのであの時は鉾を収めましたが、やはりあの時キツくお仕置きしておけばこの様な事態にはならなかったと反省してます。
まあそれはそれとして、今ここにおりますのは王子には関係ございませんのよ」
「???」
「あなたにお仕置きするためですの」
「儂に?」
「先月の二十日、早くお戻りになってとお願いしましたわよね? 何をしておいでだったのです?」
「あ、あの日は仕事だったと言ったであろう?」
アンジェリーナは懐から写真を取り出し放り投げる。
その写真を見てヴォーダンの血の気が引いていく。
「随分愉しげなお仕事ですわね…」
「いや、違うんだ。かあちゃんこれは!」
「ディップ君をかる〜く撫でてあげたら快くゲロってくれましたわよ♡」
(すまん、ディップ!骨は拾ってやる)
「銀婚式の日だってのに…」
(し、しもうた…忘れてた…)
「なに遊び歩いて浮気してるんだ、このダボがァ!!」
それから始まったのは決闘でも夫婦喧嘩でもない、一方的な蹂躙劇だった。
《残酷な映像の為、表記を自粛しました(©️文倫)》
頭を掴まれた手を解こうとジタバタしていたヴォーダンの四肢が緩慢に止まる。
「続きは帰ってからにするか。立会人!」
“は、はい!! この一戦もボニー様の勝利とします”
アンジェリーナ女官長は頷き、ヴォーダンの頭を掴んだまま退場して行った。
“これにて決闘の終了を宣言します。発起人は中央へ”
ボニーは意気揚々と入場したのに対し、カイン達は逃げようとしたところを取り押さえられて引き立てられての入場になった。
“ボニー様、見事に名誉を回復されおめでとうございます”
「ありがとうございます」
“カイン王子達にはどの様な謝罪を求められますか”
「そうですねえ、無条件で赦免して差し上げて王家に貸しを作るのが最も理知的なやり方ですよね」
Boooooooo!!!
「でも女は感情的で愚かだそうです。私は女ですから…」
Woooooooo!!!
「嫌な殿方に無理矢理されるというのはどう言うことか、身をもって知っていただくためレインボー・ローズの殿方に教育していただくと言うのもいいかもしれません」
……レインボーローズ? なんだ?それは
……確かガチムキのハードゲイの店じゃないか?
……あそこのヤツらに何度もやられたら尻が使い物にならなくなるって噂だぞ?
……切り落とされたら少し憐憫の情も湧くかもしれないけど、掘られたって言うんじゃそんな気にもならないなあ
……どちらにせよ廃嫡は間違いないな。子供を作れないんじゃ他国にも体裁が悪いからな
今や会場に王子達の味方はいなかった。
いや、居ても何も出来なかった。
カインはもうボニーの情に縋るしかなかった。
「ゆ、赦してくれ! ボニー!!
なんでもする、今まで酷いことをした女の子達にも詫びを入れる! だから…」
「あら、酷いことをした子達に詫びを入れるのは人間として当然の事でしょう?
なぜそれが交換条件になりますのかしら?」
「あ、あ、ああ……頼む、頼むから……」
「あの子達ってね、あなた達の所為で婚約を破棄されたり男性恐怖症になって家から出て来れなくなったりしてますのよ?」
「……私が、私が悪かった! 心を入れ替え誠心誠意詫びを入れる!!」
「あなた達の処遇はあの子達とも相談して決めたいと思います。一週間後に改めて。よろしいですね?」
他の子達と相談して決める?
カイン達にとっては一縷の望みが繋がった。
しかし現実は甘くなかった。
訪問しては門前払いになり、王家からの正式の使者を出しても居留守を使われる。
「急なこと故に連絡が取れません」
そう返されると五日から一週間連絡が取れないのも珍しい事ではないので、無為に時間だけが過ぎてしまう。
頼みにできる人材がいないと言うことの辛さと恐ろしさを身をもって知った。
自分達が陥れた女の子達もこう言う気分を味わっていたと言うことを嫌と言うほど知った。
一週間の猶予とは、免罪の希望をちらつかせた地獄の日々でしかなかったのだ。
おそらくそれもボニーの考えた処罰のうちなのだろう。
会場で待っていたボニーの顔を見てそう確信した。
「カイン様、アベル様、ベルーガ様。この一週間、いかがお過ごしでしたか?」
「最悪だよ。自らの所為ではあるが」
「私達は面白半分でこう言う事をしていたのだと、腹の底から教わったよ」
そう言う三人に対しボニーはにっこり微笑む。
「これが女の闘い方ですわ」
(完)
ボニーの仕置きは読者の皆様に委ねます。
斬り落とすもよし、教育するもよし、赦すもよし。
筆者が書きたかった物はそこにないので。
皆様のお好きな結末をお選びください。
丸投げですみません。
この話はコメディとして書き始めましたが(実際にやっている事はコメディですが)、話の運びや内容からしてコメディではなくドラマの方が受け入れてもらいやすいと感じ、このジャンルにしました。