6
本日最後の投稿です。
衝撃の誕生日パーティーからひと月が経った。
その間に関係者に対する処分も済んだことで、騒ぎも一応収まった。関係者といっても、今回はミーナとその両親であるリットン男爵夫妻に留められている。
男爵夫妻は娘の監督責任を問われ、一カ月の屋敷外への禁足処分。
ハミルトン公爵令嬢に対する侮辱罪と王太子への暴行事件の首謀者であるミーナについては、厳しい教育指導で有名な修道院行きを命じられた。
ただ、修道女にさせられるのではなく、他家の子女と同じ行儀見習いという扱いだ。また修道院に入る期間は無期限となっているが、修道院内での本人の反省や品行の度合いによっては、早ければ一年で出ることが可能である。
問われた罪に比べればかなり軽い罰になったが、公爵令嬢侮辱罪についてはほぼ実害が無かった事、また王太子への暴行については、まあ、目撃者の殆どがミーナにかなり同情していたことから、情状酌量されたようだ。
王太子については、女王は一時廃嫡すると息巻いていた。しかし時をおいて冷静になってみると、女王もそこまで大ごとにする問題でも無いように思えてきた。
何しろ王太子がやらかした、カトリーヌと勝手に婚礼式を挙げた件については、王太子が強弁したように、王太子とカトリーヌがそこまで心を通わせていたのだと、国民も好意的に受け止めているようだからだ。
その為、公爵令嬢を公衆の面前で婚約破棄した事も、すでに夫婦になっていたのだからと、何とか笑い話で収まるやらかしだとみなされている。
むしろ、ここで廃嫡騒ぎなど起こそうものなら、せっかく収まろうとしている騒ぎをまたぶり返させる恐れがあった。
そういう訳で女王も、王太子に対しても穏便に済ませるのが得策だと考えるようにはなっていた。
しかし、それでは当然女王の怒りが収まるはずも無い。王太子のやらかしで王室が大恥をかいたのは、紛れも無い事実だからだ。
笑い話とは言ったが、それこそ貴族どころか国中の者がひと月経った今でも笑い転げているという話は、女王の耳にもしっかり届いているのだ。
大ごとにはしたくない、しかし自分に赤恥をかかせたドラ息子には、目にもの見せてやりたい。
悶々と悩んでいた女王の下に、カトリーヌが参上した。
カトリーヌはまず女王に対して、王太子を諫めず同調して婚礼式を挙げてしまった事を丁寧に、真摯に謝罪した。
「本来でしたらすぐにでも謝罪に伺いたかったのですが、此度の一件が収まるまではむしろお手を煩わせてしまうかと思い、参上するのを控えておりました。まことに申し訳ございません」
そんなカトリーヌを、女王は笑って許した。
「あなたが謝る必要は無いわ。確かに前もって相談はして欲しかったけど、婚礼だけならそれ程目くじらを立てる事じゃない。むしろ微笑ましい先走りとして、国民に宣伝出来るぐらいよ。現に民もそう受け止めているようだし…… 全く!! あの子があんな真似をしなければ!!」
再びこみ上げてきた怒りに、女王が手に持っていた扇子を折る勢いで握りしめていると、カトリーヌが口を開いた。
「その件なのですが、私に考えがございます」
「なに?」
怪訝な顔をする女王に、カトリーヌはある提案を進言した。
それを聞いた女王は目を輝かせた。カトリーヌの提案は、騒ぎのせいで溜まりにたまっていたストレスを一気に発散できる良策だと思えたからだ。
「その計画、ぜひ進めてちょうだい。ふふ、楽しみ。それをやられたあのバカ息子の顔が目に浮かぶわ」
女王はカトリーヌに計画の全てを一任した。
明日は5話投稿します。7時前後の更新を予定しております。
面白い! 続きが気になる! という方は、評価、いいね、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。