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昨日タイトルを変えると報告しましたが、元に戻しました。混乱させてしまったら、すみませんでした。
オークション会場に足を踏み入れた王太子は、カトリーヌの姿を見て眉をひそめた。カトリーヌも王太子に気付くとつめたく睨む。
「……何故君が此処にいる? 僕は聞いていないぞ」
「私も、王太子様がアフーに来られるなんて、初耳ですわ。先日私のブレスレットまで質に預けて等身大バルバロッサを競り落とされたばかりではないですか。いい加減、無駄遣いは慎まれた方がよろしいのでは?」
先日の抽選会では王太子が参加出来るよう、カトリーヌはヘンリー会長に懇願した。その際、王太子夫妻の仲が良好であることを世間に示したいのだという事を理由に挙げた。
だが、その大義名分も、今や塵芥のごとく投げ捨てられた。どっからどう見ても今の王太子夫妻は互いを蹴落とすライバルとしか思っていない。何しろ席は一つしか無いのだ。
「あの時とは事情が違う。君も知っての通り、僕が手掛ける事業は順調だよ。今日の出費程度、痛くも痒くも無いさ。君こそせっかくチマチマ貯め込んだ資産、大事に取っておいたらどうだ?」
カトリーヌは口を扇子で隠してこれ見よがしに笑った。
「堅実に投資をしているとおっしゃって頂きたいですね。王太子様がなさる大博打とは、質が違います。それこそ、この程度の出費に対する備えは十分出来ておりますよ。王太子様こそ、博打が外れた時に備えられた方がよろしいのではないでしょうか ……ああ、それに、王太子様は散々ミーナを連れ回しておられたではありませんか。ならもう無理にミーナをご覧になる必要も無いのでは? むしろ等身大バルバロッサを有効活用なされて、それに修道女の扮装をさせてご鑑賞されてはいかがでしょう。王太子妃として、そう進言させて頂きますわ」
夫婦円満をアピールするどころか、別の意味でミーナのせいで夫婦決裂の噂をまき散らしている二人を、ヘンリーは静かに検分していた。
恐らくあの二人が、今回の競りの最大のライバルになる。どちらもバルバロッサに対する熱意・財力共に、他を圧倒している。自分も、財力では二人に太刀打ち出来ないだろう。
(だが、私には誰にも負けぬ、魔王バルバロッサへの熱意がある!!)
あの夫妻は国を背負っている。どれだけバルバロッサを愛そうが、最終的には国を選ぶだろう。ヘンリーに言わせれば、バルバロッサへの熱意とはその程度のものだということだ。なら、こちらが捨て身でかかれば、勝機はある。
自分は何としてもこの戦いに勝たなければならない。勝って、残酷な神への捧げものを獲得しなければ、ヘンリーの世界が崩れ去るのだ。
ここでヘンリーがカトリーヌと王太子に事情を打ち明ければ、その捧げものは簡単に手に入るだろう。ヘンリーがタクヤが決めたルールを守るかどうかなど、しょせんタクヤには分からないのだから。
しかしタクヤが看破した通り、ヘンリーはそれこそおかしなくらい正義に忠実な男だった。ヘンリーにとって、タクヤと交わした約束を守る以外の選択肢は存在しなかった。だから、ヘンリーは孤独な戦いをやり抜くしかない。
ヘンリーはやる気だった。それ程、魔王バルバロッサはヘンリーにとって、人生の全てだった。
(どうか神よ、私に力を!!)
ヘンリーは残酷な神に祈った。
こうして狂気のオークションが始まった。
明日も12時前後更新の予定です。
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