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世界最高峰の主婦 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「い、いや。今、さ。何か……。空から黒い影があそこの木々の間に物凄い勢いで入って行った様に見えたんだけど……」


「「影??」」


 呆気に取られた二人の男の声が上がる。


「気の所為、かな??」


「さっき飲んでた酒が回ってきたんだろ。お前、酒に弱いくせに酒好きだからな」


「うるせぇなぁ。美味いもんはしょうがないだろ。まっ多分気の所為だし、さっさと殺して退散しようや。もうガキをいたぶるのも飽きてきたし」



 飽きるなよ……。飽きた御蔭で俺の命は消えちまうんだから。


 この世に生まれ落ちて僅か十五年か。


 やりたい事は山ほど残っているし、こんななぁんにも無い平原で命を散らすなんて夢にも思わなかったな。


 くそう。くそう!!!!


 どうせ死ぬのなら……っ!!


 そう考えて地面の砂をこれでもかと手で握り締める。


 最後の足掻きを見せてやるぜ!!


 誰かさんの剣が振り下ろされると同時に砂を掴んで顔に目掛けて投擲。んで、怯んだ隙にあそこに落ちている俺の剣へ駆け出して……。


 頭の中に浮かぶ自分自身に都合の良い行動を思い描いているとこちらに向かって足音が近付いて来た。



 誰か……。助けに来てくれたのかな??



 幻聴ではありませんように。祈る想いで男共の反応窺った。



「お、おい。女が来たぞ」


 お、女ぁ??


「しかも一人じゃん。何してんだ??」



 ひ、一人ぃ??


 男達の声が耳に届くと僅かに湧いた希望の光が消え失せてしまった。


 女一人でこいつら六人をぶちのめせる訳ないし……。


 やっぱり、俺が何んとかしなきゃ……。



「へへ。よぉく見たらすっげぇ良い女じゃねぇか」


「だけどよぉ。背中に赤ん坊背負ってるぞ」



 しかも赤ん坊まで!?


 どこぞの主婦が燦々に光り輝く太陽の下で呑気に散歩でもしてんのか??


 漸く動けるようになった体を器用に捻って振り返るとそこには、男達が話していた通り一人の女性が何の警戒も持たずに近付いて来ている姿を捉えた。



「……」



 踝迄の肌色の長いスカート、秋らしい季節に酷く似合っている薄い緑色の上着。


 唐紅の長髪が遠い彼方からやって来た風に靡いて端整な顔をより昇華させている。


 良い女だ!! って男共が鼻息を荒くするのも頷ける美人が何の警戒も抱かずそして散歩気分なのか。


 この陽気な陽射しの下で柔和な笑みを浮かべていた。


 一切の警戒を持たずしかも先程まで家事をしていたのか。良い感じに使い古された白の前掛けも着用している。


 どこからどう見ても、万人に尋ねても、あの人の職業は何だと問われたらこう答えるだろう。



『主婦』 だと。




「コブ付きかよぉ。あれで子持ちじゃなかったらお持ち帰りしてぇ。うへへ……」


「赤ん坊殺して持ち帰ればいいじゃねぇか」


 こ、こいつらぁ!!


「ふ、ふさけんなぁ!! 赤ん坊を殺そうなんて……。頭イカレてんじゃねぇのかぁ!!」



 歯抜けが何気なくそして日常会話の続きの如く発した言葉が俺の激情に火を灯す。


 地面の砂を掴み歯抜けの顔へ向けて勢い良く投擲してやった。



「ぐぁっ!?」


 そして刹那に出来た隙を見逃さず剣へと飛び付いた。


 頼む!! 間に合ってくれぇ!!



「はっはぁ――!! ざぁんねんでしたぁ!!」


「あぁっ!!」



 一人の男がこちらの作戦を見抜いたのか、俺の剣を豪快に蹴り飛ばしてしまう。


 くそっ!! 唯一の抵抗手段が……。


 剣の行方を目線で追うと相も変わらず呑気な歩みを続けている主婦の足元へ転がって行った。



「……」


 彼女は足元に転がって来た剣を手に取り不思議そうに見下ろしている。



「よぉ!! ねぇちゃん!! その剣を置いて俺達と楽しい事しよぅや!!」


「そうそう!! ガキなんて置いてよぉ!! 一晩中抱いてやるぜ!!」


「「「ギャハハ!!!!」」」



「お姉さん!! ここに来ちゃ駄目だ!! は、早く逃げろ!!」



 こいつらに捕まったらきっと……。


 容易く想像出来てしまう光景が頭の中を過り精一杯の声で張り叫ぶ。


 しかし。



「??」



 主婦は首を傾げて目をパチクリさせて俺達の方へ不思議そうな視線を向けていた。


 あの人声が聞こえないのか??



「だから!! 逃げろって言って……。ぐふっ!!」


「うっせぇ!! てめぇは黙って這いつくばってろ!!」



 歯抜けの強烈な烈脚が腹に突き刺さり体が地面の上を撥ねる。


 ち、ちくしょう……。


 俺に、俺にもっと力があれば……。こんな奴らなんてぇ!!


 悔しさと己の弱さで視界が滲んでしまう。



「あはは!! 見ろよ!! こいつ、泣いてんぞ!!」


「うわ。なっさけねぇなぁ、男が泣くなよぉ」



 悔しい……。あぁ、そうさ。悔しいぜ……。


 歯が立たないのは己の鍛錬が足りぬ証拠だから百歩譲って許容出来るけど。


 親父、街の皆、そして主婦に襲い掛かる被害を止められない自分の弱さが許せないんだよ!!



「く、くそがぁ!! 負けて……。いられねぇんだよぉ!!」



 袖で涙を拭い最後の力を振り絞って立ち上がる。


 こうなったら……。刺し違えてもいい。一人でも多く地獄に道連れにしてやらぁ!!



「い、行くぞ。――――。え??」


 脚力に気合を注入していざ突撃を開始しようとすると。


「……」


 主婦が俺の行く手を阻んだ。


「ど、どいて下さい!! あなたが敵う相手ではありませんよ!!」


 俺が懇願にも近い声を張り叫ぶと彼女はこちらに向かって大きく頷いた。



『安心しなさい』


 そんな意味にも聞こえて来る肯定に何だか拍子抜けしてしまった。


 いやいや。


 女性、しかも赤ん坊を背負っているんだぞ?? 何を拍子抜けしてんだ、俺は!!


「ですから!! 自分が……。へ??」



 主婦が右手で掴んでいる剣を左脇に差し、馬車に積まれている木の棒をすっと持ち上げると一つ、二つ大きく縦に振る。


 その所作はまるで棒の強度を確かめているようであった。



「ねぇちゃん。ひょっとして、その棒きれで俺達と戦うつもりかい??」


「……」


 一人の男の言葉を無視して無警戒のまま歯抜けへと歩みを始めた。


「まぁ……。そっちがやる気ならしょうがねぇ。適当に足を叩き切って、お持ち帰りだぁあぁい!!」



 上段から下段へと鋭い剣筋が主婦に向かって打ち下ろされた。


 お、俺の時と全然速さが違うじゃねぇか!! あの野郎……。手加減してやがったな!?


 剣の切っ先が肉を裂く鈍い音が聞こえて来ると思いきや、主婦は半身の姿勢で剣をひらりと躱し。



「え?? ばがすっ!!」



 ぽんっと、木の棒で歯抜けの顎を下段から軽く打ち抜いた。


 軽く振った様に見えたけどその威力は絶大であって?? 歯抜けの野郎の体は宙へふわりと浮かび。



「……っ!!」


 主婦さんが宙に浮いた隙だらけの胴体に向かってくるりと体を回転させて美しい軌道を描く蹴りを放った。


「うぐぇっ!?」


 彼女の痛烈な攻撃を受けた男の体は面白い様に地面へ転がって行き、遠くに見える岩に叩きつけられて漸く停止する。



 あ、あはは。今の、何??



「「……っ」」



 残る二人も呆気に取られて主婦を見つめている。


 そりゃそうだろう。


 女性らしい体から放たれたものとは到底思えないし。



「キャッ!! ファッフォウ――ッ!!!!」


 周囲が不思議な沈黙に包まれる中。


 赤ん坊の場違いとも聞こえる陽性な笑い声が静かに響いた。


 この子、凄く肝が据わっているな……。


 普通の赤子なら見知らぬ無頼漢の姿を捉えたら泣きじゃくるってのに。



「こ、この野郎!! よくもやりやがったなぁ!!」


「持ち帰るのは止めだ!! ここで殺す!!」



 激情に駆られた男二人が剣を携えて主婦に襲い掛かる。


 日常の光景でなら女性を庇いに駆け出すんだけど。何んと言うか……。


 彼女の背中を見ていると何だか形容し難い安心にも似た感情が湧いて来てしまう。


 達人、とでもいうのかな。


 武を極めし者が放つ覇気が背中から滲み出ている。


 そんな感じだ。



 案の定、俺が想像していた通りの光景が直ぐに訪れた。



「ぐぶべ!!」


 真正面から向かい来た剣の中段突きをスルリと躱して顔のど真ん中を木の棒で打ち抜き。


「ダゴッ!?!?」


 袈裟切りの軌道を読み、左手で剣の軌道を僅かに逸らすと掌底で男の腹を叩くと気持ちの良い音が鳴り響き。


 男は粘度の高い液体を吐き零しながら地面へと崩れ落ちた。



 この間僅か数秒。


 ま、間違いない。この人……。本物の達人だ。


 剣の軌道を読み切って、掌底で大の男を倒すんだぞ??


 ありえねぇだろ。


 戦闘の才能、相手の行動を読み切る洞察力、端的に一言で説明すれば達人なのだが……。


 もっと彼女に誂えた言葉は無いかと頭の中で思考を繰り広げていると親父達の周囲に居た男共が此方に駆け寄って来てしまった。



「か、カシラぁ。あっさりとやられちまいましたよ??」


「こいつ!! よくも、仲間をやってくれたなぁ!!」



 野盗のカシラが主婦の真正面に立ち残りの二人が左右を固める。


 さ、流石に四方八方からの攻撃は躱せないだろう。



「おい、お前。女のくせに大した腕前だな??」


 カシラが背の曲刀を抜剣して彼女の真正面で構える。



 で、でけぇな。あの曲刀。


 牛の太い首を一太刀で切り落とせそうな幅の広い刃面と、太陽の光を怪しく反射させる鉄の塊に思わず固唾を飲み込んでしまう。


 あんなの食らった日には……。


 きっと俺の細い体はあっと言う間に、綺麗に二つに分裂してしまうだろう。



 だ、だけど。


 女性一人を戦わせる訳にはいかない!!


 恐怖心を払拭して心に勇気を灯すと大きく叫んだ。



「お姉さん!! 助太刀しますよ!!」


 外野から大いに叫ぶが彼女の耳には届かないのか、それとも聞く耳を持っていないのか。


 恐怖を微塵も感じていない冷静な表情でカシラと呼ばれる男を見上げていた。


「ヴゥ!! ダァイ!! コアァイッ!!!!」


 赤ん坊は母親の冷静さとはかけ離れた様子だ。


 頭の武骨な顔を見ても物怖じせずそれどころか。


『掛かってこいやぁ!!』


 そんな感じで小さな手をワキワキと動かしていた。



「うるせぇガキだなぁ。さっさとやっちまいましょうや」


「だな!!」


「はぁ……。仕方が無い。降参する気配はねぇし殺すのは惜しい女だが。ここで死んで貰うぞ!!!!」


 男共が一斉に身構えると主婦が腰に差していた剣を抜き。


「っ!!」



 天高く、空を真っ二つに切り裂くんじゃないかと思われる猛烈な勢いで剣を上空へと放ってしまった。


 は?? 何??



「お、おぉ。驚かせやがって」


「この女馬鹿か?? 自分から武器を捨てやがったぜ!!」


「ははっ!! これで脅威は無くなったな。ぶち殺せ!!」


「「おらあぁああぁ!!!!」」



 カシラの声が激闘の狼煙となる。


 左右の男が剣を上段からそして地面と平行に薙ぎ払う様に主婦に向けた。



「……!!!!」



 右上段から襲い来る剣の腹を左手で逸らして薙ぎ払う剣へと着弾させる。


 激しい火花が飛び散り薙ぎ払いの剣は上からの力を受けて地面に向かって下がり、当然上段の軌道を描いている剣も地面へと到達してしまう。



「はぁ!? うぶぇ!?!?」


 上段切りを見せた男の隙だらけの腹部に主婦の左肘鉄が突き刺さり。


「嘘だろ!? ぎぃえっ!!」


 薙ぎ払いを見せた男の顎には木の棒が急襲。


 周囲に骨が砕ける音が飛び散り美しい曲線を描いて野党の体が宙に舞ってしまった。



 う、嘘ぉ。何ぃ?? 今の動き。


 男達が驚くのも無理も無い。


 俺が男達の立場でも同じ事を言い放つだろう。それだけの事を平気でやってのけてしまうのだ。あの人は……。


 驚きを通り越して只々呆れてしまう。



「隙だらけだぞぉぉおお!!」


 カシラがこれでもかと曲刀を振り上げて剛腕を生かした攻撃の構えを見せた。


『隙だらけなのは。どちらかしら??』


 そんな余裕にも似た表情を浮かべて、木の棒でちょんっと曲刀を突いて軌道を逸らす。


「えぇ!? あがっ!!」


 石と砂が点在する地面に曲刀が突き刺さり土埃が舞う。



 その刹那に出来た隙を見逃さず主婦は得意気な顔を浮かべて木の棒でカシラの横っ面を叩いた。


 簡単に叩いた様に見えるが、見た目以上に強力な攻撃なのだろう。カシラの口から歯が数本飛び出して巨躯が地面へと崩れ落ちる。



「ひ……。ひぃ!! ゆ、許してくれ!! も、もう悪さはしねぇ!! 帰るから!!」



 追撃を試みた主婦に恐れをなしたのか。


 あわあわと口を開き。大の男が見せるべきではない情けない姿を見せて後退りを始めた。



 いやぁすげぇもん見ちゃったな。


 カシラが弱いんじゃない。


 女性が滅茶苦茶に強いんだ。桁が違う処か……。比べるのも失礼な程に実力差が如実に現れているんだよな??


 勝利を確信したのか、主婦がこちらに振り返り。


『大丈夫??』


 そんな感じで柔和な笑みを浮かべて歩んで来る。


「え、えぇ。大丈夫……。っ!!!!」



 あ、あの野郎!! 何がもう帰るだ!!


 カシラが勝利を確信した厭らしい笑みをニヤリと浮かべて、懐に手を潜り込ませ短剣を取り出し。


 主婦に気付かれぬ様にそ――っと立ち上がった。



「お、お姉さん!!!! う、後ろ!! 後ろですよ!!!!」

「ダァ!! ア――!! ウゥッ――!!!!」



 赤ん坊も不穏な気配に気付いたのか。


 前後に素早く顔を動かしてちっちゃな手で主婦の肩をタフタフと叩く。


 しかし、それでも女性は振り向く事は無くこちらへ歩んで来る。



「いやいやいやいや!!!! 後ろですって!!」

「キャイッ!! ウォォ――イイイイ!!!!」



 俺が背後を指差し、朱の髪の赤ん坊は汗に塗れた顔で必死に女性の肩を叩く。


 聞こえていないのは分かっているけど!! 所作で気付いて下さいよぉ!!!!



「し……。死ねやぁあああああ――――ッ!!」


「う、うわぁぁああ――!!」

「ムキィィイイィィ!?!? キャイィ――――!!」


 悲惨な光景が目の前に広がると確信した俺と赤ん坊が同時に泣き叫んだ。





 憎悪の刃が女性の背に突き刺さる。


 そう思った刹那。



「おらぁっ!!!! ヒィッ!?!?」


 カシラとの開戦前に天に向かって投擲した天への御届け物が猛烈な勢いで空から降り注ぎ頭の鼻頭を切り裂いた。


『ね?? 大丈夫だったでしょ??』



 片目をパチンと瞑り、見ていて気持ち良い笑みを浮かべてくれた。


 ま、まさか。これを狙って??



「ウ、ウゥん……」


 主婦の背後から急襲しようと画策していた頭は口から泡を吹き大の字になって気絶してしまった。



「はぁぁぁ。あ、ありがとうございました。御蔭様で助かりましたよ」


 大きく溜息を吐き、両の膝へ手を着いて話す。


 この人が来なかったら今頃俺達は……。


『じゃ、私はこれで』


「オラァッ!! ダダァッ!?!?」


 赤ん坊の猛抗議を無視し続ける主婦が木の棒を馬車の荷台に丁寧に置くと静かに踵を返してしまう。


「あ、待って下さい!! これ、少ないと思いますけど。ほんのお礼です」


 大きな麻袋に作物を詰め、通りすがりの世界最強の主婦へと渡そうとするが。


『いやいや。大丈夫よ??』



 お礼は結構。


 そんな感じで右手を振る。



「そんな訳にはいきません。命を救って頂いたお礼をしないのは自分の義に反しますから!!」


 口をへの字にぎゅっと曲げ。


 不退転の構えを見せて麻袋を差し出す。


「アイッ!! キャウ!!」


 赤ん坊も麻袋の中身を想像したのか。にっこりと満面の笑みを浮かべて受け取れと主婦へ伝える。


『そこまで言うのなら……』


 赤ん坊の声と俺の態度。その二つに折れた主婦がおずおずと麻袋を手に取ってくれた。


「本当に……。本当にありがとうございましたぁ!! この御恩いつの日か……。はれ??」



 頭を大いに下げて礼を述べながら顔を上げると、そこにはもう誰も立っておらず風光明媚な平原の姿だけが浮かんでいた。



 あ……れ?? どこ行った??


 キョロキョロと周囲を見渡すが先程の二人の姿を捉える事は叶わなかった。


 幻、じゃないよな??



「お――い!! 大丈夫だったかぁ!?」


 背後から親父が気の抜ける声を出しながら近付いて来る。


「親父は大丈夫だった??」


「おうよ!! いやぁ。すげぇ強い主婦だったな??」



 あ、幻じゃなかったんだな。


 親父が見たって事がそれを証明している。



「強過ぎだろ。あれは、そう。きっとその道の達人だよ。それじゃなきゃあの強さは説明できねぇし」


「達人ねぇ。女性でも鍛えればあそこまで強くなれるもんなんだなぁ」



 その気の抜けた声、どうにかならない??


 さっきまで生死の境を右往左往していたんだぞ??



「救ってくれたお礼も渡したし。こいつら、どうする??」


 道端に転がる気絶した六人の男を何とも無しに見下ろして話す。



「もう直ぐ次の街に着くからそこの警察に駆けこんで此処に来て貰おう。それが手っ取り早いだろ。勿論、逃げられない様にあそこの木に縛ってから、な??」


「うっし!!!! 善は急げってんだ!! ちゃちゃっと縛って出発しようぜ!!」


 肩をぐるりと回し、軽快な足取りで荷台へと向かう。



「なぁ、親父」


「ん――?? おぉ!! この縄、丁度良い太さだな!!」


「俺、あの人みたいに強くなる。だから……。軍へ入りたいんだ」



 至強の存在が瞼の裏に焼き付いて今も離れない。


 きっとこれからずっと今見た光景は色褪せる事無く俺を鼓舞し続けるんだろう。


 そう考えると居ても立っても居られない。



「パルチザンへ?? まぁ、お前がやりたいんなら俺は構わんぞ」


 また簡単に了承して。


 普通、危ないから駄目だって言うんじゃないのか??


 この場面にその台詞は微妙に合っていないぞ。


「おう!! よぉし!! 俺もあの人みたいに強くなるぞ!!!!」



「叫ぶのは結構だけどな?? 気絶した男を運ぶのを手伝ってくれよ。――――。ビッグス」



 親父が俺の名を呼ぶと大の字に伸びている頭の腕を背中側から持ち上げた。


「はいはいっと!! おらおらぁ!! 往生せいや!!!!」


「お前が倒したんじゃないんだぞ??」


「分かっているって!!」


 目標となる傑物が見つかり、これでもかと闘志が湧いて来てしまう。


 あの頂に向かって俺も登って行こう。そして、いつか彼女と同じ高みから同じ景色を見るんだ!!!!


 俺は内側から漲って来る力を発揮させていやに重たいカシラの両足を持ち、額に大粒の汗を浮かべる親父と共に意気揚々とそして軽快な足取りで地面に生える木へと向かって行ったのだった。




お疲れ様でした。


母親龍が助けたのは現代編の主人公の教官を務めた若き日の彼でした。


これから一か月毎に番外編を更新して行こうかなと考えています。あ、勿論本編の投稿が疎かにならない程度の頻度で更新しますよ??


そして、次回は本編の投稿となります。


番外編で寄り道していないでさっさと本編のプロットを書きやがれという読者様達の声が光る画面越しに聞こえましたので執筆作業に戻りますね。


それでは皆様、お休みなさいませ。

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