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疲れた体は友人達との食事で癒す その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 大都会の西大通りを進んでいるとこの街には嫌気がする程に人が溢れかえっていると改めて思い知らされてしまう。


 何処へ視線を置いても人という存在が目に付くのその証拠だ。


 あ、勿論。人間は空を飛べないので随分と暗くなった空を除いての話ですけどね。


 人の往来の邪魔にならぬ様に適度な速度で駆け続け。僅かに息を切らして肺へ新鮮な空気を送りつつ銀時計前に到着するとそこはさながら……。


 卑猥な色に染まった情事という名の大混浴場であった。



「ねぇねぇ。君、この後暇――??」


 優男が優しい口調で女性に話し掛けると。


「え――。暇じゃないよ――」



 彼女は満更でも無い感情を醸し出して男の申し出をやんわりと断る。


 そしてそこから少し離れた場所では。


「なんて事だ!! 俺は君に会う為に生まれて来たのかもしれない!!」


「大袈裟だって――」


 一人の男が妙に鼻に付く台詞を吐き仰々しい口調で迫っていた。



 うえっ、今の台詞は大袈裟を通り過ぎて逆に呆れるわ。



 己の情報を次の世代へ残そうとする雄共が雌の注意を引く為、あの手この手を使って必死になる様は実に滑稽だ。


 種の本能と言えば聞こえは良いが……。最たる目的は性欲の発散でしょうね。


 どの雄も雌の心を射止めようと躍起になり、右往左往。


 雌も雌で気に入った雄が現れないか。二人一組を基本に運命の雄が現れるのを、首を長くして待ち構えていた。


 お嬢さん方、こんな所で運命の出会いなんてある訳ないわよ?? いや、在るかも知れないけどその確率は限りなく低いと言いたいのよ。



 はぁ――。街も混んでいればここも混雑か……。



 この人だかりの中からルピナスを見つけるのは骨が折れそうね。取り敢えず銀時計の真下辺りから捜索を開始しましょうか。


 肩をぐるりと回し、首の筋肉を慣らして突撃の準備を整える。



 うっし。いざ、出撃!!!!



「ね――!! 俺達と遊ぼうよ!!」


 目の前のむさくるしい男の脇を突破。


「この服高かったんだ――」


「うっそ!! それってあそこのお店の服じゃん!!」


 続け様に現れたやたら目立つ服の女の背を通り。


「なぁ、良いだろう??」


「ここだと恥ずかしいしぃ……」



 物凄く腹が立つ軽い笑みを浮かべるお調子者の男二人組とそれに付随する尻軽女の合間を堂々と突き抜けて目的地である銀時計の麓へと到着した。



 ふぅ!! 我ながら完璧だったわ!!


 私って狭い空間を突き抜ける才能でもあるのかしらね??


 自画自賛に酔いしれ聞きたくも無い男共の卑しい声にうんざりしていると聞き慣れた声が届いた。



「トアさん!! こっちですよ!!」



 ぬ?? どこだ??


 馬の調教師の姿を求めて周囲を見渡すが……。視界が捉えるのは今も盛んに行われている男女の営みのみ。


 空が黒に染まり、地上は自然の法則に従って薄暗い事もあってか彼女の影も掴めないでいた。



「ここですよっと!!」


「おわっ!! びっくりしたぁ。急に肩を掴まないでよ」


「あはは!! 驚きました?? 人が多いから見つけにくいですもんねぇ」



 ルピナスが軽快な笑みを浮かべて私を見つめる。


 いつも通り黒の帽子を深く被り、柔らかい革の上着に落ち着いた茶のズボンと動き易さに特化した服装を着用している。


 うぅむ……。女の子だったらもう少し着飾ってもいいんじゃない??


 まっ、私も人の服装をとやかく言える服は着ていないんだけどね。



「では行きます??」


「もち。戦闘に備えてもうお腹はすっからかんよ??」



 現に今にも雷鳴轟きそうな気配があるし。


 我儘なお腹ちゃんよ。静かになった途端に盛大な音を鳴らさないでよ??



「案内しますね。こっちですよ」



 ルピナスと共に狭い空間を何んとかこじ開けて、やっとの思いで大通りに出るとその足で街の中央へと向かう。



「ねぇ。今から向かう店ってどんな店なの??」


「下調べの結果。卵料理が美味しいとの事です」



 通りの脇に設置されている松明のかがり火に照らされた彼女の口元が美味しさを想像した所為か柔和にキュっと上がる。



「へぇ!! いいじゃない。今日は朝ご飯しか食べてないし。がっつり食べられそうよ」


「あれ?? お昼抜いたんですか??」


「忙しくて食べる暇が無かったのよ」



 正確に言えば物価が違い過ぎて食べる気が起きなかった、とでも言えばいいかな。


 レナード大佐との面談後。


 街を適当に歩きつつ食事処を見て回っていたがどの店も一限さんお断りの雰囲気を醸し出していた。


 そんな高貴なお店から出て来た店員さんにさり気なく、そして卑しい感じを与えない様に値段を聞いたら目玉が驚いて飛び出そうになってしまった。


 あの女性店員、私の顔を見て驚いていたわねぇ。


 そりゃあ、たかが昼飯に五千ゴールドも払えないわよ。


 しかも!! それでもこの街じゃ安い方と言うではありませんか!!


 それなら一食抜いて、こっちで馬鹿みたいに食えばいいじゃんという結果に至ったのです。



「ふうん。お忙しそうですねぇ」


「そっちも忙しそうじゃない。大変でしょう?? 厩舎の馬達の世話は」



 パルチザン専用の厩舎は二十棟を超える。


 その一棟一棟に沢山の馬達が収まるのだから容易にその苦労は想像出来てしまうさ。



「大変ですけど、自分で選んだ仕事ですからね。それに、やり甲斐は大いにありますよ?? 毎日顔を合わせていると、馬ちゃん達は私の顔を覚えてくれましてね。餌を与えた時とか、熱心に毛繕いをしてあげると優しく甘えてくれるんですよ。御主人様が暫く帰って来ない時は外に出して運動させて、長旅から帰って来た子には静かな馬房を与える。人間と同じ様に、信頼関係の構築が大切なんです」



 ほぅ、いつにも増して饒舌ねぇ。



「実家は農場を経営していましてね?? 酪農が主な産業の片田舎で育った所為か、動物との戯れはお手の物です」



 ふんっと鼻息を漏らし、得意気に話す。



「ルピナスってどこの街の出身??」


「私ですか?? ここから南に向かうとレイテトールって大きい街がありますよね。その街を通り抜けて南南西にあるシャイヤって名前の街ですよ」


 う――ん。知らないなぁ。


「生まれ故郷で馬を操り、乳牛を育て、流れ行く雲を眺めて育ちました。田舎過ぎて何もないけど、代わりに美味しい空気と水。そして牛のお乳とチーズが私を大人にしてくれたのです」


「良い所じゃない。今度行こうかしら??」


 戦いに疲れ、心が疲弊し、立ち上がるのも嫌になった時。温かな空気と雰囲気が体と精神を癒してくれるだろう。


「行く時は教えて下さいね?? 私も休みを取って向かいますから」


「んっ、宜しく。うへぇ……。相変わらず鬱陶しいくらい人がいるわね」



 街の中央に到着すると晩御飯を求めた大勢の人々が屋台の間を流れ続けていた。


 鼻腔に届く美味しそうな香り、数えるのも億劫になる人の足が轟音を奏でその音に負けじと屋台の店主達が熱き雄叫びを上げる。


 あの屋台群が鳴らす音量はひょっとしたら戦地よりも五月蠅くない?? 



「迂回して行きましょうか」


 ルピナスが顔を顰めて苦い言葉を放つと南大通りへと続く迂回路へ足を向けた。


「了解。今向かっている店ってどんな感じなの??」


「珍しい料理を提供してくれるって噂なんですよ」


「珍しい??」



 珍味、そういう意味であろうか。



「卵を使った料理。それだけは分かっています」



 ほぉ――。卵を使った珍しい料理ね。


 どんな姿形をして出て来るのだろう??


 巨人の手に余る様な目玉焼きとか、私の腕の長さ程度の卵焼きとか??


 私達が想像出来ない様なビックリ仰天した姿を思い浮かべようとするが……。頭の中には大きさに注目を置いた料理ばかりが浮かんでは消えていた。



「そのお店。どこにあるの??」


 卑しい考えを霧散させ、まぁまぁな速足で進んで行く彼女へ問う。


「職場の人から伺ったのですが。南大通りを南下して、南東区画にあるお店です。ちょっと入り組んだ裏通りにあるんですけど、ちゃんと地図を持って来たので安心して下さいね」



 ほぉ、下調べは完璧なのね。


 それは助かるわ。



「それじゃこのまま流れに沿って移動しましょう!!」


「分かりました!! …………。しかし、良い匂いがしますね」


「そ、そうね」



 迂回路には屋台群の中程では無いが、私達同様にアレを迂回しようと考えた人達が犇めきあっている。


 人が増えればそれだけ密度が高まり、それに呼応する様に移動速度も遅くなる。ゆるりとした移動速度が今は非常に恨めしい。


 左手側から肉が焼ける馨しい香り。どこからともなく飛来する女の子を誘うあまぁい香りが腹ちゃんを悪戯に刺激してしまうのだ。


 空腹を我慢している時にこの香りはキツ過ぎる!! それに早くここから抜け出ようとしても中々前に進まないし!!



「駄目よ?? 我慢しなきゃ」



 この誘惑を振り切ってこそ、辿り着ける至福の一時があるのだ。


 我慢よぉ、私。誘惑に負けちゃ駄目だからね。



「え――。軽い物なら良いのでは?? ほら、あそこで売ってるお芋の細切り。甘い飴を絡めて頂くんですけど。絶品ですよ??」



 ルピナスが馬車が通る道路沿いに位置する屋台の背を指す。



 出来ればその情報は聞きたくなかったわね。


 味を想像してしまった御口ちゃんが厭らしく涎を分泌してしまう。



「駄目!! いい?? 我慢に我慢を重ねればそれだけ御飯が美味しくなるの。空腹は最高のおかずって言われている様に今私達は試されているの」


「誰にです??」


「そりゃぁ……。己自身よ。誘惑を跳ね除け、這い寄る悪を打ち滅ぼして勝利を得るのよ」



 あぁ……。お芋さんが通り過ぎて行くぅ……。



「今からじゃあこの流れに逆らえませんし。お芋さんはお預けですねぇ」



 互いに後ろ髪を引かれる思いでお芋ちゃんを見送り、情けない足取りで流れに沿って歩き続け。にっくき狭い空間から脱出すると新鮮な空気を胸一杯に吸い込み呼吸を整えた。


 甘い香りやら、香辛料の残り香が今も肩を掴み戻れと催促を促すが……。



「はぁっ!! やぁっと抜けた!! さぁ!! 行くわよ!!」


 巨神も呆れ顔を浮かべる程の歩幅で、誘惑の手を跳ね除けて南大通りを進み出す。


「ま、待って下さいよぉ!!」


「ごめんね?? もう直ぐ御飯にありつけると思ったら足が勝手に動いちゃってさ」



 あわてんぼうの足ちゃんを止めて、頬が可愛く朱に染まったルピナスを待ち構えた。


 お腹が空くとど――も自制心に歯止めが効かないのよねぇ。


 これって万人に共通するわよね?? 私だけじゃない事を祈ろう……。



「も――。トアさんみたいに鍛えていないんですよ?? 私は一般女性なんですから」


「それってぇ。私が馬鹿力で、体力しか能が無いって事??」



 漸く追いついた彼女からちょっと聞き捨てならない言葉が漏れ出したのでちょいと噛みついてやった。



「い、いえ!! そういう意味じゃないですよ!! トアさんみたいに鍛えた体が羨ましいって事ですっ」


「本当かしらねぇ??」


「本当ですよ。ほら、私なんてこぉんな細い腕なんですから」


 袖をきゅっと捲り、一般女性と比べるとちょっとだけ太い腕を露わにする。


「うん?? 何、結構いい筋肉してんじゃない」


「そうですかね?? 仕事柄、腕の筋肉を使うからかなぁ」



 そうでしょうねぇ。


 鍬を使って馬房の藁を均し、荷物の搬入で背筋を鍛え、しっかり腰を入れて床を磨く。


 ルピナスはそつなくこなす仕事だが普通の女性では三日で音を上げてしまうだろう。



「ほら、私の手。力一杯に握ってみてよ」


 すっと彼女の前へ右手を差し出す。


 ふふっ、昔から比べっこって好きなのよねぇ。


「え――。絶対勝てっこありませんよ」


「ほらほら。私に参ったって言わせたら夜御飯奢ってあげるからさ」


「それなら!!」



 億劫から一転。ぱぁっと明るい笑みを浮かべて私の右手をきゅっと掴む。



 むっ!? こ奴……。出来るぞ。


 手を握った刹那。


 彼女の奥底から沸き上がる力の波動が手を伝い私の中に染み込む。


 こりゃ油断出来ないわ。



「いきますよぉ?? ……んっ!!」



 くぅっ!! いいわね!!


 指と指の骨が軋み、筋力が痛みを受けて喜びの声を上げる。


 このままギュウギュウと縮まれ続けていたい痛さだが、生憎私は負ける訳にはいかないのよ!!



「いい握力じゃない。でもぉ……。もうちょぉっと鍛えて欲しいかしら??」


「へ?? い、痛いですぅ!!!!」



 ぎゅうっと握り返して上げると可愛い悲鳴が上がった。



「あはは!! ごめんごめん。ルピナスがちょっとやるもんだからさ。つい……」


「も――。手加減して下さいよ」



 右手にふぅふぅと息を吹きかける姿がまた可愛い事で。



「これでも手加減したわよ?? 本気出そうか??」


 にぃっと笑い、右手を差し出すが。


「結構ですっ。ほら、先を急ぎますよ」


「あぁ……。はいはいっと」



 ぷいっと顔を逸らして、先に行ってしまった。


 ちょっと揶揄い過ぎたかしら??



「えぇっとぉ。この先を真っ直ぐ進んでぇ……。それでっと……」



 何やら手元の小さな紙を見下ろしつつ周囲をきょろきょろと窺っている。


 あれが地図かしらね。もう少し大きな紙に書けば良かったのに。


 ルピナスの隣を歩き、南大通りを何とも無しに索敵……じゃなかった。お目当てのお店を探し続ける彼女を横目で窺っていると聞き慣れた声が正面から届いた。



「あぁっ!! トアさん!!」


 むっ?? この声は……。


「お――!! 何してるの?? こんな所で」


「買い物のついでに色々散策していた所ですよ」



 うふふと柔和な笑みを浮かべているココナッツの看板娘が私を見つけると小気味の良い足音立ててやって来るではないか。


 柔らかい白の上着にクリーム色の長いスカート、そして首からぶら下げている銀細工の風車の首飾り。


 何んと言うか……。


 これぞ、女性だって感じの服装に思わず頷いてしまう。



「どうしたんですか?? 頷いて??」


「え?? あ――。女の子って格好しているなぁってさ」


「ふふっ。可笑しいですね。こちらの御方……。あっ!!」



 ほぅ。


 流石、接客業を営むだけはある。


 ロティがルピナスの顔、そして出で立ちを見つめるとはっとした表情を浮かべた。



「どうもこんばんは。いつも贔屓にさせて貰ってます」


「いえいえ。気に入って頂いて光栄ですよ」



 互いに顔を見知っているのか。


 そこそこの社交辞令的な挨拶と笑みを浮かべる。



「こちらココナッツの看板娘のロティ。んで、こちらが我がパルチザンの軍馬を調教、そして飼育しているルピナスよ」


 私が仲裁に入り、大通りの真上で簡易的な自己紹介を請け負ってやった。


「初めまして」


「こちらこそ」


 お互い手を取り先程と打って変わって可愛らしい握手を交わした。


「ねぇロティ。晩御飯まだよね??」


「そうですよ。明日はお店が休みなので、色々と時間を……」



「「えぇ――ッ!? 休み!?」」



 ルピナスと声を合わせ、人が行き交う場所では少々都合の悪い声量で心境を吐露してやる。

 

 嘘でしょ??


 折角、朝から出向いて小麦の香りを楽しもうと考えていたのに!!



「は、はい。何かご不都合な事でも??」


「不都合も何も。明日の朝ご飯はココナッツって決めてたのよ」


「私はお昼ですね。はぁ――……。お休みかぁ」


「も、申し訳ありません。楽しみにされていたのは嬉しいですけど……」



 静々と申し訳なさそうに頭を下げた。



「まっ。仕方がない、か。私達は御飯屋に向かってる最中なの。良かったら一緒に行かない??」


「いいんですか??」



 私とルピナスを交互に見つめて言う。



「私も構いませんよ。沢山居た方が楽しいですし」



 良かった。ルピナスってちょっと人付き合いが苦手そうな感じがするし。


 帽子の下で感じの良い笑みを浮かべてくれた。



「ではご一緒させて頂きますっ」


「うむっ!! では、ルピナス二等兵。斥候を開始したまえ」



 私の一言で女三人が同時に進み出す。



「二等兵って……。私はしがない馬の調教師ですよ?? どちらかと言えばトアさんじゃないですか。そういった言葉が似合うの」


「似合うぅ?? 何?? またそうやって私に武骨な印象を植え付けようとしてる??」


 右肘でルピナスの脇腹をうりうりと突いてやる。


「違いますよ。この中で、って意味です」


「まぁ軍属だし、そうかもねぇ」



 もっと可愛い言葉を与えられて欲しいものだ。


 例えば。


 ん――――…………。悪鬼羅刹もビックリ仰天する最強兵士!! いやいや、違うでしょ。


 可愛い言葉なんだからぁ。戦場で活躍する戦女神!! ってな感じかしら??


 いや、これでもまだ武骨な印象が抜けていない気がする……。



「ルピナスさんは馬さんの調教をされているんですね」


「えぇ。休みの日以外は暴れん坊やら困ったちゃん達相手に四苦八苦していますよ」



 私が下らない事に思考を割いていると二人の会話が聞こえて来た。



「大変そうなお仕事ですねぇ……」


「慣れれば大丈夫ですよ。そちらも大変じゃないですか?? 毎日毎日押し寄せる客を相手にするのは」


「まぁ……。大変と言えば、大変ですね」


「具体的にどう大変なのです??」


「具体的に……ですか。ん――――。ここだけの話にしてくれます??」


「勿論」



 一段と低くなったロティの声が意味深さを増すので私はついつい聞き耳を立ててしまった。



「大半のお客さんはパンをお求めになってくれるのですが……。その……。中には邪な感情を抱いて来店する方がいるのですよ」


「「邪ぁ??」」



 おっと。また声を合わせてしまった。



「少し前の出来事なんですけどね?? 閉店間際に来店されたお客さんが私の、その……。『お尻』 をですね。触って来たんですよ」



 お尻を小さく言ったのは何故??



「はぁ!? 何、そいつ!? 私の可愛い娘の尻に手を出すとは良い度胸じゃない!!」


「うわっ。最低な客って本当にいるんだ」



「他のお客さんが取り押えてくれて、警察に引き渡して事件は解決したんですけど。それ以来、ちょっと男性の方が苦手になってしまったんですよねぇ……。後、トアさん。私はトアさんの娘じゃありませんよ」



 女性の尻を軽々しく触る輩はムカつくけど、その気持は大いに理解出来るわ。ロティのお尻って滅茶苦茶触り心地良さそうだもの……。


 だが、人は倫理感を持つ賢い動物だ。そこをグッと堪えるべきなのですよっと。


 憎き女性の敵め。


 もしも、それ以上の愚行を重ねる様なら私の剣技で胴体を射貫いて見せようぞ。



「分かるわよその気持。私も手を出されたら驚いて固まっちゃいそうだもん」



 まぁ軍服を着用している時にちょっかいを出す輩はいないだろう。


 あるとしたら、私服の時かなぁ。


 如何せん。痴漢された経験が無いから分からん。



「「固まる??」」



 二人の声が重なり仲良く首を傾げた。


 うん?? 私、変な事言った??



「トアさんはどっちかと言えば、直ぐに手を出しそうですよ??」


 きょとんとした顔でルピナスが話す。


 は??


「あっ。それ分かりますっ。ぎゅうっと握った拳で顎を打ち抜くんですよね!!」


 はい??


「そうそう!! それで、相手が驚いて腰を抜かして……」


「あわあわと口を開いて逃げちゃう!!」


「「ふっ……。あはは!!!!」」



 いやいや。


 お嬢さん方、楽しそうに顔を向き合って笑い合っていますけどね??


 それは女性の私に言う台詞じゃあないなぁ??



「君達ぃ。ちょぉっと、いいかしらねぇ??」


「どうしたんですか??」



 ちぃっ!! 可愛く首を傾げおって!!


 伊達に店の看板を背負っていないわね。



「私は女性なの。お分かり??」


 うんうんと二人同時に頷く。


 仲良いわね。


「その女性に対し、暴力行為が似合うって……。どういう了見なのかしらねぇ??」



 にぃっと笑みを浮かべ、両手をワキワキと動かして開いては閉じてやる。



「え、えぇっとぉ。他意は無いと言うか……」


「そ、そうですよ。流れ的、に??」


「ふぅん。そっかぁ。どうやら、お仕置きが必要みたいねぇ!!!!」



 きゃわいい兎へ襲い掛かる野獣の如く。


 私は大袈裟に両手を広げ、目の前の可愛い二人へと憤怒の表情を引っ提げて襲い掛かった。



「きゃっ!!」


「お店はこっちですよ!! お店の人に助けて貰いましょう!!」


 ルピナスが看板娘の手を取って薄暗い路地へと逃げ込む。


「うっふぇふぇ――。待てこらぁ――。可愛い四つのお尻ぃ――!!」


「後少しですから頑張って!!」


「ト、トアさん!! 本当に怖いから止めて下さいっ!!!!」



 勇猛果敢に先導するルピナス。それに対して若干の涙を浮かべて逃げ遂せる看板娘。



「ほらぁ――。速く逃げないとぉ……。こわぁい狼ちゃんにお尻を噛まれちゃうぞ――!!」



 呼吸を荒げて必死に逃走する四つの柔らかいお肉と絶妙な距離を保持しておどろおどろしく叫んでやる。


 そして敢えて追いつかない程度の速さでジワジワと距離を削り、路地のくらぁい闇の中で二つの凶悪な目を光らせ。最強最高の恐怖感を演出しながら迫り続けてやったのだった。



お疲れ様でした。


編集作業中にちょいとコントローラーを手に持ってしまった為、投稿時間が遅れてしまいました。


只のリメイク版だと思って進んでいたら思いの外難しくて途中で何度もヤられてしまいました……。


意地悪すぎる敵の配置やら、妙に硬い敵やら。クリア出来ない難易度ではありませんが作業に慣れているエンジニアでも苦労する難易度って感じですかね。


何んとかイシムラを脱出してみます!!



それでは皆様、引き続き休日を楽しんで下さいね。

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