表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/62

疲れた体は友人達との食事で癒す その一

お疲れ様です。


本日の投稿になります。





 兵舎内の与えられたまぁまぁ大きな部屋に入ると同時。


 荷物をぽんっと乱雑に床に投げ捨て、こっちにおいでと私へ優しく手招きしているベッドちゃんへ誘われるがまま身を投げ出した。


 ポフンっと心地の良い柔らかさが体を包み、手触りの良い布が私の吐く息を吸収するとほんのり顔が熱くなる。



「あ――……。つっかれたぁ……」



 シーツに顔を押し付け、一切の身動きをせずに言葉を漏らす。


 高貴な街であるレンクィストを出発し、宿舎の部屋に戻って来たのは空が茜色に染まる頃。


 特に体を動かしていないのにこれだけ疲弊したって事はそれだけ心に負担が掛かったのだろう。


 伍長じゃなくて、もっと上の階級の者を召集しなさいよね。


 いや。


 勿論、召集されたのは私だけじゃないってのは知っているわよ??


 それでも愚痴の一つや二つは言いたくなるってのが人の性という奴なのです。



 う――――……。気持ち良い……。


 伍長に充てられたベッドに心と体の一切を預けたまま、廊下やら兵舎前から零れて来る声に耳を預ける。



『やだ――。それ、浮気じゃん』


『そうなのよ!! あのクソ野郎。私が仕事で帰って来れないって事を良い事に女作ってたのよ!? もうムカついてさぁ。思いっきりぶっ飛ばしてやったわよ!!』



 ほう。流石、軍人といった所か。


 誰かが仰った浮気をしたクソ野郎には鉄拳制裁。これに限るわね。


 至極同意するわよ、誰かさん。



 レイドって……。浮気とかするのかな??


 女達の憤りの声が彼の幻影を頭の中に浮かばせる。


 浮気をしたらしたらで絶対顔に出るだろうし。嘘を付けない性格だもんねぇ。あいつ。


 何より、付き合う女性には真摯に向き合うと思う。


 二人の間に問題が出来たのなら互いに手を取り合い解決へと導き共に笑い、共に泣き、そして共に愛を育む。



 ころりと寝返り仰向けの姿勢でぼぅっと天井を眺めて私とあいつを重ね合わす。



 一緒に食卓を囲み舌鼓を打ち、私の長い買い物に悪態を付くもちゃんと付き合ってくれて、疲れ切った体を私が優しく解き解すんだ。



 うぅ……。止めときゃ良かった。


 恥ずかしくて顔が熱い。



 でも、まぁ想像するだけなら別に構わないでしょ。


 想像じゃなくて、妄想ね。


 きっと、うん。絶対楽しいと思うんだよね。仕事で中々会えなくて偶に会うと。



『仕方ないだろ?? 任務なんだし』



 そうやって、困った様な顔を浮かべるんだよね。


 私は悪戯心満載で更に虐めてやるんだ。


 もっと会いたいって言うの。



『だから、任務で会えないんだって』



 あはは。虐め過ぎちゃったね??


 ぷいっと顔を逸らす仕草がまた可愛いのなんの。



「…………。会いたいな」



 先日会ったばかりなのにもうあいつの姿を求めている自分に呆れてしまっていた。


 まぁ、致し方ないとは思うのですよ。えぇ。


 選抜試験やら危険な任務が迫っているのです。一言二言、伝えても別に構わないでしょ??


 作戦に参加するとなれば今生の別れになるのかもしれないんだし。



『それを言ったら、前線に張り付いている時もそうだろ??』



 と、もう一人の私が呆れた声を上げる。


 そうで――す!! 体の良い言い訳ですよ!!


 いいじゃない!! 好いた男に会いたいのは至極真っ当な女の子の気持ちなんだから!!


 顔の前で枕をぎゅうっと抱き締め、体の中から湧き起こる寂しさを誤魔化す。



 レイド。まだこの街にいるのかな??


 探そうにも理由がいるしなぁ。


 あなたに会いたいから探していたの。


 なんて恋する乙女の台詞は口が裂けても言えない。万が一にでもそんな言葉を漏らしたら恥ずかしさで憤死してしまうだろうさ。


 自分の真っ赤に染まった顔を想像してニヤニヤしていると。



「…………。いっけない!! 待ち合わせに遅れちゃう!!」



 抱きしめていた枕を放り捨て、身に纏っている軍服を乱雑に脱ぎ捨てた。


 優しく抱かれていた枕は突如として発生した衝撃に顔を顰め、邪険に扱われる軍服も大いに溜息を付くであろう。


 それ程に急な所作であった。



 危ない。妄想に耽っていた所為で約束を反故する所だったわ。


 お高く留まった街から王都へ戻り、リクを厩舎に預けに向かうと。


 いつもの黒い帽子を被りこれまたいつもの通りに労働の汗を流す彼女が私達を迎えてくれた。



『あ――!! トアさん!! お久しぶりですっ!!』


『久々ね!! ルピナス!!』



 馬が大好きで調教師の仕事に就いた彼女の笑顔がまた眩しいのなんの。


 馬好きが功を奏してか、彼女が飼育または調教する馬は皆優秀だと最近噂になっている。


 只、好き過ぎるのも問題なのかもしれない。



『リク、元気してた?? あはっ!! もぅ――。顔舐めちゃ嫌だよ??』


『馬ばかり相手してないでさ。偶には男とも出掛けたら??』



 リクと戯れ溢れんばかりの笑みを零す彼女へ言ってやる。


 そう、彼女から特にこれといった浮いた話を聞いた事が無いのだ。



『男性の方とですか?? ん――。仕事が忙しい事もあって、ちょっと無理なんですよねぇ』


『うん?? それなら出掛けたい人はいる。と??』


『ま、まぁ。居ない事は無いですねぇ』



 ほほう!! それは良い事を聞いた。


 馬に恋をしている訳では無さそうだ。



『久々に会ったしさ。この後時間ある?? 御飯でも行こうよ』


 私が誘そうと。


『いいんですか!? 実は、女性限定で割引してくれるお店を見つけたんですよ!! 一人だとちょっと行き辛かったので助かります!!』



 割引。


 その単語が私を大いに刺激してしまったのよねぇ。



『了解。それじゃあ……。西大通りの銀時計前に六時でどう??』


『分かりましたぁ!! ちゃちゃっと着替えて向かいますね!!』



 そんなやり取りが行われたのは数時間前。


 危く、ベッドの気持ち良さに身を委ね。彼女との約束を忘却の彼方へ押し流してしまうところであった。

 

 幸か不幸か。


 謹慎処分も解けた今。態々外出許可書を書かなくていいのが助かるわね。


 適当に見繕った厚手の上着とズボンを履き、必要最低限の荷物を鞄の中にぶち込み。乱れた髪を直して扉を飛び出し。


 勢いそのまま兵舎の前に踊り出てやった。



「トア!! お前、謹慎処分中だろ!? 勝手に出掛けるな!!」


 宿舎の扉を抜けて門を通り過ぎようとすると門番である先輩からお叱りの声が掛る。


「今日で謹慎処分は解けたんですよ!! 確認を取って貰えれば直ぐに分かります!!」



 前へ進もうとする両の足を御して先輩へ話す。



「なんだ、そうなのか。分かった、行っていいぞ――」


「ありがとうございますっ!!」



 この人の良い所は細かい事を拘らないところね。


 普通ならあれこれと確認を取って、やれ書類だとか、やれうんたらかんたら……。


 約束に遅れそうな時にこれは助かるのよねぇ。融通が利くって言えばいいのかしら。



「そんな慌ててどこに行くんだ??」


「っと。友達と約束していまして、食事を摂って来るんですよ」


 いざ、走り出そうとすると再び先輩の声が届く。


「ふぅん。…………。あの男かぁ??」


「ち、違いますよ!! 女性の友人ですっ!!」



 会いたいのは本音だけど見透かされるのはちょっとね。



「ふぅん?? ヤル事はやっても構わんが。門限は守れよ――」


「話を聞いて下さい!!」



 一体何を想像しているんだ!? この人は!!



「この御時世。ヤル事をやっておかないと後悔するかもしれなんからなぁ」


 にやけた顔で卑猥な事言わない!!


「知りません!! 待ち合わせに遅れますので、失礼します!!」


「ん――。二回までにしとけよ――?? 次の日まで疲れを残すといかんからなぁ――!!」


「ですから!! 何の事ですか!!」



 軍属の者とは思えない卑猥な言葉を私の背に向かって飛ばしてきた横着者へそう叫んでやった。


 止めて下さいよ……。


 まだあいつとはそんな関係じゃ……。ってぇ!! 違うし!!


 先輩の考えている関係はまだ出来ていないの!! それどころか、恋人にさえなっていないもん。



 約束の時間に遅れてしまうという焦燥感が前へ前へと私を進ませて目まぐるしく風景が変わる。西大通りに出るとそれはより顕著に現れ、私の移動速を見て驚いた女性の顔があっと言う間に後方へと流れて行った。



 はぁ……。先輩の余計な一言で体中が熱いや。


 アイツとの関係を弄られた素直な恥ずかしさからなのか。それともアレの事について想像を膨らませてしまった為??


 如何せん、そういった行為は未経験な為大まかな事しか想像出来なかったのがせめてもの救いか。



 下らない事考えていないで、急ごう!!



 夕食時を迎え、人で溢れ返る西大通りの狭い隙間を見付けては通行人の移動速度の三倍の速さで人波を器用に縫い進んで行く。


 日頃の鍛錬の賜物である脚力そして観察眼はこういう時の為に活用すべきなのだろう。


 等と下らない事を考えながら空を自由に飛び回る燕も思わず目を見開く鋭い切り返しを繰り返しながら目的地である銀時計前の広場へと向かって行った。



お疲れ様でした。


現在、後半部分の編集作業中ですので次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ