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予期せぬ便り

お疲れ様です。


本日の投稿になります。





 浴びる様に酒を飲み美味しい御飯を沢山食べて、更に意中の男性と過ごした後。


 ほぼ屍の様に眠ったのにまだまだ疲れが残る気怠い体を起こして朧な意識で頭を乱暴に掻く。


 体に染みついていたお酒の余韻は既に消え失せているが、ちょっとだけ鼻に付く香りが部屋を満たしていた。



「ん――…………。匂うわね」



 庶民が好んで使用するベッドから足を降ろし、若干の痛々しい傷跡が残る窓を開きこの匂いを空へ解き放つ。


 んっ!! 今日も快晴!!


 謹慎中の身にはちょっとだけ心苦しい青空が眠りから醒めた私を見下ろして。


『今日は絶好のお出掛け日和だよ!!』 と。


 お外へ誘う素敵な明るい笑みを浮かべていた。



 うぅむ……。困ったわね。


 これだけ晴れているとお日様に手を引かれて出掛けたくなるのよねぇ。謹慎中は原則部屋で待機なんだけど。



 う――……。まぁ……いっか!!


 報告書と反省文は帰って来てからやればいいしっ!! それに、また外出許可書を提出すればいいもん。


 今日はどこに行こうかなぁ。


 先ずは買い物よね!? これは、うん。女の子としては外せない。


 冬物から春に掛けての服を見ておきたいし?? 小物も気になる。


 後はぁ食べ物??


 中央屋台群で適当に食べて、そして南大通りの服屋に足を運ぼう。



 うっし!! 決まり!!



『善は急げ』



 私はパパっと寝間着を脱ぎ捨て、適当に見繕った服を着て……。


 おっとぉ、外出許可書を書かねばっ!!


 半分寝間着、半分私服の可笑しな格好で机に向かい自分でも驚くべき速さで書類の空白を埋めていった。

















 ◇




 さてさて!!


 本日はお日柄も良く、外出に相応しい日だと私は考えております!!


 天候も良いし己の体調も昨日のお酒が残っているかと思えばそんな事は無く超絶好調。それに加えて王都の活気ある様子が私の心をグングンと温めていた。



 重たそうな荷物を背負い何処かへと重い足取りを引きずって向かう青年。


 小麦粉をパンパンに詰め過ぎて膨れ上がった麻袋を満載した馬車が通り過ぎ、初冬の日の弱さを感じさせない太陽が馬の歩みを応援する。


 若い男が無邪気に大きなおにぎりを頬張れば、それに負けじと通りの反対側の通りにいる若い女性が肉汁滴る肉を挟んだパンを可愛く咀嚼する。



 活気があっていいわねぇ!!


 人の織り成す様々な表情が私の心を無理矢理に高揚させてしまっている。


 向こうに居る時はずぅっと顰めっ面で付け加えると唇も尖りっぱなし。苛立ちを覚えない日は無かったがここではそれは無縁だ。



 只、ちょぉっと人が多いのが残念よねぇ。


 ま、無理もないか。


 王都の総人口は……。今何人だっけ?? 知っている限りでは総人口の約半数だから二百万を超えているのか。


 本当に馬鹿げた数の人間共が巨大な街で蠢いているのだ。そりゃあ混雑するのは当然よねぇ。


 私が生まれ育った街は人口三千人程度の小中規模な普通の街。


 どこにでもある普通――の街で。ここに比べれば普通――に田舎。


 生まれ故郷を悪く言う訳じゃないのよ??


 この大陸に住む者なら分かるだろうが王都の熱気が一線を画しているだけなのだ。



 行政機関なり、司法機関なり、立法機関が在り。それに経済の中心を担うのであれば栄えるのは致し方ない。


 それにぃ、王様も?? ここで働いているみたいだし?? そりゃデカくなるわよ。


 私達、一般市民はのうのうと歩けるだけで贅沢ってもんかしら??



 いやいや、ちゃんと税金は納めているし。


 市井の義務を果たしているのだから街を謳歌するだけの権利は当然あるわよ。


 いいわよねぇ――。貴族やら王族とやらは。


 私達みたいに血と汗を流さず労せずにお金が貰えるんですもの。



「あっ、ごめんなさい」


「いえ、お気になさらず」



 正面から歩いて来た女性とぶつかりそうになったので軽やかに躱して当たり障りの無い笑みを浮かべておいた。



 我々庶民からは所得に対しての税金が掛かり王都の北東地区に住むのにも税金が掛かる。


 確か……。王都住居税とやらだ。


 まぁ、その額自体は安いものだけど。数十万人分となると洒落にならない。


 得た税金は軍事やら街の整備やら様々な支出に充てられるらしい。


 知らないわよ?? どこにどうお金が流れているなんて。


 所得に対する税金、住むことに対する税金。


 生きる事に対する税金は流石に無いけども良く出来た仕組みだなぁと考えている。


 誰が思いついたんだろう??



 まっ、皆様の税金の一部が私達の給料に充てられる訳であって。


 税金云々で文句は言えない。


 勿論!! 軍属である私達にもしっかりと納税の義務は発生しているのであしからず。



 この街の維持には膨大な費用が掛かるみたいだし。それに加えてあの魔女とオークの出現。


 歳出がぐっと増加したのは自明の理。


 いざ戦うって時にお金が無くて武器が買えませんでした――っでは洒落にならない。


 その点についてはどうなっているのだろう?? 政治には全く興味が無いので分かりかねる。



 まぁ何はともあれ皆さんの血税がこの大陸を守る事に繋がっているのです。


 お勤め、御苦労様です!!


 先程の重たい荷物を背負う青年の背中を見つめながら一人勝手にそんな事を考えていた。



「おぉっ。相も変わらずここは大盛況ね」



 中央屋台群には足を踏み込む事を躊躇われる程の人の波と熱波が発生し、本日の盛況ぶりを空へ向かって咆哮している。


 普通に考えればあの人の波に突撃しようとは考えないんだけど、彼等が浮かべる朗らかな笑みがうざったい閉塞感を超える効用があそこに存在すると如実に表している。


 美味い物を食べてたければ少々の犠牲は厭わない。


 そしてお昼前だってのにこの盛況。屋台を出店する店主達も笑いが止まらないだろうなぁ。


 数か月に一度、ここで出店する為に抽選が行われると聞いた事があるわね。


 呆れる程の人が通ればそれだけ注目を浴びる訳だし、店主達は祈る想いで抽選を受けるのだろう。



「……ッ」



 おっと。風に乗って届いた馨しい香りを捉えたお腹ちゃんが卑しく鳴いてしまった。


 人の多さに辟易しているだけではお腹は膨れない。しっかり物を食べないと私のお腹ちゃんは満足してくれないのよねぇ。



 さぁ、行くわよ?? 気合を入れて行きましょう!!


 優しい心を入れ替えて鬼神の如く。堂々たる足取りで人の波へと飛び込んで行った。




「いらっしゃい!! 肉汁たっぷりの串焼き!! 如何ですかぁ――!?」


「ホクホクの焼き芋!! 甘くて美味しいよ!!」



 自由に両足を前に出せない閉塞感、無数の足が舞い上げる土埃が混ざった空気。


 慣れていない者には苦痛だろうが。お生憎様、この狭さと何とも言えない匂いじゃ私の行軍は止められないわよ??


 店主達の激しい客取り合戦の呼び声が上下左右に飛び交い、他人の背と肩が行動を制限する。



 歩き難いのは仕方が無いけどさぁ。もうちょっと広さを確保してくれればいいのにねぇ。


 仕方が無いのは分かってる。ここを広くすれば馬車が通れなくなるもの。


 東西南北から向かって来る馬車は円の外周を通る様にこの中央広場を迂回して、私達消費者は食物を求めてその内円で笑みを零す。



 現に。



「おっいし――!! ねぇ、この甘栗。良い味だよ??」


「本当。でも、ちょっと剥くのが大変じゃない??」


「え――。そんな事言ってたら美味しい物食べられないじゃん」



 私の目の前では二人の若い女性が和気藹々と茶の紙袋から甘栗を取り出し、困った笑みを浮かべながら硬い外皮を剥いている。



 甘栗かぁ。食べたいけど、ちょっと違うかな。


 今のお腹ちゃんはもうちょっとしっかりした物を所望していた。


 ん――。こうして迷っちゃうのが私の悪い所だ。



「そこの美人のお姉さん!! 美味しい焼きおにぎり!! どうだい!?」



 美人?? やだっ、それって私の事??


 右隣りから微笑ましい声が私の肩をグっと掴んで歩みを止めた。



「今ならお安くしとくよ?? 御一つ、どうだい!?」



 ほぅ、こりゃまた見事な七輪ね。


 木製の屋台の奥。石畳の上で店主が七輪の前に立ち、炭火を起こして私を待ち構えていた。


 七輪の大きさも然ることながら、店主の男らしい出で立ちにどこか好感が沸く。



「一つ幾らですか??」



 炭火の香り、空腹、そして……美人という素直な単語。


 立ち止まざるを得ない状況に私は必然的に人の流れから外れて彼に問うた。



「美人割で……。御一つ百ゴールドでいいよ!!」



 やっす。そりゃ買いだわ。



「じゃあ、御一つ下さい」


「あいよう!! 焼き上がるまでちょっと待っててね!!」



 注文を受けてから焼くのか。


 効率悪く無い??


 七輪の隣に置かれているおにぎりさんをむんずっと豪快に手で掴み熱々の網の上へと乗せた。


 焼き上がるまで五分程度かな??


 暇つぶしも兼ねて何とも無しに人の波へと視線を泳がせていた。



 レイド……。居ないかな。



 大勢の見知らぬ顔の中についつい彼の顔を探してしまう。


 昨日は偶然会ったけど、ほら。こういう偶然って何度も続く事があるじゃない??


 忙しなく視線を泳がせているのはその所為。


 自分でも笑えてしまう言い訳を言い聞かせていると、ふと見知った髪の色を見つけた。



 うん?? あの目立つ深紅の色って……。


 そうだ!!!! 以前、レイドが図書館で視線を奪われてしまった人達だ。


 ついつい揶揄ってどの子が好みだぁって聞いたっけ。



 深紅の髪、深緑の髪、灰色が二つに。白と藍。



 灰色の子は双子かなぁ?? 一人は陽気丸出しの笑みを浮かべているけど、もう片方はこの人波に辟易している。



 白色の人は黒い着物を可憐に着熟して嫋やかな後ろ姿が男の視線を集めていた。


 そして。


 レイドが好みって言ってた子は白の長いローブを着用して肩から鞄を掛け、深紅の人からちょっとだけ後方に位置取り何だか呆れた顔を皆に送っている。

 


 うっわ。あの子滅茶苦茶可愛いじゃん。


 流れる藍色の髪は深海の青さを美味い具合に表現し、太陽の陽に当たると一本一本が煌びやかに輝く。


 女も色を覚えてしまう程の肌の美しさ。そして、頼りない肩幅が猛烈に守ってしまいたくなる感じを醸し出していた。



 あいつが好みって言っていたのも頷けるわ。



「お待たせ!! 出来たよ!!」


「あ、はいはい」



 しまった。私も思わず見惚れてしまっていた。


 店主さんへと振り返り、おつりが出ない様に現金を渡して出来立てホカホカの焼きおにぎりが入れられた紙袋を受け取る。



「毎度あり!! また来てね!!」



 快活な笑みを浮かべて店主に一瞥を交わすと、あの人達の背を追跡してしまった。


 どんな人達なんだろう?? ちょっと興味が沸いちゃうし、それに……。


 あいつの好みの子がどんな物を食べてどんな行動をしているのかも気になる。



 別に!? アイツの好みに合わせようと思って観察するんじゃないわよ!?


 単に興味が沸いただけ!!



 美人六人が揃って行動してたら誰だって気になるでしょ??


 それに私は軍属の身。


 あの人達が男の毒牙に掛からぬ様、監視しなきゃいけないのよ。


 うぅむ……。



 やっぱり、只者じゃない雰囲気があるのよねぇ。



 図書館で感じた様に六人全員からはっきりとした力の片鱗が漏れ出している。


 特にあの深紅の子、べらぼうに強いわ。


 馬鹿な顔して目尻を下げて色々食べているけど。歩行中、体の芯は一切ぶれていないし。大地を捉えたどっしりとした重心が否応なしに私の気を引く。



 何か格闘技の嗜みでもあるのかしらね??



 ねっとりと絡み付く様な視線を送り続け追跡を続けて居ると、あの人達が方向転換して南大通りへ抜けてしまった。



 も――う。もう少し位監視させてよね。


 彼女達から一呼吸置き、敢えて遅れる様にして人の波から抜けた。



「…………あぁ、居た居た」



 前方約十五メートル。


 温かい笑みを交わしつつ南大通り右脇の歩道を慎ましい速度で歩いていた。



 斥候の続きっと。



 ふふん、こう見えて私は気配を消すのが得意なのだよ。


 斥候の技術も上官からお墨付きだし?? 強さを醸し出すあの人達にどれだけ通用するのか試したくなっちゃった。


 沸き上がる興味を抑え、心をそして気配を殺して人の波に紛れて後を追う。



 歳は……。まぁ私達と同世代って感じでしょ。


 レイドのお好みの子は、少しだけ年下って感じかな??


 皆が着ている服は着物と白のローブ以外はどこにでもいるって感じで。零す笑みもどこにでもいる普通の女の人。



 只、あの深緑の髪の人の胸の大きさだけには度肝を抜かれるわね。


 一つ歩けば上下に揺れ、二つ歩けば太陽がびっくりして二度見する。


 ほら、今すれ違った男二人組も。



「な、なぁ。今の子見た??」


「あ、あぁ。すっげぇでかかった……」



 まるでお化けを見た感じで話しているし。


 強いて言うのならばお化け西瓜?? それだけ形容し難い大きさと形と揺れ幅って事ね。


 本人の前で言ったら失礼だけど、これだけ離れていても揺れ動く様が分かるのだから致し方あるまい。



「…………。あっ」



 追跡を続けていると彼女達が右の路地へと方向転換してしまった。



 あの先は細い路地だし……。追跡はここまでかな??


 深紅の髪の女性を先頭に続々とその姿を消して行き、そして白色の髪の女性が最後方で消え行く刹那。



「…………ッ」

「っ!?」



 太い氷柱で心臓を射貫かれた様な、本当に冷たい視線が私の体に突き刺さった。



 うっ!? 何!? 今の視線!?


 流し目でちょっとだけ私と目が合っただけなのに体中から冷たい汗が噴き出してしまう。


 もしかして……。気付いていたのかな。



 いやいや!! 有り得ないし!!


 これだけ殺気も気配も消しているんだ。ましてやこの喧噪と人混み。


 私の存在に気付く方がおかしい。


 五月蠅く鳴り響く心臓を宥め、焦らない速さで彼女達が消えた裏路地へと進むが……。



「…………ありゃ。見失っちゃったか」



 幾ら進もうが目を凝らして先を見渡そうが彼女達の影さえ見つからない。


 あの歩行の速さを加味して、分岐点からかなりの速さで歩かないと見失う訳ないのよねぇ。


 ちょっとだけ薄暗い裏路地の奥、そして光と人で溢れかえる表通りを比較して眺めた。



 まぁ……。いっか!!

 

 あの人達は赤の他人だし。ましてや、私達に何ら関係ないもんね。



 …………達??


 違う。私、ね。


 だってさ――。レイドが好みって言ってたからつい口走っちゃうじゃん。


 どんな子がレイドの好みかって気になるし……。


 似せようとは思わないけど。参考に?? とは思う訳ですよ、えぇ。


 実際、私よりも全然可愛かったから参考にもならな……。



 可愛いだけが勝負じゃないもん!! 人柄が大切なんですっ!!


 あの子と可愛さで張り合える自信は無いけど人柄なら勝機はある?? かも??


 はぁ――……。



「馬鹿な事してないで。買い物しよっかな」



 徒労に終わった追跡を反省しつつ踵を返して表通りへと進む。


 今度会ったら声掛けてみようかな?? 悪そうな人達じゃなさそうだし。


 それにアイツの好みの子に色々助言を頂きたい。どうす生活すればあなたみたいな美肌を得られますか、と。


 初対面でそんな質問は失礼かしらね。


 よしっ!! ここからは気分を変えてパ――っと買い物に興じよう!!


 日頃の鬱憤を晴らす時が来たのだっ!!



 暗き路地から軽やかな足取りで大通り沿いの歩道に躍り出ると、本日の獲物を求め。鋭い視線を浮かべながら大勢の人波の中に飲まれて行った。





























 ◇




 両脇一杯に本日の獲物を抱えて頬から零れ落ちる汗を拭き取る事も叶わずに顔を顰める。


 長時間の歩行によって上昇した体から噴き出る鬱陶しい汗、荒い呼吸を続けると双肩が荒々しく上下しその姿はさながら獲物に襲い掛かる前の獣だ。


 私の姿を捉えた歩行者さんがスっと道を空けてくれたのは助かったわね。


 でも、う――ん…………。



「やっぱ、これって買い過ぎって奴かしら」



 両腕に抱える溢れ出る汗の発生源をふと見下ろす。


 厚手の生地で作られた冬物の上着に冷たさを少しでも誤魔化してくれる温かい色の長いスカート。



 それと……。ちょっとだけ見栄を張った下着。



 他人には見せられないのが玉に瑕ねぇ。普通の下着より肌を隠す面積が少ないもん。


 利便性が見出せない物を何故購入しちゃったのかは女の子であるが所以って事で。



「お帰り――って。おいおい。買い過ぎじゃないか??」



 出発した時と然程姿を変えず門番を務める先輩が、道のド真ん中で汗を垂れ流す私を捉えると呆れた笑みを浮かべて迎えてくれる。



「た、ただいま戻りました……」


「お、おぉ。良い物買えた??」


「はっ。御蔭様で女性の武器も一通り揃える事が出来ました」



 ふぅっと一つ大きく息を漏らして話す。



「そりゃ結構。後、お前さん宛てに手紙が届いていたぞ」



 手紙?? 誰からだろ。


 両親かな。それとも……。


 いやいや!! レイドは手紙なんて送る柄じゃないし!!


 あれこれと思考を巡らせていると先輩が懐から一枚の便箋を取り出す。



 普通のそれとはかけ離れた美しい白き便箋。


 封を解放する前からある程度の身分、若しくは位の高い者からであると推測出来た。



「ほれ。受け取れ」


「あ、はい……」



 荷物を傍らに置き少しだけ厳かな面持ちで受け取る。



「確かに渡したからな――」


「有難う御座います」



 暇そうに欠伸を噛み殺す彼女に礼を述べると荷物と格闘を再開させ、昨晩同様。頼りない足元で己の部屋へと向かう。


 良い感じに傷が目立つ扉を潜り抜け、これまた素晴らしき経年劣化ぶりを発揮する階段を昇り。



「ただいま――。よっと……」



 私に与えられた部屋に到着すると木の床の上に荷物をぽんっと置き、弾む様にベッドに腰かけた。



 さてさて――。誰からの便りでしょうねぇ。


 手触りの良い便箋を裏返し見ても差出人は書かれていない。



 ん――……。まさかとは思うけど。


 昨日レイドとおふざけで話していた内容が頭に浮かぶ。



 先輩をぶん投げた罪で、除隊??手を出した私が悪いのは当然だけど……。



「えぇい!! どうとでもなれ!!」



 頑丈に封が施されている便箋の口を半ば自棄になって開いてやった。




「えぇっと。何々?? …………貴殿は早急に特殊作戦課の招集に赴き。面談に応じられたし。ジョン=マルクス=レナード大佐。…………はぁ!?」



 ちょ、ちょっとどういう事よ!!


 手紙の内容を読み終えると、予想外の驚きによって瞳が真ん丸になったまま思わず叫んでしまった。


 手紙の内容はこうだ。



 任務の功績、更に個人の能力を認められ。謹慎処分を解く代わりに特殊作戦課の召集に応じ。レンクィストにあるレナード大佐の屋敷まで赴いて面談に応じろと書かれていた。


 特殊作戦課の存在は勿論知っている。


 いや、パルチザンに所属している者なら知らない方がおかしい。



 危険を顧みず死地へと赴く勇猛果敢で優秀な兵士を集めた謎深き部隊。



 限られた人物しか特殊作戦課には在籍出来ない事は有名であり。


 誰が、何をしているのか。その存在全てが謎に包まれている。


 その謎が同期の男共の何かを刺激したのか、男の憧れの部隊としても有名なのだ。


 私は別にそこまで憧れたり、惹かれたりはしなかったなぁ……。



 一番の驚きは……。どうして私が招集されたの??


 この一点に限る。



 幾ら頭を捻ろうが答えは出て来ない。


 ま、まぁ。特殊作戦課に相応しい者かどうかの面談ならどうせ素行不良で不採用になるし。前回の失態を咎められて首なら首で腹を括って生まれ故郷に帰る!!


 この事は他言無用なのがちょっと辛いわね。手紙にも口外するなって書いてあるし。



 レイドに一度相談しようかと思ったけど……。



 はぁ――。気が重いなぁ。


 わざわざ召集命令を下す位ならこのまま謹慎処分でもいいんだけどなぁ。


 軍属の者は命令には逆らえないし。


 上層部に認められた事への嬉しさと相対する首への憂いと謎の召集理由が心に暗雲をもたらす。


 買い物で得た高揚感はどこへやら。



「あ――!! もう!! 何で大切な事が書かれていないのよ!!!!」



 気が付けば私はベッドの上で永遠に答えが出ない答えを求めて、頭を抱えながら一人のたうち回っていたのだった。



お疲れ様でした。


明日は日曜日、疲労が溜まった体を休ませてあげる為に馬鹿みたいに眠る予定です。


起床後は部屋の掃除、洗車、食料と日用品の買い出し等々。やる事が山の様にありますがそれは敢えて考えずに眠ります!!


そして、次の更新は本編となります。次回は本編で御会い致しましょう!!



それでは皆様、引き続き休日を楽しんで下さいね。

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